会社のプレゼンテーション前に緊張しすぎてしまったり、失敗が怖くて行動を起こすのをやめてしまった経験はない? そんな経験がたくさんあるという人は、失敗恐怖症になっている可能性が。今回は、菅原脳神経外科クリニックの菅原道仁先生に失敗恐怖症の特徴や改善方法を伺った。

<目次>

恐怖とは何か?

脳にある扁桃体は、情動の中枢とも呼ばれている。扁桃体が反応を起こすことで、不安や恐怖といった感情が芽生える。もし恐怖を感じなくなった場合、自分の身に起こる危険なことが判断できず、生き残れなくなってしまう。つまり恐怖とは、人間が自分自身を危険から守るための脳の反応だといえる。

失敗恐怖症とは?

仕事や恋愛において、やる前から失敗を過度に恐れ、失敗したくないからと挑戦をやめてしまうこと。物事のマニュアル化や効率性が求められがちな現代の価値観が失敗をしづらい状況を生み出し、失敗恐怖症の人を増やす要因にもなっている。また、SNSによって他者の成功体験をすぐ見ることができ、自信がなくなってしまうのも原因。

失敗恐怖症の人の特徴

菅原先生いわく、失敗恐怖症の人には4つの共通点がある。

☑できない自分を見せたくない人

-完璧主義者や目標設定が高すぎる人が多い。

☑効率性・コストパフォーマンス力を求めがちな人

-失敗経験が少ない傾向にあり、失敗することに慣れていない。

☑失敗してからかわれた経験がある人

-失敗がトラウマになったり、失敗を責められた経験、失敗=悪になってしまっている。

☑他人に頼ることが苦手な人

-自分の意見が言えなかったり相談することが苦手な人が多く、自力で解決しようとして悪循環に陥ることもある。


失敗恐怖症とポジティブシンキング、
ネガティブシンキングの関係とは?

仕事のことや恋愛のこと、日常に起こることに対して失敗を過度に恐れた結果、消極的になり、チャレンジすることを恐れすぎてしまうのが失敗恐怖症。失敗恐怖症とは、心が断崖絶壁の前で足がすくんでしまっている状況だ。「プレゼンがうまくできない」「彼女に嫌われるから会いたくない」といったネガティブシンキングはよくないと思われがちだけれど、実は私達を成長させてくれるそう。思い描いた「失敗するかも」は、言い換えれば、改善すべき点であるということと捉えることができ、ネガティブシンキングの人=先を見通せる力が強いともいえる。一方、ポジテイブシンキングはもてはやされることが多いが、注意も必要。

ポジティブシンキング:リスクを乗り越えていこうという強い気持ちがある。行き過ぎたポジティブは、失敗に気づかずに進んでしまったり、不安要素を見て見ぬふりをしてしまうパターンも多いので、将来、大きなトラブルになることも。

ネガティブシンキング:メタ認知(俯瞰で見ること)が得意で、先を見て行動ができるため何事でも成功する人が多い。ネガティブが行き過ぎると行動をしなくなってしまうので注意。

成功する人の多くは、あらゆる事象にたいして、瞬間的にネガティブ要素を思い描き、一歩を踏み出しそれらに対する対策ができる。

失敗恐怖症を改善する方法とは?

失敗恐怖症を改善していろんなことに挑戦したいと思っているなら、下記の4つを実践してみて。

①リフレーミング

リフレーミングとは、物事の見方を変えて、そのもののいい面をとらえようとすること。例えば、「失敗は成功する過程の一部」「このやり方ではできないことがわかってよかった」というように失敗は悪いことではないという考え方に変えてみて。

②違うことにチャレンジする

失敗が怖いという人にありがちなのが、1つのことでしか失敗していないのに「自分は何もできない」と考えてチャレンジすることをやめてしまうこと。スポーツの中で走るのが苦手でも球技はできるということもあるように、ひとつができなかったからといってすべてが失敗するとは限らない。

③ハードルを下げる

失敗恐怖症の人は、目標を高く設定しすぎて上手くいかないことも多い。菅原先生いわく、失敗が怖い人は「目標のハードルを下げること」が大事なのだとか。成功体験を積み重ねることで脳内からドーパミンが出て、モチベーションアップにつながる。

④1つ1つのことに集中する

結果を出すこと、やった後の心配をするのをやめて、とりあえずやってみるという気持ちを大切にしよう。人は注意力を分散する仕組みになっているため、マルチタスクはNG。人の集中力は15~20分なのでその時間は1つのことに集中して向き合ってみて。

まとめ

・失敗恐怖症は、完璧主義者の人に多い

・失敗恐怖症の克服には、リフレーミングがおすすめ

失敗を恐れすぎることなく、いろんなことにチャレンジしてみよう。


お話を伺ったのは…

菅原脳神経外科クリニック

院長 菅原 道仁(すがわら みちひと)先生

菅原先生

現役脳神経外科医。杏林大学医学部卒業後、クモ膜下出血や脳梗塞といった緊急の脳疾患を専門とし、国立国際医療センター、北原脳神経外科病院にて数多くの救急医療現場を経験。現在は、「病気になる前にとりくむべき医療がある」との信条で、菅原脳神経外科クリニック(東京都八王子市)、菅原クリニック 東京脳ドック(港区赤坂)で診療を行っている。脳のしくみについてのわかりやすい解説は好評で、「主治医が見つかる診療所」(テレビ東京)をはじめ、テレビ出演多数。著書に『認知症予防のカキクケコメソッド』(文響社)『そのお金のムダづかい、やめられます』(文響社)、『死ぬまで健康でいられる5つの習慣』(講談社)などがある。

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Nao Sakamoto
エディター

アシスタントエディターとしてSNS業務も担当。人間の心理、睡眠や美容に興味を持ち、記事執筆を行っている。自他ともに認める運動音痴だが、最近ヨガとピラティスで心と体を整え始めた。健康なライフスタイルを送りたいため、1日1食オートミール生活を実践中。