夏を楽しむ前に。知っておくべき熱中症の症状・予防法・治療法
吐き気から息切れまで。
外出自粛期間が長かったからこそ、公園での日光浴が今年の夏の楽しみの一つかもしれない。だけど、炎天下で意識を失ったり熱が出たことがある人なら、その危険性を十分に理解しているはず。熱中症の症状を把握しておけば、熱中症になりそうになったときにすぐに応急処置をとり、助けを求めることができる。
そもそも熱中症って何? その原因は? 熱中症だと判断する基準は?
夏を楽しむ前に、しっかりと知識を蓄えておこう。
熱中症って何?
日射病と呼ばれることもあり、熱によって起こるさまざまな体の不調のこと。暑い日に体温を調節する体のメカニズムが機能しなくなり、体温を下げることができない状態になる。
熱中症は、熱疲労の症状が30分以上続くと発症する。非常に暑い環境下に長くいて、体が熱に対処できなくなった場合に起こり、めまいや吐き気、食欲の低下、頻呼吸、頻脈(脈の速い状態)といった症状が現れる。
熱中症の初期のサインは?
熱中症を引き起こすと現れる症状:
・過度な喉の渇き
・吐き気
・筋肉が痛み始める
・軽い頭痛
・心拍数の増加
・息切れ
「症状がこれほど深刻になると、すぐに冷却処置をとらなくてはなりません」と話すのは、メディカルケアサービスを提供する「Coyne Medical」の総合診療医、ルーシー・フーパー医師。「体温が40度以上を超えると、細胞膜、あるいは外側の細胞層が損傷し、細胞の破壊を引き起こす恐れがあります」
「このような状態が組み合わさると、意識不明や昏睡(こんすい)状態、多臓器不全に陥りやすく、最悪な場合は死に至る可能性さえあります」
熱中症と熱疲労の違いって?
熱中症は、熱を冷ます体の機能が停止すること。
熱中症の症状は、熱疲労を起こした結果であり、嘔吐(おうと)や頭痛、めまい、疲労、心拍数の増加、皮膚の乾燥、息切れ、尿量の減少などの症状が特徴付けられている。
「普段運動をするときは、上昇した体温を下げるための手助けをしてくれる体のメカニズムがたくさん備わっています」
「体は、皮膚の血流量を賢く増加させて汗分泌を促進するので、体の熱を冷ますことができるのです」と、フーパー医師。「皮膚の血流が増加するということは、消化器系の血流量が減るので、運動後に食べたものが消化がされにくいと感じる人が多いのはこのためです」
「過剰に熱が体にこもると、腸内に水分が吸収されなくなったり、腸漏れを引き起こし、毒素が血液中に侵入する恐れだってあるのです」
脱水症状を引き起こすと、状態はさらに悪化する
「運動中に脱水状態に陥ると、心臓は血液を循環させるのに必要なポンプ機能が低下します。筋肉に十分な血液を送ることができなくなれば、筋肉は熱くなり、有害な毒素を生成して筋肉組織を損傷する可能性もあります」
熱中症の回復にかかる時間
熱疲労は症状が最大30〜60分程度続くのに対し、熱中症は治療を早めたとしても、回復するまでおよそ2日はかかる。
ただし、臓器が損傷を受けている場合は回復までさらに時間がかかる。専門家によると、内臓が修復するまで1〜2カ月はかかると言われている。
日差しの下で運動をするときの注意点
「予防は治療に勝る」ということを、肝に銘じておこう! 外に出るのを諦めてエアコンの効いたジムばかりで運動する必要はない。フーパー医師の3つのアドバイスに従い、新鮮な空気を吸いながら体をシャープに鍛えよう。
1.水分補給を徹底する
「特に運動する前の水分補給が重要です。マラソンなど長時間のイベントに参加する際は、水分を十分に補うことは大切ですが、飲み過ぎないように注意しましょう」
「運動前は涼しい服装をして、冷水につかり、冷たい水を飲んで体を冷やしておくと、熱中症予防に効果的です」
2.運動しすぎないこと
「体調が優れないときや、病気から回復したばかりのときは、暑い中無理に運動するべきではありません」
服装は、汗を吸収して熱を放散しやすい素材の服を選んで。現在抱えている病気や服用中の薬に関して心配なときは、激しい運動を始める前に医師に相談すること。
「また、前日のアルコールの飲み過ぎや胃の不調は、熱疲労を引き起こす一般的な要因です」
3.徐々に体を慣れさせていく
「高温環境での運動やイベントに参加する人は、あらかじめその環境条件に体を慣らしておくべきです」
暑い気候での運動に体が慣れるまで、少なくとも1〜2週間はかかるとのこと。最初は30分から始め、運動する時間を徐々に延ばしていくようにすると、体は熱を冷ます方法を自ら習得する。
訓練は毎日するのが理想的ではあるが、1日置きでも効果は得られる。残念ながら、高温環境での運動に体が慣れる能力には個人差があり、熱中症になる確率は男性よりも女性のほうが高いとか。
熱中症の治療方法
熱中症の疑いがある人を見かけたり、体に異変を感じたときには、国民保険サービス(NHS)が推奨する以下のステップに従おう。
1.涼しい場所に移動する。
2.横になり、足の高さを少し上げる。
3.水をたくさん飲む。
4.スプレーや、冷たい水をスポンジにぬらして体の熱を冷ます。あるいは、扇風機の風に当たる。冷湿布を脇の下や首元に当てるのも効果的。
30分ほどしたら、体の熱が冷めてくるはず。それでも改善しない場合は、すぐに病院で診察を受けること。
※この記事は、イギリス版『Prevention』から翻訳されました。
Text: TAHMINA BEGUM Translation: Yukie Kawabata