「健康のため」と考えてプロテインを飲み始めたら、「お腹を下した」「下痢をする」なんて声がちらほら聞こえてくる。腹痛や下痢を無視してプロテインを飲むのは禁物。そんな症状が出るのは、体が受け付けていないサインだ。では、なぜお腹を下したり、下痢をしてしまうの? 原因と対処法を医師で予防医療に詳しい桐村里紗さんが教えてくれた。


【目次】


【再確認】プロテインとは?

close up of sectioned plate with eggs, pork, salmon and steak
Adam Gault//Getty Images

プロテイン(protein)とは、英語でタンパク質のこと。肉や魚、大豆など、さまざまな食べ物から摂取することができます。

タンパク質は筋肉だけでなく、皮膚や髪、内臓など、体のさまざまなものを作るのに必要な栄養素。さらに、免疫機能や解毒、代謝などに必要な酵素や心の状態に関わるセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質などもタンパク質が原料になっています。タンパク質は私たちが生きるうえで、なくてはならない存在です。

タンパク質は毎日の食事で摂るのがベストですが、不足しがちな栄養素であることは事実。タンパク質を補うためにプロテインを日ごろから取り入れているひともいるかもしれません。しかし、プロテインが体に合わない人もいるのは事実。今回はプロテインを飲んでお腹を壊してしまったり、下痢をしてしまったりする原因・対処法について解説します。

プロテインを飲むとお腹を下す・下痢をする原因4つ

close up of hand holding whey cup on table
Gabriel Vergani / EyeEm//Getty Images

プロテインとひとことで言っても、その種類は色々。お腹を下したり、下痢をしたりする原因もさまざまです。

  1. 乳糖不耐症
  2. カゼインタンパク質が合わない
  3. 大豆に含まれるレクチンが合わない
  4. 甘味料による下痢

それぞれ細かくご説明します。

【原因と対処法①】乳糖不耐症の場合

プロテインは牛乳が原料に含まれているものが多いです。牛乳には乳糖という糖が含まれています。それを消化する酵素を持っていない人は、乳糖が大腸まで届いてしまい、水を引き寄せるのでお通じが水っぽくなります。

牛乳由来のホエイプロテインやカゼインプロテインを飲んで下痢をする場合、まずは乳糖不耐症の可能性を考えたいところです。

日本人の約半分は、乳糖を分解する酵素を持っていない「乳糖不耐症」と考えられます。

対処法は?

この場合の対処法としては、牛乳由来でないプラントベースプロテインにスイッチすること。

ソイ(大豆)・ピー(えんどう豆)・ライス(米)・ヘンプ(麻の実)など、色々なプラントベースプロテインがあるので、トライしてみて。

【原因と対処法②】カゼインタンパク質が合わない

牛乳由来でもホエイは大丈夫なのに、カゼインを含むプロテインでお腹を下す場合。これは、カゼインというタンパク質の不耐症の可能性があります。

ホルスタイン牛乳に含まれるカゼインタンパク質は、消化が比較的難しく、個人差がありますが、アレルギーや不耐症を起こしやすいタンパク質の一種です。

腸の炎症の原因になる場合もあり、アメリカではカゼインを含む乳製品を摂らない健康法「カゼインフリー」のダイエットも一般的です。

対処法は?

消化が悪いカゼインタンパク質は、おもにホルスタイン牛乳に含まれています。ジャージー種やブラウンスイス種の牛のカゼインタンパク質は、少し構造が違うので、カゼインの問題を起こしにくいとされています。

ただ、プロテインではこれらの牛由来のものを選択することができないので、解決策としては、やはりプラントベースに切り替えることになりますね。

いずれにせよ、牛乳は環境への負荷が大きい飲み物です。環境のことを考えたエシカルな選択をする場合、プラントベースをお勧めしたいところです。

【原因と対処法③】大豆に含まれるレクチンが合わない

プラントベースにしたはいいが、大豆プロテインでもお腹を下す人もいます。

実は大豆にもレクチンという、消化が難しい糖タンパクが含まれています。レクチンは、ナスやトマトなど色々な植物に含まれているので、食べてはダメというわけではありません。しかし、小腸での消化や腸内細菌の代謝消化管の表面上皮細胞と反応してしまうので、大量に摂取すると腸の炎症やアレルギーの原因になることがあります。

ちなみに、小麦のグルテンも、レクチンの一種です。人によって感受性が違いますから、下痢をする場合は合わないと考えた方が良いですね。

対処法は?

レクチンレスやレクチンフリーのピー(えんどう豆)や、レクチンフリーのライス(米)・ヘンプ(麻の実)など、ソイ以外のプラントベースプロテインにスイッチすると良いでしょう。

【原因と対処法④】甘味料による下痢

プロテイン以外の添加物によって下痢を起こすこともあります。よく含まれているのは、人工甘味料です。

人工甘味料には、アスパルテームやアセスルファルカリウム、スクラロース、ネオテームなどの種類があります。これらは、お腹の張りや下痢を引き起こす可能性があります。また、それだけではなく、「ゼロカロリー」でありながら、血糖値を下げるホルモン・インスリンの分泌を刺激してしまうため、血糖値の乱高下や「もっと欲しい!」という欲求につながる可能性が指摘されています。

対処法は?

人工甘味料を含めて、甘みのないものをチョイスするほうがベターです。体にいいはずのプロテインで下痢をする場合、何らかの体の「NG」サインと考えて、別の種類のプロテインにスイッチしてみましょう。

まとめ

この記事では、プロテインを摂取することでお腹を下したり、下痢になったりする原因とその対処法をご紹介しました。へルスケアにおいては、体の声を聞くことが一番大切。 プロテインを飲んでいて不調を感じたら、まずは飲むのをやめて、原因を考えましょう。しっかり原因を知ることで対処法を知り、自分に合ったプロテインを見つけてください。

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桐村里紗
医師/tenrai株式会社 代表取締役

臨床現場において、最新の分子栄養療法や腸内フローラなどを基にした予防医療、生活習慣病から終末期医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。食や農業、環境問題への洞察を基にした人と地球全体の健康を実現する「プラネタリーヘルスケア」や女性特有の悩みを解決する「フェムケア」、また世界の最新ヘルストレンド情報などを様々なメディアで発信、プロダクト監修を行なっている。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。他、「とくダネ!」などメディア出演多数。著書に『日本人はなぜ臭いと言われるのか~口臭と体臭の科学』(光文社新書)、『腸と森の「土」を育てる〜微生物が育てる人と環境』(光文社新書)ほか多数。
tenrai株式会社:https://tenrai.co/ 

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Kaoru Sawa
ウィメンズヘルス・エディター

美容・ダイエットを中心とした記事を担当。自他共に認める美容マニアで、ハマり症。その気質から、自分が挑戦する取材企画には必ず結果へのコミットにこだわる。男性ライフスタイル誌、女性向けアプリメディアなどを経て、2021年までウィメンズヘルス編集部に在籍。