「肌に一番近い下着は、心身に影響を与える」。ある雑誌を読んでいたところ、目に入ってきたこの文章。思えばこれまでの下着選びは、小さい胸をどうにか大きく見せようと背伸びしたり、男性に色気をアピールするために快適性を無視したり。自分のかわいい胸やお尻の声を、ちっとも聞いていなかった。等身大で心地いいランジェリーを身につけることも、立派なセルフケアだ! ネットでリサーチして、お店に足を運んで、人に聞いて。そうして筆者がついに出会ったのが「ヘーゼル」。

「ヘーゼル」はモデルでデザイナーのサンドバーグ直美さんが、デザインから生地選び、工場の選定まで一貫して行なっている下着ブランド。ノンワイヤーで、1日中身につけていても痛くならない。「かわいい」や「エロ」というよりヘルシーなイメージで、飾り立てる装飾はなく、厳選されたオーガニック生地が肌をそっと包んでくれる。小ロットで販売しているプレミア感も相まって、着用したそばから小躍りしてしまう。そんな下着。

どうしてこんなに惹かれるのだろう。まだまだ語りつくせない魅力を深掘りするべく、デザイナー・サンドバーグ直美さんにこだわりを聞いた。

「日本女性に新しい価値を発信したい」。ブランドを始めた原点

 

大学生でアメリカ・ニューヨークへ留学したサンドバーグさん。そこで目にしたのは、強さと自信に満ち溢れた女性たち。型にはまらず、やりたいことに正直。誰にどう見られるかよりも、自分がどうありたいかを尊重する姿勢。そうした女性たちの生き方は、ファッションにも表れていた。個性的でコンフォータブル、それでいてだらけすぎていない佇まいに自然と心が動いた。「自分ができるデザインの力で、日本女性にもその価値を共有したい」と、それまでファッションの勉強経験はゼロだったにもかかわらず、底抜けのエネルギーが湧いてきたとか。

体と心に作用する下着が「ヘーゼル」のブラとショーツ

 

なぜ下着なのか。「長時間身につけていて、直接肌に触れているものが心地よくなかったら、自分らしくいられない」とサンドバーグさんは考えた。彼女自身、日本にいた頃はモテを意識した“盛る”ブラや、押さえつけてくるような窮屈な下着を身につけていた。「若い頃は他に選択肢がないと思っていたから、痛くなったり苦しくなることが当たり前だと思っていました」。それはいつしか、日本女性のイメージとも重なるように。

「自分にとっての快適性より、他者からの見られ方を優先する。我慢することに慣れ、(体と心が)求めているものに気づきにくくなっている。そうした女性が多い気がしました。だから、快適性を求めながらも、いまある体の形をリスペクトして、自然体の美しさを表現する。そんな下着をつくりたかったんです。それを纏うことで自信に繋がればいいな、と」

国内外を問わず、あらゆる下着メーカーの商品を試着し、周囲の女性の声を聞いた。理想の下着の素材・形を追求、試行錯誤を繰り返してできたのが、「ヘーゼル」のアイテムなのだ。

ごみになるからこそ、負担にならない下着を

「ヘーゼル」の快適性は、“エシカルであること”からもつくられている。下着は1年に1回変える消耗品。「頻繁に変えなきゃいけない=ゴミになってしまう。だから、廃棄するときもなるべく環境に負荷がかからない商品を届けたい」と、サンドバーグさんは素材選びにもこだわった。

 
hazelle

ワイヤーや金具を含むブラジャーは、分解・分別して捨てるのが正しい捨て方。でも面倒だからと言って、その作業を省いてしまう人も多いのでは。「ヘーゼル」のブラは金属を使わないシンプルなつくりなので、肌当たりがいいうえに、捨てる際の手間が減る。アジャスターがない代わりに、生地はGOTS認証のオーガニックコットン88%とポリウレタン12%を配合していて、ストレッチ性に富んだ水着のようなフィット感。

モノは生産から廃棄まで、人や環境が大きく関わっている。自分で選び、身につけている下着は、どうやって作られているのだろう? と思いを巡らせるきっかけをくれるのもこのブランドの魅力だ。


「ヘーゼル」のこれから。私たちのこれから

 
Grace Maureen

今後はカラーやサイズ展開を増やしたり、より洋服に近いデザインの下着をつくっていく予定だとか。「ブラジャーと洋服が一体となった、機能的なアイテムをつくりたいです。胸を隠すための下着じゃなくて、それ1枚でその人の美しさを引き出して、自信が持てるような」。

たかが下着、されど下着。自分が身につけているものは、想像以上に体と心に作用しているのかもしれない。ならば、本当に求めていることに耳を傾けて、心地いいと感じるモノを纏いたい。みなさんのご自愛アイテムは?

「hazelle(ヘーゼル)」
ウェブサイト/www.hazelle-wear.com/
Instagram/@hazelle_wear

デザイナー・サンドバーグ直美
Instagram/@naomisundberg

Headshot of Sawako Motegi
Sawako Motegi
コントリビューティング・エディター

スポーツファッション・サステナブルの記事を担当。山梨県の富士河口湖町へ移住し、オンラインを駆使して取材活動を行う。フェミニズムや環境問題などの時事ネタやニュース、人を掘るのが得意。  2020年までウィメンズヘルス編集部に在籍。