更年期障害に関する話題が、女性の健康に関係する他の話題と同様、常にオープンに、かつ真実が語られているとは限らない。

長年、更年期障害については十分に研究されておらず(よい方向に変化こそしているものの)、資料や専門家の情報へのアクセスが制限されていたため、女性の多くは、ホルモンの変化がもたらす副作用に自分で対処しなければならなかった。

その結果、更年期障害に関する会話は曖昧なものとなり、神話化し(社会的通念となり)、情報の一部が間違った形で伝達されていった。これは深刻な問題につながることもある――真実ではないことが真実だとみなされ、女性自身の症状がそれらの神話に適合しないとき、その女性は更年期障害とは違うと感じたり、専門家に助けを求める必要がないと感じてしまう場合があるから。

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更年期障害に関する包括的な研究や医学研究の不足が相乗効果となり、これらの神話はかなり普及しているため、一部の医療専門家でさえ誤解してしまうこともある。そこで、蔓延している誤解や噂のいくつかを分析し、更年期障害の真実に迫る。

誤解1:「更年期障害は数年しか続かない」

「1、2年で終わるから心配する必要はない」という、更年期を経験している女性に送られる気遣いの言葉。これは正確には真実とは言えない。

更年期や閉経周辺期(閉経前の段階)の女性のための健康について発信しているサイト「Health & Her」の調査によると、閉経周辺期は46歳から51歳までの間で平均4年間続き、閉経期(月経がこない状態が12カ月続くこと)も51歳から55歳までの平均4年間続く可能性がある。一部の女性にとっては、更年期は最大10年続くこともあり得るということ。

症状についても、ホットフラッシュ(ほてり・のぼせ)から始まったものが関節痛や偏頭痛などに変化していくこともあれば、同じ症状がさまざまな重症度で何年にもわたって続くこともある。

思っていたより症状が長く続いたとしても、更年期障害としては一般的な長さかもしれない。しかし、症状に悩まされている場合は、その期間の長さに関係なく、専門家の助けを求めるようにしよう。

誤解2:「更年期には妊娠しない」

多くの人は更年期に入れば妊娠について考える必要はなくなると思うかもしれないが、生理が(頻度が低くとも)続いている場合は、妊娠する可能性はある。

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50歳未満で、ピルのような避妊のためのホルモン剤を服用していない場合、避妊をしなくても妊娠する可能性がなくなるまでには、最後の月経から2年は待たなければならない。

50歳以上で避妊薬を使用していない場合、避妊を止めるには最終月経から1年は待つこと。避妊のホルモン剤を服用している場合は、月経周期で起こっていることを把握するのが難しいため、55歳まで待つのが最善なよう。

誤解3:「更年期障害の症状はホットフラッシュだけ」

閉経周辺期と更年期障害には30以上の症状が認められており、ホットフラッシュだけが一般的な症状ではないことをご存じだろうか。

症状には、関節痛や気分の落ち込み、尿の変化、髪や皮膚の変化、性欲の低下などが挙げられる。実際「Health & Her」が実施した調査に基づくと、更年期障害の女性は平均で9つの症状をさまざまな組み合わせで経験しているという。

したがって、更年期障害の症状はホットフラッシュだけではないことを覚えておくことは重要なこと。また、日常生活に影響を与えるほど気分が落ち込んでいたり、深刻な身体的症状があるときには、遠慮せず医師に相談しよう。

誤解4:「更年期だとわかるのは生理が止まったときのみ」

月経が続いている状態で症状が出てきた場合は、閉経周辺期、つまり閉経前の段階にいる可能性がある。この時期には、周期が不規則になるなど、月経に変化が見られるようになるのが特徴。しかし、避妊のホルモン剤を服用している場合やもともと生理が不安定な場合は、パターンの変化に気付くのが難しくなることも。

これを踏まえ、あなたに現れた症状が、生理の変化と同様に更年期の指標として役立つ可能性があるため、それらを覚えておくことが重要。

気分の落ち込み、ブレインフォグ(頭にもやがかかったような状態になり、集中力や記憶力の低下などが起こる)、皮膚の変化、ホットフラッシュ、寝汗などに悩まされていたり、他の症状が認められる場合は医師に相談を。

誤解5:「更年期障害になるのは50歳以降」

長らく、閉経は50歳以降に訪れるものだと考えられてきた。しかし、「Health & Her」の調査によれば、女性が閉経周辺期を迎えるのは平均で46歳だという。

また、「英国更年期障害協会」の2016年の調査によると、英国における更年期の平均年齢は51歳だが、30歳以降で更年期に入る可能性もあり、実際に100人に1人の女性が40歳未満で更年期を経験しているそう。

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更年期には「この年齢だけ」「この症状だけ」ということはない。症状を認識しても「更年期障害には早すぎる」と病院へ行くことをためらってしまう人も少なくないが、その結果、イライラや落ち込みなどの感情の問題につながる可能性も。

必要なサポートを得られていない場合は、女性の健康に詳しい専門医に診てもらうことも検討してみて。

誤解6:「更年期に体重増加は避けられず、それはよくないこと」

更年期障害における最たる課題であり、最も一般的な症状のひとつが、体重の増加。この増加は抑えることができるものではあるが、これは体が自分自身を守ろうとしているために起こる反応である、ということを心に留めておこう。

エストロゲン(卵胞ホルモン)が減少すると、体はエストロゲンを生成する脂肪細胞を(特にお腹周りに)溜めるようになる。体は、骨や心臓、泌尿生殖器系、そして脳の健康をサポートするためにホルモンレベルを上げようとするのだ。

したがって、この脂肪は必ずしも悪いものではなく、体をよい状態で保とうとしてくれているもの。だが、過剰な体重増加は心臓病のリスクを高める可能性があるので、健康的な食事とバランスの取れたライフスタイルが不可欠となる。

また、体重増加は永続的なことではなく、避けられないことでもない。健康的な食事と運動習慣(例えば水泳は血行を促進し更年期障害の症状緩和に役立ち、ランニングは気分をよくすることに役立つ)を確立することで、不要な体重増加を抑えることができる。

誤解7:「更年期障害はそれほど悪いものではない、過剰に反応しすぎ」

これを言われて気分を害した経験がある人も、少なくないはず――多くの人が、ホルモン減少の結果として体が受ける身体的および心理的変化を軽んじている。

当然のことながら、そういった反応は「自身の症状を軽視されている」と女性たちに感じさせたり、“笑顔で耐える”ことを強いてしまうことも。しかし、女性にとって更年期は想像以上に厳しいもの。実際に、10%の人は症状が重いため離職を余儀なくされている。また、更年期を迎える年齢層は、自殺と離婚の割合が最も高いという結果も出ている。

もし更年期障害に苦しんでいるという人は、どうか自分ひとりだけで抱え込まないで。あなたの身体的・精神的症状は、適切なケアを受けるべきものだから。

誤解8:「更年期障害の治療はHRT(ホルモン補充療法)だけ」

HRT(ホルモン補充療法)は、減少したホルモンの一部を補うことで、多くの女性の更年期障害の症状にとって効果的な選択肢となる。が、すべての人に適用できるものではなく、乳がんやその他の病歴のある人には使えない可能性もある。

しかし、野菜や果物、タンパク質のバランスの取れた食事に加え、天然サプリメントが症状を緩和させるのに役立つと考えられている。ファイトエストロゲン(エストロゲンを模倣する植物由来の化合物)を含むサプリメントは、倦怠感、ブレインフォグ、気分のゆれ、ホットフラッシュなど、いくつかの症状緩和に役立つ場合がある。

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特定の運動や前向きな生活習慣が役立つというエビデンスもあり、「Health & Her」が提供しているアプリなどでは、症状緩和を目的としたエクササイズを提案している。例えば、気分の落ち込みを和らげるCBT(認知行動療法)、膀胱が敏感になることにより起こる尿失禁などの諸症状やセックス時の痛みを緩和する骨盤底筋トレーニング、ストレスや不眠・不安に対する瞑想ガイドなどが用意されている。また他には、ヨガや冷水の中でのスイミングが、ホットフラッシュや関節痛に効果的だとされる。

このように、HRTは多くの女性にとって治療の選択肢としては有益だが、それが唯一の選択肢というわけではない。

誤解9:「更年期障害が性生活に終止符を打つ」

多くの女性には、膣の乾燥や性欲の低下など、セックスをしにくくなるいくつかの症状が現れるが、更年期障害=性生活の終焉となるわけではない。多くの女性は、閉経前後でも健康的な性生活を維持し続けている。

これらの症状は、例えば性行為に痛みを伴う場合は骨盤底筋を動かす運動、性欲が低下している場合はCBTなど、運動によって改善できることがある。自分の気持ちについてパートナーとコミュニケーションを取ることができれば、親密さを築き、より深いつながりを育み、感情的・身体的により近付くことができる。

もしセックスに気分が乗らないとしても、まったく問題はない。心身に余裕を持たせる時間が必要なこともあるはず。大切なのは、更年期障害が、あなたとパートナーとの親密な関係の終わりを意味するものではないということ。

誤解10:「更年期障害は終わらない」

更年期障害に関する最大の誤解のひとつは、「すべての女性にとって非常に辛いものである」ということ。これは真実ではない。

多くの女性にとって更年期障害は複雑なものであり、感情的にも身体的にもつらいものとなる可能性があり、もちろんこれを否定することはできない。しかし、多くの人にとって症状の重さは移り変わるものであり、更年期障害に見舞われても、喜びに満ち、豊かでやりがいのある実り多い生活を送ることはできる。

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この障害があなた自身を根本的に変えることはない。あなたは女性であり、価値があり、まだ成長することができ、新しいことも学んでゆける。

更年期を乗り越えた多くの女性が話すのは、自分自身と自分の体がどれほど強く、能力を持っているかを知ると、力を与えられ、自信を持って生活を送ることができているように感じるということ。

トンネルはいつか終わるものであり、その先には光があるということを、決して忘れないで。

※この記事は、海外のサイトで掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。

Photos: Getty Images Translation: Ai Ono From Red UK

From: Harper's BAZAAR JP