脂質学専門誌『The Journal of Lipid Research』掲載の論文によると、寝不足が5日続くだけで空腹の合図が正常に出されなくなり、代謝が乱れることもある。その結果、食べてもあまり満足できず、血中の脂質もなかなか減らない状態に。これは食べすぎと体重増加の原因になりかねない。詳しく見ていこう。

睡眠時間が足りないときや、何度も目が覚めたとき、眠りが浅かったときなどは、必然的に睡眠の質が低くなる。これが代謝に与える影響、特に睡眠障害がホルモンバランスと代謝を乱す仕組みは広く調査されてきた。

そして今回、新たに解明されたのは、寝不足が数日続くだけで食後の満腹感が減り、不必要な間食や食べすぎが増えてしまうという事実。脂質学専門誌『The Journal of Lipid Research』掲載の論文によれば、寝不足が続くと、脂質が正常に代謝されなくなるので、体に脂肪も付きやすくなる。

この小規模の研究では、20代の健康な男性15名が睡眠研究施設に10日間滞在した。最初の5日間は強制的な夜更かしによって5時間未満、あとの5日間は通常通りの睡眠時間が確保された。

睡眠時間の短縮が4日続いた段階で、被験者たちには、高カロリー・高脂質の代表格であるピリ辛のマカロニチーズが深夜の夜食として与えられた。その後、睡眠時間が通常の長さに戻ったあとも、被験者たちは就寝前に高脂質の食事を摂った。

どちらの食事も脂質含有量は変わらなかった。にも関わらず寝不足の日は、被験者たちの食後の満足感が低かった。

研究期間中に何度か採取した被験者の血液サンプルを調べた結果、寝不足になると、食後の血中脂質代謝が遅れることも判明した。これは問題。血中に脂質が多すぎると、動脈壁に脂肪が溜まって心疾患のリスクが高くなるばかりか、体に脂肪が付きやすくなって体重も増えてしまう。

「このように、たった数日でも睡眠時間を削ると、超高カロリーな食事をしても十分満足できなくなります」と話すのは、この論文の共著者で、米ペンシルバニア州立大学生物行動健康学部教授のオルフェ・バクストン博士。「その結果、必要以上に食べてしまう可能性がありますし、睡眠時間の短縮は、食べたものを処理する体の仕組みにも影響を与えるので、体重増加や糖尿病のリスクも増します

ただし、この研究には、サンプルサイズが小さい上に研究期間が短く、被験者のプロフィールが似ているという欠点がある。例えば、被験者が女性や高齢者でも、代謝異常や高コレステロール血症の患者でも、同様の結果になるかは分からない。

この論文の筆頭著者で米ワシントン大学に籍を置くケリー・ネス博士によると、この研究が行われた環境は高度にコントロールされているため、非現実的と言わざるを得ない。また、通常通り寝る日数を5日以上に増やしたりしてリカバリータイムを延ばせば、一時的な寝不足の悪影響が減る可能性もある。

とはいえ今回の研究結果も、長期的な寝不足が肥満、糖尿病、代謝障害のリスクを高めるというエビデンスの1つ。

ネス博士の話では、睡眠時間が短くなると分かっていながら、寝る直前に高脂質の食事をするのは絶対NG。それがマカロニチーズでも、大して満足できずに終わる。

※この記事は、ランナーズワールドから翻訳されました。

Text: Elizabeth Millard Translation: Ai Igamoto