ケリー・クラークソンやデスティニーズ・チャイルド、Ne-Yoなど人気歌手が詩に表現したのは、「非依存」であって、「共依存」ではない。
両者はたった一文字の違いでも、意味は大きく異なる概念。「共依存」とは一体なに?
アメリカ版ウィメンズヘルスから詳しく見ていこう。
共依存とは、非依存(自立)とは真逆の状態。健康的とはいえないレベルで互いに依存しあう恋人や家族、友人間に起こると、ボストンのカウンセリングサービスTalkHinkThriveのオーナーであり、結婚・家族関係のセラピスト、オマー・ルイズ・LMFT氏は説明する。
共依存は実際、恋愛関係においてのみ起こるわけではない。しかし、パートナーのどちらかが依存症や薬物乱用の問題を抱えている家庭では、とくに共依存の症状が出やすいとルイズ氏は指摘する。
自立心があることを誇りに思っている人にとっては、「そんなこと起こりえない」と思うかもしれない。けれども、共依存に対する予防ワクチンはない。今はまだなにも起きていないとしても、知らないうちに気づけばどっぷりと浸かってしまっている可能性もある。
幸い、共依存的な人間関係にあるとわかれば、その関係から自分を解放する策を考えたり、関係を完全に再構築したりすることもできるという。今、共依存に陥っていなくても、兆候や症状を知っていれば、共依存関係を避けることや、見極めることもできる。
共依存の意味って? 関係を相互依存の関係へと変えるにはどうすればいい? 自立心を取り戻すには? 共依存に関するさまざまな疑問の答えと、そこから立ち直るためのヒントをご紹介。
共依存とは?
辞書『Merriam-Webster』で共依存を調べると、「自尊心の低い人が、他人からの承認を得ようとする(必要とする)関係で、しばしば支配的あるいは操作的」とある。
けれども専門家によると、定義づけられているほど、故意に悪質なものではないという。それは単に、二人の人間が互いの存在がないと、機能しないような機能不全の関係であると、認定心理学者でありセックス・セラピストのシャンノン・チャベス医学博士は話す。キーワードは「機能不全」だそう。
このような状態では、文字通り相手の助けなしには「生きる」ことができないパートナーが多いとチャベス医学博士は説明する。こうした人たちはテイカー(taker)と呼ばれる。「そして、テイカーのために、自らのニーズを犠牲にするもう一人のパートナーをギバー(giver)あるいはケアテイカー(caretaker)と呼びます」
これは1人がサービス行為(洗濯物を畳んだり、食事の準備をするなど)をし、もう1人が愛する人の生活を楽にするために仕事を引き受けるということ以上の状態だという。共依存の関係においては、例えば一人が相手のために料理をする必要性を感じ、もう一人が料理される必要性を感じるということだと、ルイズ氏は説明する。
「共依存の関係では、片方の一人が、相手のために十分にできなければ見捨てられてしまうかもしれないと心配し、常に相手のニーズに応えなければならないと感じてしまいます」とルイズ氏。
ルイズ氏が指摘する、共依存関係にある一般的な兆候や症状は以下の通り。
・相手がいないと混乱したり、途方にくれたり、うろたえたりする
・自分よりもパートナーの幸福を優先する
・本能的直感を無視したり、鎮める
・境界線を設定するのが怖い、できない
頼りにしたり、心のよりどころとなる人がいることは健康的だが、もしその人なしでは機能しなくなるのであれば、その関係の本質は見直してみる必要がある。
長期にわたる共依存的な関係は、アイデンティや自己の感覚を悪化させる。すなわち、相手の枠を超えて自分のニーズを把握することが難しくなる。そして相手に見捨てられたり、離れざるを得なくなったり場合、その関係以外の人たちとは有意義な絆を築くことができないと感じ、苦労してしまう。
共依存をやめるには?
例え、上記で自分に思い当たるものがあったとしても、まずは変わりたいという勇気を称賛したい。共依存から抜け出したいと思う気持ちは小さなことではないけれど、共依存をやめるための12のポイントをご紹介。
1. メンタルヘルスの専門家に話をする
共依存は突然フッと現れるわけではない。
「通常、若年期のトラウマがこういった行動につながります」とチャベス医学博士。例えば、未解決の育児放棄の問題、家族制度はこうあるべきだという深い信念、若年期の養育者との癒えない愛情にまつわる傷などが挙げられると医学博士はいう。
「共依存の根源に対処することが、先に進んでいくのに不可欠です」と彼女は話す。チャベス医学博士は、共依存を専門とする医療従事者と協力することを推奨する。
2. 問題を特定する
セラピストは当然手助けをしてくれるが、ルイズ氏が推奨するのは共依存がどこに、どのように現れているかを具体的に把握すること。
自分が誰かと共依存関係にあることがわかったら、その関係においてなにが問題なのかを把握することを勧めている。さらに次のような質問を自分に問いかけてみよう。
・共依存がもっとも顕著に現れるのはどこか?
・共依存の関係は、自分をどう感じさせているか?
・共依存がいつ始まったか特定できるか? また、どのように、なぜ始まったのか?
これらの質問の答えは、依存にリミットを掛けるためになにが必要か理解する手助けをしてくれると、ルイズ氏は話す。
3. サポートネットワークを強化する
パーソナライズされたセラピーが有効であることは間違いない。「けれども、核心的な問題に向き合い、過去に受けた無意識な傷を癒し始めるセラピーグループやプログラムもあります」とチャベス医学博士。そういったサポートシステムを活用すると、他人への健全な依存や自己認識・ケアに対する責任などに関連する新たなネットワークを形成することができるそう。
これらのグループやプログラムへのアクセスは以前より容易になった。大半がオンラインのみ、あるいはオンライン支店があるという。
4. 調べる
なにかを学びたいなら、専門家から学ぶのがいい。共依存でいえば、ピア・メロディー及びメロディー・ビーティーの専門家の名前が挙がる。
共依存・境界線・回復を専門とする世界的に有名なセラピストのメロディーは、チャベス医学博士が「必読書」だという『Facing Codependence:What It Is, Where It Come From, How It Sabotages Our Lives』を執筆。そして自助努力の第一人者であるビ―ティーは、100万回以上購入されたオーディオブック『Codependent No More; How To Stop Controlling Others and Start Caring For Yourself』の著者である。
5. 学ぶ
知識を取得するとき読書のほうがよいなら、依存症や虐待、愛情理論、子育てなどについて調べてみるといいとチャベス医学博士はいう。「こういったトピックについて詳細を学ぶことで、自分の行動や信念、共依存を形成するパターンの起源に向き合うのに役立つことがあります」
6. なにを求めているか自身に問う
その答えがいますぐわからなくても大丈夫。Mend Modern Thereapyの認定カウンセラーで、認定専門カウンセラーのレベッカ・フィリップスによると共依存から立ち直る人にとっては、非常に一般的なことだという。「共依存関係にいる多くの人は、機能不全な関係のなかで自身のアイデンティーが隠されてしまうので、自己感覚を失ってしまいます」
だからこそ、自分がなにを求めているかを学び直すことは非常に大切だそう。「その関係以外の一個人としての自分を振り返ると、自分らしさを取り戻すためにはなにが必要なのかを把握できるようになります」
友人との会話、自然散策、内省してみることなどがそれを見つけ出すのに有効だという。
7. 境界線を設定する訓練をする
自分がなにを求めているかを知り始めたら、それ以外のことにはノーと言おう。
「パートナーが互いに過度に依存している場合、健全な境界線を設定したり、維持したりすることが難しくなることがよくあります」とフィリップス氏。
「境界線がなければ、自分を十分に表現することも、個々のニーズを主張することもできません。境界線を再確立することは、個人のニーズを主張する1つの方法です」
いくつかのセリフを試してみよう。
・「行きたいんだけど、別のことを提案してみてもいい?」
・「今夜は遊びに行く元気はないんだけど、次回はぜひ誘ってね」
・「今夜は自分のための時間が必要なの。でも、明日はなにしてる?」
8. 記録する
驚くことに、記録することも過程の一部。なにを書いたらいいかわからない? チャベス医学博士は、アファメーションから始めることを推奨する。
「アファメーション(なりたい自分になるため宣言をして、なりたい自分を引き寄せる)は多くの人が乗り気になれないかもしれませんが、体がポジティブに反応するような文言で、自動思考できるように仕向けるのに役立ちます」とチャベス医学博士。「私はケアされたり、愛される価値がある」や「私のニーズは、私の時間とエネルギーを費やす価値がある」などのようなことを書きとめると、それらが真実であるように信じ始めるのに有効だそう。
9. ポジティブなことに目を向ける
自分のすべきことに取り組むとき、まだまだあると思うと落胆してしまいがち。そこでチャベス医学博士は、ポジティブなことに目を向けることを推奨する。「自分を大切にしたと思う方法を1週間毎日書いてみてください。あるいは恐怖や挑戦、目標など、その週に克服したことを言葉にして共有してみましょう」
10. 自分が気持ちいいと思えることをする
「共依存関係では、お互いが自尊心の低さに悩むのが一般的です」とフィリップス氏。この自尊心の低さの現れかたが異なるだけだそう。
一人は、自分に価値を感じるために誰かの世話を焼く必要性として現れ、もう一人は、機能低下として現れると、彼女は説明する。「逆説的ではありますが、両者の自尊心の低さは、機能不全な共依存的行動によって促進されてしまいます」これでは良くない。
幸い、どちらにとっても自分が最高の状態であると感じられることを最優先することで、世界が変わる可能性があるとフィリップス氏は述べている。髪を洗う、瞑想する、ランニングする、自分がとくにキレイだと感じたら写真を撮る、あるいはまったく別のことでもいい。やってみて。
11. メディアの情報には慎重になる
テレビやSNSでは全体像はわからない。「SNSの写真やテレビ番組、映画などを通して人間関係を見ると、本当の意味での健全な関係が歪んでしまうかもしれません」とルイズ氏。
「もし人間関係の極端なところ(常に幸せ、または常に口論しているなど)しか見てないとしたら、対立を乗り越えるために話し合いをするなど、より中立的な対応を必要とする状況に直面したときに、困難になるでしょう」とルイズ氏はいう。
スクリーン上に映し出される人間関係が現実的でない、あるいは部分的にしか示されてないものなどの名前を挙げてみよう。
もしくは、高校時代のいじめっ子が恋人や赤ちゃんとの写真を投稿しているのを見ても、それは彼らが見せたい一部の関係でしかないと、自分にいい聞かせよう。
12. ほかの人間関係を振り返ってみる
あなたはいまある特定の人間関係を思い出しながら、これを読んでいるかもしれない。けれども、人生におけるほかの人間関係も振り返る時間をとるべきだと、フィリップス氏は提案する。「多くの友人関係は共依存です」とフィリップス氏。
ゆえにほかの友人関係についてもじっくりと見つめ、一方が常に与える側で、もう一方が常に受け取る側であるパターンがないか思い出してほしい。あるいは、アンバランスな関係でないかどうか。
そして、共依存からの回復を通して学んだことを実行し、バランスと落ち着いた感覚を取り戻すため、必要なだけ多くの人間関係に適用しよう。
※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。
Text: Gabrielle Kassel Translation: Asami Akiyama