カイロプラクティックの施術者として、また国産オーガニックブランド「アムリターラ」の代表として、日夜女性達の心と体の健やかな美しさについて考えてきた勝田小百合さん。オーガニックに対する圧倒的なこだわりが支持され、人気を博したブログ「アンチエイジングの鬼」を皮切りに、『老けないオーガニック』(ワニブックス刊)など多くの著書も持つ勝田さんが、迷える読者のお悩みにアドバイス。今回は、年を重ねるごとに深刻になる「老け」についてのご相談。

Q:顔のたるみ・シワ・シミ・法令線・白髪など、エイジングサインが気になっています。リフトアップするために美容整形も考えていますが、お金もかかるし、なんだか罪悪感も。この先「老け」を少しでも遅らせるにはどうすればいい?(M・Aさん/40歳)

A:年を重ねると誰しもがぶつかる壁ですよね。私もずっとこのテーマでブログや本を書いてきました。まずお伝えしたいのは、今、目に見えている顔のたるみ・シワ・シミ・白髪といったエイジングサインは、「結果」だということ。これらが現れてから焦っても、それは対症療法でしかありません。リフトアップもいいと思いますが、同時に老化現象の元を辿り根本的な原因を探ってみませんか。過去には戻れませんので、いつだって「今」が一番若いのです。「今」が変われば「未来」の「結果」は確実に変わってきます。

まず大切なのは、細胞!

人間とは酸化して糖化して、日々変化している生き物です。私達の体は、毎日細胞分裂を繰り返し、新しい細胞へと入れ替わっています。この時にミスコピーなく同じDNAを作り続けることがアンチエイジングの鍵となります。ミスコピーがあっても、人間の体内にはミスを修復する酵素があるし、ミスした細胞を排除するアポトーシスという機能も備わっています。しかし、それでも追いつかないと、少しずつ傷として残ります。これが老化と呼ばれる現象の正体で、ガン化を促すこともわかっています。生きているだけでも少しずつ傷はできますが、過剰にできることが加齢が進むということ。その過剰に傷ができる一番の原因が、活性酸素です。

”老けの元”活性酸素の発生を防ぐには?

エイジレスな見た目を目指すのに活性酸素を減らすことは必須です。活性酸素の主な発生源は、紫外線・大気汚染・食品添加物・化学物質・喫煙・電磁波・放射線・過剰な運動・過食飽食・過剰な飲酒・過剰なストレス・睡眠不足・生活リズムの乱れなど。

私も添加物は取らないようにしてるし、残留農薬を避けるためにオーガニック食品を選んでいます。ようは食生活や生活習慣を見直し整えることで、ミスコピーなく細胞分裂できる体が目指せるのです。

傷の阻止&修復に必要な栄養素とは?

ミスコピーなく細胞分裂する体にするために、まずは生活を整えることが大切とお話ししました。その上で、生きているだけでどうしても発生してしまう活性酸素は、野菜や海藻に含まれるフィトケミカル(植物由来の有効成分)、ビタミンA、C、Eなどの抗酸化ビタミン、または水素のような還元力の高いものを取り入れ、防ぐことが大切です。また、DNA修復に欠かせない栄養素もお伝えしておきます。亜鉛・葉酸・ナイアシン・キャッツクローから抽出した(AC-11)の4つです。私自身これは絶対に摂りたいと、アムリターラでもアマゾンのキャッツクロー由来の(AC-11)を配合した含んだサプリを作りました。

老化対策は「ミスコピーなく細胞を作ること」

前述したように、活性酸素の発生を減らし、いかにミスコピーなく同じDNAを作り続けるかということが、アンチエイジングの基本になります。それにはまず、細胞を守っている細胞膜を健康的かつ、しなやかな状態にすることが重要です。そうすることで外敵から細胞を守り、栄養素をちゃんと吸収して、毒素はしっかり排出できる状態が保てます。細胞膜は、半分がタンパク質で半分は脂質でできています。すなわち、毎日口にしている油の質がダイレクトに細胞膜に反映するのです

"油の質"にこだわる

細胞膜の脂質のほとんどが、リン脂質というもので形成されています。この細胞膜のリン脂質に必須脂肪酸であるオメガ3脂肪酸が多く含まれていると、膜が柔らかくなり、細胞の働きが活発になることがわかっています。必須脂肪酸にはオメガ6とオメガ3がありますが、これらを2対1の割合で摂取することがベストです。アムリターラでは、リン脂質型のオメガ3脂肪酸(DHA・EPA)が主成分のサプリメントを販売しています。さらに、無農薬の菜種を搾絞ったオメガ3の油も販売しています。コスメブランドであるアムリターラがこれらの商品を開発するのは、アンチエイジングを追求する上で油の質が本当に重要だからです。サラダ油を使っていたら、細胞レベルでキレイを目指すことはできません。

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Yuji Kotani//Getty Images

悪い油は脳にも影響する

脳は水を除くと60%くらいが油でできています。そして質の良くない油を取り続けると、認知症やうつ病を招く原因にもなります。実は私自身うつ病になった経験があるのでわかるのですが、おそらく細胞膜がすごく硬くなっていて、神経伝達に必要なミネラルも不足していたと思います。

ミネラルの重要性に気づいて

健康美の敵、活性酸素を除去する体内酵素はミネラル+タンパク質でできています。しかし現代人は加工品や乳製品、お肉の多い食生活でミネラル不足の方が増えています。海藻や味噌汁、小魚や干しエビ、あとは昆布や煮干しのダシを積極的に取ることを心がけましょう。アムリターラでも、ダシ関連の商品を多数出しています。健康的な美しさを追求する上で、ミネラルは無視できないから。わかめ、昆布、のりといった海藻類も販売しています。海苔は酸処理ではなく太陽殺菌をしているので、レモンよりビタミンCを含んでおり、にんじんよりカロテンが豊富です。オーガニック野菜を摂り続けることは難しいかもしれませんが、調味料なら消費期限もそれなりにあるし、保存できるので取り入れやすいのでは。

ミトコンドリアに注目しよう

私たちの体の60兆個ほどある細胞1つ1つの中には、ミトコンドリアが含まれています。なんと、私たちの体重の1割がミトコンドリアなのだそうです。このミトコンドリアは年齢とともに減少するため、いかに若々しく数を保つかということも重要です。元気なミトコンドリアを増やすには、まずは運動です。ミトコンドリアは筋肉に多く存在しているので、筋肉が増えればミトコンドリアも増えます。そして深呼吸糖質の摂りすぎはアンチエイジングの敵ですが、適度には摂らないとミトコンドリアがエネルギーを作れません。温かい冷たいといった刺激(温冷交互浴)や、無駄な間食をやめて空腹をしっかり感じることも大切です。

肌の老化の原因は、約80%が「光老化」

光老化とは、太陽光に含まれる紫外線、可視光線、近赤外線などあらゆる光が真皮に与える蓄積型のダメージのことを指します。みなさんの生活にかかせないスマートフォンやパソコンからもブルーライトという強烈な光が出ています。まずは肌のバリア機能が健全に機能している状態にすること。丈夫な角質層+皮脂膜にはこうした光をある程度反射したり吸収したりする力があります。そしてサンスクリーンやオイル、フィトケミカル(植物由来の化学物質)などでしっかり守ってあげましょう。

肌に負担のかからない洗顔に変えよう

①ダブルクレンジングやオイルクレンジングはご法度

私は温泉が好きでよく行くのですが、周りの女性たちを見ていると顔や体を洗いすぎている方が多いと思います。肌にある適度な角質+皮脂膜は、肌のバリアになっています。ダニ、ほこり、バイ菌などの侵入を防ぐだけでなく、体内の水分が蒸発しないように守ってくれたり、紫外線が真皮に入らないようにする働きもあります。肌のバリアを強化することが、真皮を守るためには大切なのです。しかし強い合成界面活性剤の入ったクレンジングを使ってメイクオフし続けたら、肌のバリアは薄くなり、スマホの光や紫外線をダイレクトに受けて、肌老化がどんどん進んでしまいます。最悪な場合、活性酸素が発生してコラーゲンやエラスチンを傷つけます。

②肌環境を守る微生物たちを大切に

皮膚表面や毛穴には多くの微生物が存在します。この微生物たちが、肌環境を守ってくれているのですが、ゴシゴシ洗顔をしたり洗顔力の強いクレンジングを使っていたらこれらが少なくなってしまいます。こういった微生物を大切にするために、アムリターラでは肌の負担にならない、ナチュラルなコスメを開発しているのです。

③崩れにくいメイクはたまの楽しみに

長いマスク生活の影響もあり、崩れにくいファンデーションを選ぶ方が増えてきていると耳にしました。しかし崩れにくいメイクは、洗浄力の強いクレンジングを使わないとオフできません。毎日こういった洗顔を続けていたらバリアが薄くなり、結果真皮が傷ついて消えないシワやたるみの原因にもなります。 デートや結婚式にお呼ばれした時など「今日は絶対に崩したくない!」という時は、崩れにくいファンデーションを使うこともいいでしょう。ただ、日常的には肌に優しいクレンジングや石鹸で落ちる程度のベースメイクで肌を仕上げることをおすすめします。

抗酸化作用の強い成分を塗る手も

表皮の抗酸化酵素を調べた実験データを見たことがあります。肌のキレイな方は表皮の抗酸化酵素活性が高かったんです。平然と太陽の日差しを浴びてるのに、肌がキレイな方っていますよね。そういう方は、生まれつき抗酸化酵素をたくさん持っているらしいのです。「美肌も遺伝か!」と落ち込みたくもなりますが、少し考えてみましょう。仮に自分が抗酸化酵素をあまり持っていなかったとしても、植物の持っているポリフェノールやカロルテノイドなどパワフルな成分を塗ることはできます。これは表皮の話。浸透させて真皮に届ける必要はないのです!

女性ホルモンが減少していない?

更年期じゃなくても、ホルモンバランスが悪いと肌を美しくしてくれるエストロゲンなどに影響が出ます。昼夜逆転した生活を送っていたり、工場やハウスなど通年での収穫が可能な作物を食べていたら体のリズムは崩れていきます。春夏秋冬を感じる旬の食材、そして太陽の光で目覚めるような生活をしっかりと送りましょう。

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Maria Korneeva//Getty Images

血流の悪さ、血管の老いを改善しよう

血管は大きくわけて動脈、静脈、毛細血管の3つの種類に分けられます。この毛細血管は、加齢とともに弱まります。血管の壁が弱くなり、毛細血管の量そのものも減っていきます。いろんな栄養素を摂っていても、毛細血管の量が少ないと体のすみずみにまで栄養が行き渡りません。ただ、毛細血管は努力次第でいくつになっても増やすことができるのです。

毛細血管を伸ばす&元気な血管を作るには?

食事で言うとはオメガ3脂肪酸をはじめ、クエン酸ビタミンE生姜長胡椒(ヒハツ)、炭酸水など。また入浴も効果的です。物理的に体温が上がり、血管が広がって血行が促進されます。そして、筋肉を増やすと代謝が上がり血流もアップします。しかも筋トレと有酸素運動を合わせると、筋肉はたくさんの酸素を欲するため、それに対応するために毛細血管がニョキニョキと増えることもわかっています。

アンチエイジングの鬼 まとめ

ナチュラルな方法でマイナス要素を減らすことが私の美容の大前提です。それでもできる傷をプラスのケアでカバーしています。美容整形は自由と思うのですが、未来の自分のために体の機能や自然治癒力を高めることも意識してみませんか。

勝田 小百合 プロフィール

勝田小百合

30代からエイジレスな生き方の研究を始め、2005年に始めた「アンチエイジングの鬼」が超人気ブログとなる。2008年、国産オーガニックブランドamritaraを創業し、代表と商品開発を兼務。近著に『FLOWで不老 循環美でオーガニックに生きる』(河出書房新社)がある。

Instagram @katsutasayuri @amritara_official 

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Text:NAOMI TANAKA