浮気と聞いて、まず頭に浮かぶのはおそらくセックス。または、あなたのパートナーが他の人とベッドの中にいる姿。でも、出会い系アプリやスナップチャットの台頭で、コンスタントなコミュニケーションが容易になったいま、世の中に“心の浮気”が増えているという。詳しく見ていこう。

「最近は、浮気の種類も機会も、昔とは比べものにならないほど多いですから」と話すのは、米カリフォルニア総合研究所の心理学・健康学部長、ニコール・ザピエン博士。

ザピエン博士いわく浮気とは、セクシャルまたはエロティックな性質の裏切りに思える行為。「体の触れ合いやセックスが必要とは限りません」。“セクシャル”や“エロティック”という言葉は意味合いが広く、気持ちだけのつながりが“ただの友達”のラインを超えて、他の何かに発展することもある。ここからは、何が心の浮気となって、何が警告サインとなるのか、そしてパートナーが心の浮気をしているときに何をすればいいのかを見ていこう。

心の浮気とは

心理学者のサマンサ・ロッドマン博士によると、心の浮気とは、通常ならパートナーに向ける感情的なエネルギーと性的なエネルギーを他の人に向け、結果として当初のパートナーと築いてきた関係の価値を落とすこと。パートナーより他の人と話したいと思ったり、くだらない出来事を共有したいと思ったり、その人の前で、いまのパートナーに関する不平不満を言ったりするのは心の浮気。

ザピエン博士によると、それが本当の浮気と見なされるには、そこにパートナーを裏切る気持ちと、親密/感情的/エロティック/セクシュアルなニュアンスを含む言動がなければならない。でも、その言動に関する明確な定義はないので、大抵のことが曖昧な“グレーゾーン”に分類される。

著書に『Chatting or Cheating』を持つ心理学者のシェリ・メイヤーズ博士は、こうまとめる。「秘密の状態、親密さ、性的なケミストリー(相互関係)という3つの要素を含む関係は、プラトニックな友情ではなく心の浮気と言えるでしょう」

ロッドマン博士によると、心の浮気相手も最初は友達。とはいえ、大抵みんなパートナー以外の友達がいるし、いまの関係を傷つけない健全な範囲内で他の人に惹かれたり、気のあるそぶりを見せたりすることがある。「でも、心の浮気は、自分がいつもとは違う惹かれ方をしていることも、それが本格的な心の浮気に発展しかねないことも、最初から何となく分かっていながら始めるものです」

要するに、パートナーの目の前ではしないことや、パートナーに黙っていたいことを他の人とするのは、あなたが心の浮気の瀬戸際にいることを示す警告サイン。

パートナーが心の浮気をしているサイン

パートナーが上の空? 心の浮気は、あなたとパートナーの間にあった深いつながりを少しずつ壊し、最後は火を消してしまう。心の浮気はエネルギーを消費するため、パートナーは当初の相手に構う余力がなくなって、心ここにあらずの状態に。パートナーに以下の変化が見られたら、心の浮気を疑って。

1.他の人の話ばかりする

ロッドマン博士によると、心の浮気をしている人は、無意識のうちにパートナーの注意を引こうとするもの。むしろ、自ら浮気に触れるケースも稀じゃない。あなたが聞いてもいないのに、新しい同僚が最高で、毎日一緒にランチに行っていることをとりとめもなく話すのは、あなたの気を引いたり、あなたを心配させたりするため。

あなたが問題の人について率直に尋ねると、パートナーに反発されたり言い返されたりするかもしれない。これは、あなたのパートナーが問題の人物を心から気に掛けており、その人に感情的なエネルギーを注いでいる証拠。

2.パートナーとの関係から生気が消えた

ちょっと前まで1日中メッセージのやりとりをしていたのに、いまでは家に帰っても、ソファーに座って、お互い別のパソコンで遊ぶだけ。何かが欠けている感じ。心の浮気をしている人は、自分の感情、エネルギー、行動が他の人に向けている。そして「他の人に費やす感情やエネルギーが増すにつれ、当初の関係から離れていきます」とロッドマン博士。その結果、2人の間に生気がなくなる。

3.嘘の匂いがする

パートナーがいると言ったところにいない。怪しいレシート。電話やメールにかかりっきりで、あなたが部屋に入っていくと上手くごまかす。ザピエン博士によると、隠し事は浮気の大きなサインで、パートナーのリソース(時間やエネルギー)が、あなた以外の誰かに使われている証拠。

心の浮気を乗り越えるには

外でセックスをしなくても、愛のある関係の根底にある信頼は崩れてしまう。体の浮気と同じく心の浮気も、相手を傷つけ修復を難しくする秘密の関係。「人間関係の修復には相手からの信頼が必要ですが、浮気の場合は、その信頼が失われているので、関係の修復が特に難しいですね」とザピエン博士。

どんな浮気も乗り越えることは可能。でも、浮気の性質、その相手、当初のカップルの関係性はケースごとに違うので、パートナーの浮気が発覚したあとに何をするかは、あなたが何を求めるかによって変わる。

まずは、浮気そのものに対処するのが最初のステップ。メイヤーズ博士によると、家で2人きりのタイミングを選ぶにせよ、セラピストに同席してもらうにせよ、「対立」ではなく「話し合い」のスタンスで挑むべき。その際に意識するポイントは以下の3つ。

①その会話の中で自分が成し遂げたいことを前向きな態度で話す

②懸念事項を率直に打ち明ける

③その問題に一緒に取り組む意思を見せ、真実を聞き出す

そうすれば、相手が守りに入りにくい。話が進み始めたら、一緒に過去を振り返る。「浮気の裏には一連の出来事があるはずです」とザピエン博士。「パーティーで会って、その流れで1度だけ、ということはありません」。浮気の前に、お互いが感じていた不満を大まかに共有し、その上で解決策を話し合おう(浮気をしたほうは寂しさを感じていたのかもしれない)。

他の人としても許されること、他の人としたら許されないことを2人の間で明確にして、自分に自信をつけながら、2人の時間を守ること(例:外食中はスマホを見ずに、2人のつながりを大切にする)。ザピエン博士の話では、セラピーを受けるのも、オープン・リレーションシップの可能性を探るのも、別れることで合意するのもよいオプション。解決策は、そのケース特有の状況と目の前の問題次第。

どのオプションを選ぶにせよ、頑張る覚悟を。メイヤーズ博士が言うように、やり直しはきくけれど、そのためには双方が前向きに努力して、コミットメントと信頼を取り戻す必要がある。

※この記事は、アメリカ版『Prevention』から翻訳されました。

Text: Cassie Shortsleeve Translation: Ai Igamoto