自分のコンディションを知る方法の1つとしておすすめしたいのが、便の観察。

便は自分の体調を知る指標になるので、毎日見ることを習慣化してみてほしい。今回は、痔や便秘についての書籍を多数執筆する平田肛門科医院の平田雅彦先生に、良い便、悪い便の見分け方を伺った。

目次

便の構成

便はどんな要素から構成されているの? 実は、便の約7割は水分なのだとか。

70% 水分
10% 腸の粘膜の剥がれ落ちた老廃物
10% 腸内細菌
10% 食べ物のカス

便の水分が多ければ下痢に、水分が少なければ硬い便になる。また、腸の古い粘膜が剥がれ落ちて便に含まれているというから驚き。

便秘の定義

多くの日本人が悩まされている便秘。実は、日本と海外では、便秘の基準が違うそう。今回は、日本内科学会の便秘の定義をご紹介。

・3日以上排便がない

・毎日排便があったとしても残便感がある場合

良い便・悪い便の見分け方

自分の便が良い状態かそうでないかは、硬さ、色、ニオイで判断できる。この3つの判断基準から自分の便の状態を判断してみて。

1.硬さ

「ブリストル便箋性状スケール」という指標によると、便の硬さは7つに分けられている。

ブリストル便箋性状スケール

①うさぎのようなコロコロとした便

②ソーセージ状の表面がデコボコした塊のような便

③硬便(表面がひび割れているソーセージのような便)

④バナナ便(柔らかく半分固形な便)

⑤ふにゃふにゃ便

⑥ドロドロ便(泥状)

⑦べちゃべちゃの液状(水溶で形がない)

平田先生いわく、目指したい便の硬さは④のバナナ便。③の硬便や⑤のふにゃふにゃ便も悪い便ではないそう。

2.色

便の色は毎日の食事や体のコンディションによって変化している。平田先生いわく、茶色や黄色い便であればOKとのこと。

ただし、下記の3つの色の便が3日以上続く、見かける頻度が多くなったという場合は肛門の専門医に相談しよう。

黒:前日に黒っぽいものを食べたときやや鉄剤を飲んだとき。また、腸内(大腸)から出血しているとき。

白:胆管が何らかの原因で塞がれ、胆汁が分泌されていないときやバリウムを飲んだとき。

緑:クロロフィルを多く含む緑色野菜を食べたり、抗生物質を飲んだりしたとき。

赤:腸や肛門が出血しているとき。出血した場所が肛門に近いほど赤みが強くなる。

3.ニオイ

便のニオイが気になる……、という人は多い。腸内環境が悪いと腐敗臭がし、腸内細菌のバランスが取れているとニオイがきつくないというが、便のニオイは食事の影響もかなり受けているため、明らかにニオイが変わった時以外は気にしすぎないこと。

便に関するQ&A

便は毎日出たほうがいい? 便が出やすくする方法は? など便に関して気になることは多い。気になる5つの質問に平田先生が答えてくれた。

Q1:便は毎日出たほうがいい?

A.YES!

基本的には毎日便が出たほうがいい。便が出ず腸内にとどまっていると、腸の中で発酵が進み腐敗してくため、便意がきたら、すぐにトイレに行くのが大切。

しかし、毎日便が出るということよりも大切なのは、「残便感がない」ということ。

便は食べた分だけ出るものなので、1日に出せる便の量は決まっている。そのため、1日に何回も便が出ているからといって便の量が多いとは言えない。また腸内環境が整っていると、1回で便を出し切ることができ、残便感も感じない。

Q2:便が出ないときはどれだけトイレにいてもよい?

A.3分くらい

便が出なくて長い時間トイレにいることがあるという人も多いのでは? 平田先生いわく、便座に座って3分で出なかったらトイレから出た方がよいとのこと。トイレに座っているとお尻の穴にかかる圧が150、いきむと200に上がり、肛門や粘膜に負担がかかるため長く座るのは×。

また、便が出切るのには、12秒程度しかかからないため残便感があるからといって座り続けるのもNG。

Q3:便をするときに出なくていきんでしまう。便をすぐに出す方法は?

A.前かがみの姿勢をとってみよう

前かがみの姿勢は、クの字の直腸をまっすぐさせるため便が出やすくなる。また、手を挙げてバンザイポーズをするといきみづらくなるから、ぜひ取り入れてみて。

もし大腸の動きが悪くなり起こる弛緩性便秘に悩まされているなら、マッサージをすることで動きが活発になり便が出やすくなる。

Q4:良い便が出せるようになる食品は?

A.豆、海藻類、発酵食品

豆、海藻類、発酵食品を食べると腸内のビフィズス菌が増え、腸内バランスを整い、良い便が出やすくなる。

Q5:便が出やすい時間帯はある?

A.朝が出やすいが、気にしすぎるのは×

平田先生いわく、一番便が出やすい時間は朝。朝は腸と胃が動きだす時間のため、便が出やすい状況だという。さらに朝のストレッチや冷たい水を飲んで胃に刺激を与えるとさらに便が出やすくなる。しかし、便がいつ出るのかを気にしすぎるとストレスがかかるため、考えすぎないことが大切。

日本人の便秘事情
日本人の便秘で一番多いのは、直腸性便秘。直腸性便秘とは、便意を我慢すると生じる便秘で、これを繰り返すと便意の指令が脳に届かなくなってしまう。そのため、便意があったら我慢することがないように、時間に余裕を持って行動することが重要。

まとめ

①良い便は、硬さ、色、ニオイで判断する

②便が出ないときは、3分以上トイレにいないようにする

③時間に余裕をもって行動することが快便へのカギ

栄養バランスを考えた食事や十分な睡眠をとって、快便を目指していこう!


お話を伺ったのは......

平田肛門科医院

平田雅彦(ひらた まさひこ)先生

平田先生

平田肛門科医院院長。日本大腸肛門病学会肛門領域指導医「手術をしないで治す」を信条とする肛門科専門医。筑波大医卒。1982年に慶應義塾大学医学部外科学教室に入局。1985年に社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに入り、大腸肛門病の専門医となる。現在は、1935年開院の平田肛門科医院の3代目院長。ストレスマネジメント、食事指導、ビフィズス菌投与、排便イメージトレーニングなどの心身両面の生活指導を行い、のべ40万人以上の患者を改善に導いた。著書に「マンガでわかる痔の治し方」(小学館集英社プロダクション)「新版 痔の最新治療」(主婦の友社)「38万人を診た専門医が教える自分で痔を治す方法」(アチーブメント出版)などがある。


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Nao Sakamoto
エディター

アシスタントエディターとしてSNS業務も担当。人間の心理、睡眠や美容に興味を持ち、記事執筆を行っている。自他ともに認める運動音痴だが、最近ヨガとピラティスで心と体を整え始めた。健康なライフスタイルを送りたいため、1日1食オートミール生活を実践中。