世の中には、極端な食品の取り方によるダイエット法があふれている。いずれかの栄養素の摂取量を少なくしたり、ゼロにしたりすることを勧める食事法には、実際に健康上のメリットがあるのだろうか?

――科学的には、そのような“効果”は「ない」と言うこともできるのかもしれない。名古屋大学大学院医学系研究科・予防医学分野の田村高志博士らのチームが発表した研究結果によると、炭水化物と脂質の摂取量を極端に減らしたり増やしたりすることは、寿命に影響を与えることになり得るという。

米国栄養学会が発行する『ジャーナル・オブ・ニュートリション』に掲載された研究結果は、8万人以上を対象に、毎日の食事による炭水化物と脂質の摂取量、総エネルギー摂取量をおよそ9年にわたって追跡調査した結果から得たデータを分析し、全死亡リスクとがん死亡リスクについて評価したもの。

研究者チームによると、追跡期間を5年未満とした場合、女性は炭水化物の摂取が少ない(1日の総エネルギー摂取量のうち、炭水化物から摂取するカロリーが50%未満)の場合、循環器疾患による死亡リスクが上昇していたという。

だが、追跡期間が5年以上の場合では、炭水化物の摂取量が多い(同65%以上)の女性は、全死亡リスク、がん死亡リスクがどちらも高まっていた。そのほか、不飽和脂肪(魚、植物油、ナッツ類に多い)の摂取量が少ない女性は、全死亡リスクとがん死亡リスクが上昇していた。

woman measuring her waist
Prapass Pulsub//Getty Images

研究チームはこれらの結果について、「男性でも女性でも、いずれかの食品群を極端に減らすことは、健康に影響を及ぼすということだ」と説明している。

また、論文の責任著者である田村博士は、「低炭水化物食、低脂質食は短期的なメリットよりも、長期的なリスクの方が重大なものになる可能性があり、長寿のための最も健全な戦略ではない可能性がある」として、この研究結果は「非常に重要なもの」だと指摘している。

ケトジェニック・ダイエットなどの極端な食事法が広まっていることに加え、低炭水化物の食事や低脂肪の乳製品への注目が高まっていることから見ても、特定の食品群の摂取を制限する食事法は、これまでになく人気を集めている。

だが、新たな研究結果は、私たちがよりバランスの取れた食事を取ることに注意を払い、さまざまな食品と主要栄養素からエネルギーを摂取する必要があることを示唆している。

portrait of beautiful young woman having breakfast in the kitchen
Cavan Images//Getty Images

次にノンファットヨーグルトを食べようとしたとき、卵とアボカドと一緒に食べようとしたサワードウ・ブレッドを「やめておこう」と思ったとき、少し考えてみるべきことかもしれない。

※この記事は、海外のサイトで掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。

Translation: Ryoko Kiuchi From Women’s Health UK