英語には、“Tired All The Time”(いつも疲れている)を意味するTATTという略語がある。市場調査会社YouGovの調べによると、私たちの8人の1人は、こんな略語が必要になるほど慢性的に疲れている。

この集団的な慢性疲労の根本的な原因はたぶん年中無休の現代社会にあるけれど、公認管理栄養士のローラ・ティルトの話では、食生活が疲労を引き起こしている可能性もゼロじゃない。イギリス版ウィメンズヘルスから見ていこう。

英国国立医療技術評価機構(NICE)の最新ガイドラインは、さらに別の原因を指摘している。それはビタミンB12欠乏症。疲労はビタミンB12欠乏症の症状の1つであり、NICEのガイドラインは医師に対して、ビタミンB12欠乏症の症状と危険因子が1つでもある人には血液検査を行い、この欠乏症の可能性を排除するよう勧めている。

「微量栄養素のビタミンB12は、魚、肉、卵、乳製品などの動物性食品に含まれる水溶性ビタミンです。ビタミンB12が吸収されるまでのプロセスは複雑です。ビタミンB12は、まず胃酸によって食品マトリックスから遊離します。次に胃の細胞から分泌される内因子という物質と結合して、最後に小腸の末端まで移動して吸収されます」

「吸収されたビタミンB12は、かなり重要な働きをします。糖質をアデノシン三リン酸(ATP:体の主要なエネルギー源)という物質に変換するプロセスを促進するだけでなく、エネルギーのもととなる酸素を体内の組織に届ける健康な赤血球の産生と、気分やメンタルヘルスに影響を与える神経伝達物質(ドーパミンなど)の合成にも関与しています」

「そう考えれば、ビタミンB12欠乏症の症状が体と心の両方に現れるのも当然と言えるでしょう。この症状には個人差がありますが、一般的には疲労、不安、手足のしびれ、舌の痛みなどが含まれます。人間である限り、このような症状からは逃げられないと思うかもしれませんが、一部の危険因子(1型糖尿病、胃腸障害、一部の薬の長期的な服用)を持つ人は、ビタミンB12が吸収されにくいか、ビタミンB12の摂取量が足りないかのどちらかで、ビタミンB12欠乏症になりやすいとされています」

「吸収不良の最大の要因の1つは、内因子を作る細胞を破壊してしまう自己免疫疾患の悪性貧血です。ビタミンB12は動物性食品に含まれているので、プラントベースの食生活をしている人もリスクが高いです。英国の女性を対象とした調査では、ベジタリアンとヴィーガンの3分の1以上がビタミンB12欠乏症でした」

(英国で)1日に推奨される1.5mcg(マイクログラム)のビタミンB12は、200mlの牛乳や手のひらサイズの牛肉で摂取できます。プラントベースの人は、ビタミンB12が強化された食品を1日2~3回摂取するようにしましょう(例:トーストにマーマイトを塗る、ビタミンB12が強化されたプラントベースミルクを飲む)」

「でも、本当はもっと摂取するのが理想的です。2016年の研究では、英国の推奨摂取量を満たしているにもかかわらずビタミンB12欠乏症の女性が12%もいたことから、研究チームが1日4.5mcgの摂取を推奨するEUのガイドラインに賛同する結果となりました。不安な人は1日10mcg、または週に1回で2000mcgのビタミンB12が補給できるサプリメントを飲みましょう。欠乏症の症状が出ている場合は医師に相談し、血液検査を受けてください」

ビタミンB12が豊富な食材

卵:Mサイズの卵1個で1.4mcgのビタミンB12が摂取できる。スクランブルエッグ、ポーチドエッグ、ゆで卵でもOK。

マーマイト(酵母から作られたペースト):好き嫌いがハッキリ分かれるマーマイトには8g(トースト2枚分)あたり2mcgのビタミンB12が含まれている。

サバ缶:100gで8mcgのビタミンB12。トマトと一緒にトーストに乗せれば、B12たっぷりのランチが完成。

※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: Laura Tilt Translation: Ai Igamoto

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伊賀本 藍
翻訳者

ウィメンズヘルス立ち上げ直後から翻訳者として活動。スキューバダイビングインストラクターの資格を持ち、「旅は人生」をモットーに今日も世界を飛び回る。最近は折りたたみ式ヨガマットが手放せない。現在アラビア語を勉強中。