「私ってレズビアン?」と自分の心に問いかけたことがあるのは、決してあなただけじゃない。自分のセクシュアリティや実体験にそぐうラベルが分からないのは、本当によくあること。

ほかのアイデンティティと同様、レズビアンの定義は人によって大きく違う。でも、クィアに詳しいセックスエキスパートで性科学者のマーラ・レネー・スチュワートによると、一般的にいわれているのは、感情的、心理的、身体的、または性的に女性に惹かれる女性のこと。また、レズビアンという言葉は、男性以外で、セックスや恋愛の対象が主に女性または女性だけの人たち(女性、ノンバイナリーやアジェンダーの人たち)にも使われる。

辞書の定義がなんであれ、その言葉が自分に合っているかいないかを判断できるのは自分だけ。「自分の性的指向やアイデンティティをレズビアンという言葉で表すことに違和感がないのなら、あなたはレズビアンですね」とスチュワート。違和感があるのなら、ほかのラベルを使ったり、複数のラベルを組み合わせたりすればいい。レズビアンの代わり、またはレズビアンと共に使われるラベルには、バイセクシャル、パンセクシャル、バイロマンティック、パンロマンティック、アロマンティック、クィアなどがある。

「文化や民族意識によって、自分に対する認識や自分が好むラベルが変わることもあります」とスチュワート。「黒人レズビアンのコミュニティに属する女性は、“レズビアン”という言葉より“ゲイ”という言葉を好むかもしれません。黒人のレズビアンは人種差別の対象になりやすいですからね」

また、自分で自分に貼ったラベルは、いつでも剥がせる。「生涯を通じてセクシュアリティが変わることはありますからね」と話すのは、著書に『All The F*cking Mistakes』を持つセックスコーチで性科学者のジジ・エングル。「人間のセクシュアリティは、私たちが思っているよりはるかに複雑なものですよ」

そこで今回は、自分のセクシュアリティとラベルを探る際のポイントをクィアの性教育者たちがアメリカ版ウィメンズヘルスに教えてくれた。性的マイノリティの15名が語ってくれた体験談も参考にしてほしい。

自分がレズビアンなのかどうか分からないときは、どうすればいい?

1.定義を深く考えてみる

「新しい世界には、予備知識を持って飛び込みましょう」とスチュワート。レズビアンというラベルが意味することや、ほかのセクシュアリティやジェンダー(フェムやクィア)が意味することをじっくりと考えて。米国のLGBTQ+支援団体『ヒューマン・ライツ・キャンペーン』の用語集(英語)は役に立つかも。

2.LGBTQ+の輪の中に入ってみる

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DisobeyArt//Getty Images

LGBTQ+のコミュニティにいる人と一緒に行動してみれば、あなた自身のアイデンティティが見えてくるかも。スチュワートいわく『プライド』のイベントや地元のLGBTQ+センターに行ってみたり、レズビアンの人たちの体験談を聞いたりするといいみたい。

内向的な人やコロナウイルス感染症が気になる人には、クィアのポッドキャスト、オンラインのセクシュアリティ・トレーニング、レズビアン関連のオーディオブックがオススメ。自宅にいながら、LGBTQ+のコミュニティと触れ合っているような気分になれる。

3.メンタルヘルスの専門家に相談してみる

スチュワートによると、メンタルヘルスの専門家と一緒なら、安全な環境で自分のセクシュアリティが探究できる。可能であれば、LGBTQ+に詳しくてクィアをオープンに受け入れているセラピストを見つけてほしい。

専門家のツールを使うと、自分自身の欲求や、その欲求のままに生きることを邪魔しているものが見えてくる(自分の中に同性愛に対する嫌悪感や偏見があることも)。「現時点では自分のセクシュアリティやラベルを恥ずかしく感じている人も、専門家の力を借りれば、セクシュアリティやジェンダーを探究し、ありのままの自分を受け入れるために必要なスキルが身に付けられますよ」

4.デートをしてみる

「ほかの人の力を借りて、自分のセクシュアリティを探ってみるのもいいですね」とスチュワート。この意味では、いろんな人とデートやセックスをしてみるのも間違ったことじゃない。

スチュワートによると、あなたの意図を“正直に話したうえで”誘うのは、まったくもって正当な行為。プロフィールに「女性経験が豊富な女性から手ほどきを受けたいです」「レズビアンデビューをしたばかりで、メンター、友達、デートの相手を探しています」などの文言を付け足してみるといい。

5.レズビアンやクィアのセックスについて調べてみる

ジェンダーが近い人と初めてセックスをするのなら、レズビアンやクィアのセックス本で予備知識を付けておこう。「いろんな種類のレズビアンのセックス本を読んでおけば、自分のニーズが見えてきますし、寝室で具体的にどんなことがしたいのかも分かってきます」とスチュワート。

6.不変性を恐れない

セクシュアリティは生涯を通じて変わるもの。「10年前の自分が求めていたことと、いまの自分が求めていることが違ってもいいんです」とスチュワート。これは10年後の自分にもいえること。自分にはいまのラベルがピッタリと感じていても、「ずっと満たされていられるように探究心を持ち続けましょう」

7.ラベルを使わなくてもいい

セクシュアリティを探る探らないは別として、自分にラベルを貼らなければならないということは“絶対”ない。「ラベルを選ばなければならないというのは思い込みで、必ずしも真実ではありません」とエングル。「あなたのラベルを決められるのも、ラベルを使わないと決められるのも、ラベルを併用すると決められるのも、あなた1人だけですよ」

自分のセクシュアリティを受け入れた15名の体験談

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Ada daSilva//Getty Images

1.女性に話しかけられるとドキドキした

「中学時代にゲイの電子書籍を山ほど読んだいたので、なにかあるなと思ってはいましたが、それを単なる“性癖”として抑圧していたんです。単なる性癖じゃないことが分かったのは、高校の女友達に挨拶されてドキドキしたとき。『やっぱり私はストレートじゃないんだな』と思いましたね」ーグレイス(21歳)

2.友達よりも探究心が強かった

「いまはラベルを持たないことにしていますが、使うなら“クィア”ですね。“ストレートじゃない”ことの意味が分からなくても、とりあえず“ストレートじゃなければいい”みたいな感じの言葉なので。クィアという結論に至ったのはロックダウン中ですね。1人で考える時間が増えたので、自問自答を繰り返していたんです。昔から友達よりも探究心が強いタイプで、女性と付き合ったらどんな感じになるのかを考えたりしていました。“ストレートじゃない”という結論に至ったいま言えるのは、この傾向が子供の頃からあったということ。自分の親に『お互いの人柄で惹かれ合うなら、男の子と女の子の両方を好きになるのが自然じゃない?』と聞いたことがありましたから」ーサラ(19歳)

3.潜在意識が伝えようとしているのなら......

「そうかもしれないと思ってはいましたが、確信したのは高校時代、女の子の夢を見るようになったときです。『う~ん、私の潜在意識が伝えようとしているということは、間違いなくなにかある』と思いましたね。しばらくいろいろ考えて、やっぱりバイであることを確信しました」ーマディ(23歳)

4.女の子で初めてのオーガズム

「カトリック系の女子高に通っていたので、自分のセクシュアリティをまったく知らずにいましたが、所属していたサッカーチームの女の子たちを好きになって、自分がゲイであることを知りました。その子たちの人柄にも見た目にも魅力を感じていたんです。自分のセクシュアリティを悟ったのは、女の子と初めて体の関係を持ったとき。無数の男性と付き合っても得られなかった心のつながりが得られました。初めてのオーガズムも女の子とでしたね」ージュリア(22歳)

5.クラスメイトとキスがしたかった

「16歳のとき、全寮制の女子高のクラスメイトを好きになって、キスしたいと思ったんです。それで自分がストレートじゃないことや、男性以外の人も好きになることを知りました。いまは性器だけというよりも、チャームポイントや人柄で好きになります。どちらかというと積極的なタイプというか、リードしてくれる人、守ってくれる人、与えてくれる人が好きですね」ーメグミ(37歳)

6.友情の種類が違うだけだと思っていた

「いまの彼女と友達になるまでは、自分がゲイとは思ってもみませんでしたが、いま振り返ると、あちこちにヒントがあったと思います。彼女のことは交際前から何年も知っていましたが、仲良くなってからのほかの友達とは違う意味で好きなことがハッキリしてきて。それは彼女も同じでしたが、最初は混乱しましたね! 友情や感情の種類が違うだけで、クィアな恋とは思っていませんでしたから」ーアレックス(22歳)

7.違うと信じたかったから「私はゲイ?」とグーグルに聞いていた

「テレビや映画に出てくる女性にハマることはあったものの、その女性と入れ替わりたいのか、友達になりたいのか、付き合いたいのかは分からずにいたんです。『トランスフォーマー』のミーガン・フォックス、『スカイ・ハイ』のメアリー・エリザベス・ウィンステッド、『パーシー・ジャクソン』のアレクサンドラ・ダダリオ、『バットマン』のアン・ハサウェイにはぞっこんでした。そのうち、グーグルで『私はゲイ?』と調べるようになったんです。自分は違うと信じたくて。でも、最終的には自分の気持ちを受け入れましたね。グーグルに『私はゲイ?』と聞かなければならないこと自体が、ストレートではないことを示していたと思います」ーダコタ(23歳)

8.男性と過ごす未来を想像すると息苦しいことに気付いた

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PhotoAlto/Frederic Cirou//Getty Images

「男性と過ごす未来を想像すると怖くて息苦しい感じがするのに、女性と一緒にいることを想像するとワクワクすることに気付いた瞬間、ハッとしました。男性と一緒にいると結婚や(一夫一婦制)にまったく興味が湧かないのに、女性とは家庭を持ちたいと思うんですよね」ーフェルナンダ(22歳)

9.大学に入るまで自分のラベルが分からなかった

「中学校を卒業する頃には、幼馴染と友達以上の関係になっていました。彼女と一緒に自分のセクシュアリティを探しましたが、大学に入るまでは自分のラベルが分からなくて。結局その子と別れることになり、大学生活はゲイとして送りました。自分に合ったラベルを見つけたのは、自分の中にバイに対する嫌悪感や偏見があることに気付いたときです。バイセクシャルというラベルを一生使うかは分かりません。そもそも自分にラベルを貼るのは好きじゃないので。でも、かつて私の魂を押し潰していたレズビアンやストレートという言葉よりは的確です」ーミカエラ(20歳)

10.女友達と乱交パーティーをした

「20代の半ばまで、自分はストレートであると自分に言い聞かせていましたが、これまで自分がカワイイ女友達と乱交パーティーをしたりして、自分自身のクィアな部分を探究してきたということに気付いてからは、クィアであることが好きになってきましたね。私にとってクィアは新しいことというより、自己実現の形でした」=メリッサ(38歳)

11.男の子と付き合いたいと思わなかった

「自分がゲイであることは、田舎の女の子にありがちな方法で知りました。昔から女の子と一緒にいたくて、男の子と付き合いたいと思わなかったんですよね。ほかの女の子もそうだけど、それを無視して男の子と付き合っているんだと思っていました。グーグルに『女の子にキスをしたいと思うのはゲイだから?』と聞いたことも覚えています。高校では男の子と付き合っていましたが、パーティーではOKの女の子にキスをしていて、ある日ふと、自分の気持ちを誤魔化すのはもうやめたいと思いました。そのときはまだコンパルソリー・ヘテロセクシャル(異性愛者であることを余儀なくされた人)だったのでバイセクシャルだと思いましたが、友達と話し合い、初めて女性のパートナーができたことで、男性に対しては同じ気持ちにならないことがハッキリしました」ーケリー(22歳)

12.女の子と話すとドキドキした

「自分のセクシュアリティを受け入れるのは大変でしたし、まだ完全に受け入れたわけではないと思います。自分がバイセクシャルであることを知った決定的な瞬間は、これといってありません。ただ、11歳の頃には女の子がカワイイと思っていて、少し大きくなってから女の子に恋をしたのは覚えてます。女の子と話していて、初めてドキドキしたんですよね。恋をするのは初めてでしたが、その子に対して友達以上の気持ちがあるのは分かっていました」ーアニー(19歳)

13.女子ラグビーチームに入っていた

「女子ラグビーをしている人が全員レズビアンとは言い切れませんが、私が所属していた大学のラグビーチームは大半がそうでした。自分がその1人かもしれないと思ったのは、飲み会でみんなのイチャイチャに混ざったときです。翌朝起きて、これならシラフでも続けたいと思いました」ーキャメロン(26歳)

14.女の子にキスをしたいか聞かれてした

「私はストレートからゲイになったのではなく、ノンセクシュアルから1人の女性を好きになった人間です。男の子を好きになることや男の子に惹かれることは、子どもの頃から一度もありませんでしたが、女の子が好きという自覚もありませんでした。でも、18歳のある夜、(私が好きだった子とは別の)高校の親友が泊まりに来て、ベッドの中で私の背中を撫でながら『キスしたい?』と聞いてきました。その瞬間、全身がキスしたいといったんです。それ以来、女の子としか付き合っていませんし、ゲイという言葉を使っています」ーガブリエラ(27歳)

15.なんとなく、そんな気がしていた

「一気に目覚めた瞬間みたいなものがあればよかったんですが、ありませんでしたね。小学生の頃にはすでに、周りの女子とは違う意味で、女の子が好きなのは分かっていました。でも、確信したのは中学時代。『South of Nowhere』や『Degrassi』などのテレビドラマで、クィアな話に自分自身を重ね合わせていたんです。それで母親のもとへ行き、自分も『South of Nowhere』のスペンサー(レズビアンの女の子)であることをカミングアウトしましたね」ーハンナ(26歳)

※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: Madeline Howard And Gabrielle Kassel Translation: Ai Igamoto