運動を楽しんでいる時、知らない人からの視線に気づいたら、あなたならどう感じる?

2016年アメリカロスアンゼルスで起こったボディーシェイミング(体形批判)事件を機に、多くのセレブリティーが「ありのままの美しさ」を訴えている。この事件をきっかけにボディーシェイミングという言葉が辞書にのったほど大きな事件だった一方で、残念ながら悪口や批判をSNSに書き込む人も少なくない。

体の大きな人は、運動したほうがいいと言われながら、いざ運動するとバカにされるというのは、なんとも皮肉な話。ハイカー、バイカー、クライマーなど、体を動かすことに関心のある人たちのためのクラブや組織はたくさんあるけれど、サマー・ミショー=スコーグは、それらが自分のような人たちにとっては威圧的なものであると思ったそう。

作家・写真家のミショー=スコーグは、あらゆる体形の女性にアウトドアを楽しむことを奨励するボディポジティブなグループ、『Fat Girls Hiking』の創設者となった。

Fat Girls Hikingって何?

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『Fat Girls Hiking』のはじまりは、創設者サマー・ミショー=スコーグと当時の彼女のガールフレンドがオレゴン州に日課のハイキングに出かけたときのこと。いつものように、楽しんでハイキングをしていた時にトレイルで出会ったハイカーたちの困惑した視線が気になった。

確かにミショー=スコーグはたくさんのタトゥーを入れていたし、彼女のガールフレンドは有色人種だったのだけど、なぜそんな奇異な目で見られるのか、二人はしばらく理解できなかった。そして、気づいたのがミショー=スコーグと元ガールフレンドがファットハイカーだったということ。

おそらくそうした視線を送っていた人の「”ハイカーとは何か "」という考え方に、二人が当てはまっていなかったのかもしれない。

この事態を楽観的にとらえた二人は「二人の太った女の子がハイキングしている」と冗談交じりに歌い、ハッシュタグ「#fatgirlshiking」を付けて写真をInstagramに投稿した。

このハッシュタグが、より大きな問題に焦点を当てることになるなんて二人は思いもしなかったはず。ハイキングの世界では、ファットでクィア(英語で性的マイノリティや、既存の性のカテゴリに当てはまらない人々の総称)、そしてPeople of coulor(白人種と異なった皮膚色を持った人種)のハイカーは信じられないほど人口は少ない。

実際、ハイキング関連のアイテムにはプラスサイズの選択肢が限られていて、こうしたマイノリティーに属する人たちにとって、ハイキングに参加するハードルがとても高かった。そして、2015年『Fat Girls Hiking』というコミュニティーが誕生したのだ。

Instagram上のオンラインコミュニティからはじまり、現在はアメリカ国内に29の支部を持つオフラインコミュニティへと成長。2022年3月にはボディーポジティブなアウトドア活動を推進するガイドブック『Fat Girls Hiking』が出版されるまでに。

創設者のミショー=スコーグが目指すことは、コミュニティー発足時から一貫している。体形や人種、ジェンダー、能力や障害に関係なく、全ての人がハイキングを楽しめること。

グループ名とは裏腹にFat Girls Hikingでは、ノンバイナリ、トランス女性、有色人種、障がい者などを含める努力をしているのも特徴だ。

コミュニティーではありのままを受け入れる場所で、減量のためのハイキングや減量のための食事について語る場所ではない。ボディーシェイミング(体形批判)とは距離をとっているという。あくまでも、ハイキングというツールを使って体験を共有し、ファットパーソンであることを楽しむ、社会の逆風から癒やされる場所というわけだ。

ここから、ボディーポジティブにハイキングを楽しむヒントをミショー=スコーグの著書『Fat Girls Hiking』を参考にご紹介していく。

体格や体重に左右されずに、ハイキングをみんなで一緒に楽しんでみたい人は参考にしてみて。

1.ウェアやアイテムは機能性とサイズ選びを入念に

a beautiful female smiling while hiking in the forest
FreshSplash//Getty Images

インナーウェアは、乾きやすさと防水性が高いものをチョイスするとGOOD。できれば、綿以外の素材が◎。

また、見た目よりもサイズに合ったウェアをチョイスしよう。ミショー=スコーグがはじめて使ったレインジャケットはロング丈だったけれど、お尻がカバーされずに、体の半分が雨でビショビショになってしまったそう。なかなか見つからない場合は、男性用のウェアも探してみて。

バックパックもできれば、寸法をお店できちんと測って購入するのがベター。肩、腕、胴体部分のストラップで調整可能なものや、ベルトエクステンダーを購入するという手もあるので自分が快適に背負うことができるものを見つけて。

靴はスニーカーよりも防水ブーツがおすすめ。負担がかかりやすい足首をサポートしてくれるので、怪我などを防ぎやすい。また、ハイキングが終わったあとに履き替える靴も用意して。汗がしみこんだ靴下を脱ぐ瞬間の爽快さはやみつきになるかも!?

2. トレッキングポールはマスト

female hiker at snowy forest
Johnce//Getty Images

下半身のサポートにトレッキングポールはマストハブ。長時間、山道や林道を歩いていると、どうしても腰や膝、脚の痛みが出てくるケースが多い。また、天候の悪い時のハイキングでもポールを使えば安全に進むことができる。

とは言っても、邪魔になるシーンも無きにしもあらず。そんな時は必要に応じて調整できるものをチョイスするのがおすすめ。使わない時は収納できるもの、また伸縮できるものだと色々な高さに対応できる。

3. 休み休みでOK

fat girls hiking
SolStock//Getty Images

がんばり屋さんが多い現代では、つい自分の限界以上のことにチャレンジしてしまうことも少なくない。やり遂げた時は達成感もあってハッピーかもしれないけれど、その直後から疲労感が現れ、心身ともに疲れ果ててしまうこともあるかも。そして一番怖いのは、怪我につながってしまうこと。

だけど、ハイキングはあなたのためのもの。別に誰かと競い合う競技ではないので「好きなだけゆっくりしていいんだよ」と自分に許しを与えてあげて。

なので、自分の限界を理解することはとっても大切。より安全に楽しくハイキングできるので、いつでも「やめて引き返そう」という心の余裕をもとう。自分の体のニーズを尊重し、トレイルにいる間は自分自身を最大限にケアすること。目的地に到着することよりも、自分のニーズを優先させて!

4. カメラかスマホで写真を撮るのを忘れずに

woman enjoying the outdoors
RichLegg//Getty Images

ハイキング中は、ぜひ周りの美しい自然を眺めるために立ち止まったり、写真を撮ったりして、楽しもう。

また、ミショー=スコーグは山頂でセルフポートレートを撮るのもおすすめしている。山頂まで自分の体を運んだということを自負するため。山頂でセルフポートレートすることで、自分をもっと好きになれることを知ったという。

そのために軽量の三脚の持参は便利なのでメモして。

「スケールよりもトレイルだ」

どう?チャレンジしてみたい?

ミショー=スコーグにとって、ハイキングは減量のための道具としてではなく、それ自体を楽しむことが重要だという。コミュニティーの謳い文句「スケール(体重計)よりもトレイルだ」からも、それはよく分かること。

2022年11月現在のインスタグラムのフォロワーは、4万人以上。そのことからも「ハイキングに間違った方法はない」と考える、ミショー=スコーグの意見に賛同する人がたくさんいることは簡単に分かる。

運動の力で、一人ひとりがありのままの自分であることを楽しめたらとっても素敵。日本でも、こんなコミュニティーが発足できたらいいな。

参考: Fat Girls Hiking

Headshot of 桑子 麻衣子
桑子 麻衣子
ライター

1986年横浜生まれ。2013年よりシンガポール在住。幼少期よりクラシックバレエの練習に励みバレリーナになることを目指していたが、思春期に恋愛に走ってしまう。ヨガインストラクター、アーユルヴェーダアドバイザーの経験を活かし、現在は国内外のウェルネスやフィットネスなど健康周りの情報を中心に発信するライターとして活動。根っからの健康オタク。
Instagram: @mic_kwk