自力整体とは、治療家の技法を“自分で”できるようにした、自己治療メソッド。慢性的な不調の改善と予防を目的としている。自力整体には鍼灸、整体、ヨガ、瞑想の要素が含まれており、より自分の体への理解度を深めていくことができるのが特徴だ。そんな自力整体の効果や方法について、自力整体ナビゲーターの矢上真理恵さんにお話を伺った。

「自力整体」とは?

自力整体
Mayumi Ishii

自力整体は人の手を借りず、自分で自らの体を治療するボディワークです。現在、日本人の平均寿命は世界トップ水準にあるにも関わらず、生活習慣病とされるがんや循環器系の疾病は増えており、健康寿命が短いのが現状です。 また、超高齢化に伴う社会的負担も、今後の社会の大きな課題となっています。それに向き合うには、一人一人の意識を変えていかなくてはなりません

生き方を見直し、自分の体、心に責任を持つ。 可能な限り医療に依存せず、セルフケアを行うことで病気の予防、健康を増進させることが重要になります。その方法を半世紀かけて研究、普及してきたのが矢上予防医学研究所です。より良い社会の未来のために、多くの方々にこのメソッドを伝え、貢献していきたいと願っています。

    自力整体の効果

    • 自然治癒力を高める
    • 自己観察能力を養う
    • 歪みを取り、正しい位置へ戻す
    • 自律神経を整える
    • 痛みを根本から取り除く


    自力整体の方法

    自力整体には、3つの手技があります。

    1. 自分の体重でツボを圧迫する「自己指圧法
      自力整体
      Mayumi Ishii

      自力整体の基本である、自重と体の部位を使って指圧をする「自己指圧法」。たとえば、左上の写真は手首の内側にある自律神経を整え、体の緊張をとる内関というツボを右のヒザで指圧しています。
    2. 関節を揺さぶることで、噛み合わせのズレを元の位置に戻す「揺さぶり矯正法」
      自力整体
      Mayumi Ishii

      「揺さぶり法」は、体を脱力させた状態で微細な振動を与え、関節の歪みを整えます。下の写真は右のヒザを上下に揺すりながら、骨のズレを調整しています。
    3. タオルで動きを制限した状態でそれに反発するように、筋肉に力を入れて血液を集める「抵抗法」
      自力整体
      Mayumi Ishii

      抵抗法は、自力バンドを使った血行促進テクニックです。たとえば右上の写真は、自力バンドの中に両手を入れ、反対方向へ押し合っています。それにより、血液が力を入れている肩周りに集まり、力をゆるめることで循環を促します。

    ヨガなどのフィットネスとの違いとは?

    自力整体
    poco runs
    1. 自力整体はフィットネスではなく治療行為。自らが施術側、患者側となる
      自力整体中、施術側の自分はマインドフルな状態で体を観察。凝っていたり、痛みがあったり、左右非対称な箇所を探します。そして自力整体の3つのテクニックを使い、治療をしていきます。患者側の自分は、体を脱力させその施術を受けます。
    2. ストレッチではなく、リリース
      自力整体は、筋肉を伸ばすことが目的ではありません。筋肉を脱力させ、その奥の骨にアプローチすることで歪みを整えます。
    3. ポーズを完成させることが目的ではない
      自力整体は、ヨガのようにポーズをホールドさせ、完成させることを目指しません。体を揺さぶったり、バウンドさせたりして、常に微細な振動を与えて緊張をゆるめたり、指圧をしたりします。各自が体を観察しながらコリを探して動いているので、全員が全く同じ動きをすることはありません。

    自力整体を行うときのコツ

    1. “気持ち良い”と感じる程度の力で行いましょう。筋肉を伸ばして痛いのを我慢して行うとかえって筋を痛めます。自分の感覚に耳を傾け、丁寧に体を扱います。
    2. 深呼吸をしながら体を解放するように行います。治療のステップは、筋肉の緊張を緩めることから始まります。ゆがんだ骨格を結びつけているのが緊張した筋肉だからです。それらを解体し組み直すことで整体となります。筋肉をストレッチするのではなく緩めてその奥の骨にアプローチします。
    3. 自分を観察しましょう。気持ちよく緊張した筋肉を脱力させて解体するには自分自身の体を内観することが大事です。あなた自身が体の声を聞き、凝りをみつけてほぐす動きや角度を観察していきましょう。目を閉じて自分の感覚に集中していきます。

    自力整体でコロナ疲れを吹き飛ばす。
    『自己指圧法』にトライ!

    コロナ禍と呼ばれるようになってから1年以上。まだまだ外出自粛が続き、テレワークをされている人も多いと思います。ツラいコロナ疲れを癒やすツボと指圧法をご紹介します。

    東洋医学では経絡(けいらく)とツボとよばれる経穴(けいけつ)というものがあります。経絡とは、生命活動エネルギーである“気”が運ばれる管のことです。そして、その“気”が集まり、滞ってしまいやすいポイントをツボ(経穴)と呼んでいます。それらを指圧したり針を打ったりすることで、“気”を流し、不調を改善することができます。

    ここでは、曲池・内関・湧泉の3つのツボとその効果、そして自分でできる『自己指圧法』をご紹介します。

    ①曲池(きょくち)

    ツボ


    【場所】
    曲池はヒジの関節にあります。ヒジを曲げたとき、親指側のシワの先端部分にあるツボです。

    【効果】
    肩や首の緊張を緩め、眼精疲労に効果があります。デスクワークで疲れた目を癒やしましょう。

    【指圧方法】

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    Mayumi Ishii

    ①膝立ちになる。

    ②左足を45度方向に出し、右手を前に出して、手のひらを上に向ける。

    ③左手で右の親指を下から掴み左側へ寄せる

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    ④上半身を左足の方へ倒していき、ツボを左太腿にあてがう。

    ⑤上半身の力を抜き、ヒザを前後に揺すりながら上半身の重みを使ってツボを刺激していく。

    ⑥十分指圧できたら左手を解放して、右腿の上に乗せ、腿を押さえながらゆっくり起き上がる。

    反対も同様に行いましょう!

    ②内関(ないかん)

    内関
    Mayumi Ishii

    【場所】
    手のひらを上に向け、手首のシワから指三本ほど離れた真ん中の位置に内関というツボがあります。

    【効果】
    自律神経を整え、副交感神経を優位にするので、体と心をリラックスさせます。精神的なイライラ、憂鬱な気持ちを落ち着かせる効果があります。また、内臓とも繋がっているので、胃や喉の不調にも効きますよ。

    【指圧方法】

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    Mayumi Ishii

    ①四つん這いになる。

    ②右手の甲を床に下ろす。

    ③自重と床を使い、体を揺すりながら手首をほぐす。

    自力整体
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    ④鼻から息を吸って、吐きながら右手を左ヒザ方向へスライドさせる。このとき、同時におでこと左ヒジを床に下ろして、体を支える。

    ⑤左ヒザの下に右手首内側の内関のツボを入れ込む。

    ⑥体の力を抜きながら、ヒザを左右前後に動かし、ツボをゆっくりと指圧していく。

    ⑦十分指圧ができたらヒザを持ち上げ、両手を前に伸ばし、お尻をかかとに近づけて休む。反対も同様に行いましょう!

    ③湧泉(ゆうせん)

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    【場所】
    足の人差し指の付け根から、まっすぐ指3本下へ辿るところにあります。

    【効果】
    この湧泉のツボは、老廃物を体外へ放出したり、水分の代謝をよくしたり、いわゆるデトックスの働きをします。また、足の冷えやむくみに効果があります。

    【指圧方法】

    自力整体
    Mayumi Ishii

    ①足裏を合わせて、がっせきの状態になり、足の指を回してゆるめていく。

    ②手の親指で足裏の真ん中を押し、場所を確認し。左足の爪先は正面に向ける。

    自力整体
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    ③右側のかかとを持ち上げ、左の足裏の湧泉のツボにあてがう。

    ④両手を後ろにずらして体を支え、お尻を2〜3センチ持ち上る。

    ⑤体を前後左右に揺らしたり、両ヒザで円を描くように動かしながら、ツボに刺激を与える。

    ⑥指圧を終えたらお尻を下ろし、右足を伸ばす。左足も同様に伸ばして、両足首を揺する。

    自力整体のクラスは、基本的に90分。週に1回程度の頻度で通っている方が大半です。今回ご紹介した3つのメソッドは、毎日行ってOK。体が疲れ気味だな、と感じたときに、深呼吸をしながらゆっくりと行ってください。

    しかし、一番大切なのは”自分の体に聞いてみて決めること”。まずは自身の体の不調に耳を傾け、微細な変化を感じ取れるようになりましょう!

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    矢上 真理恵
    自力整体ナビゲーター

    父である矢上裕が開発した自己治療メソッド自力整体®︎と予防医学を普及する矢上予防医学研究所のディレクター。米国、英国の芸術大学で衣装デザインとパフォーマンスデザインの学士、修士課程を終了後にアート、ダンス、ムーブメントセラピーに興味を持ち英国でRYTヨガ認定資格終了。後に自力整体ワークショップをヨーロッパ各地、カナダやイスラエル等で開催。2019年より日本に完全帰国。

    インスタグラム: @marieyagami_move 

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    Kaoru Sawa
    ウィメンズヘルス・エディター

    美容・ダイエットを中心とした記事を担当。自他共に認める美容マニアで、ハマり症。その気質から、自分が挑戦する取材企画には必ず結果へのコミットにこだわる。男性ライフスタイル誌、女性向けアプリメディアなどを経て、2021年までウィメンズヘルス編集部に在籍。