ネガティブに捉えないで! 新しい目標を達成することがストレスになる理由
スマートに対処していこう!
望み通りの職業に就くことだったり、海外での生活に憧れたり、ともかくミレニアム世代は、「目標を追って最高の人生を送る」ためのプレッシャーを強く感じているよう。
2018年に英バース大学と米ヨーク・セントジョン大学の研究者たちが共同で行った調査によると、1989年〜2004年に生まれたミレニアム世代には、自立心があってモチベーションが高い一方で、自分の決断が正しかったどうかを考え悩む側面もあり、完全主義者が急増しているとのこと(まだ落ち着いているようにも見えない。完全主義になる傾向は後に生まれた人ほど強まっている)。
だけど、欲しいものを手に入れること、憧れのキャリアを築くこと、夢に向かって突き進むことに、ストレスや恐れ、不全感や失望感が交わり、誤った選択をしたかのように思えてしまうのは一体どうして? オランダのフローニンゲン大学が行った研究によると、どんなにポジティブな人生の変化でさえも、負の感情を抱くことがあるよう。このような現象が起こる理由とその対処法について、あなたが知っておくべき内容をイギリス版ウィメンズヘルスからご紹介。
夢を追いかけること
プロジェクト・マネージャーを務めるエイミー・マクレーン(32)は、ベルリンへ配属された。ベルリンという新しい街は、彼女にとって新たな友人や思い出を作り、元彼を忘れる絶好の機会になると感じたそう。「でも、そうはいかなかった。実際にベルリンに到着して新しいアパートに住み始めてみたら、外国に移り住み、新生活をスタートさせることが与える感情への影響を対処できるほどの覚悟ができていなかったことに気づいた。引っ越しを決めたのも私の考えで、正しい選択をしたことはわかっていたけど、最初の数週間はいっぱい泣いたわね」
研究では、「変化」を2つのカテゴリーに分けている。「心が傷いて両親の家に戻る」と、「仕事をやめてメキシコに移る」では、人生の変化を起こすことは同じでも、変化に対する姿勢は両者で大きく異なる。前者は、何としてでも避けるべきだと考えられており、後者は積極的に奨励されていることだという。
人生のゴールは、心構えが大切
専門家によると、心構えなしでは、変化に伴う負の感情を見落とす結果につながるという。引っ越しという決断が正しかったとしても、その変化があなたにどんな感情をもたらすのか、あらかじめ覚悟しておく必要があるとのこと。
実際にオランダのフローニンゲン大学が行った研究では、ポジティブな人生の変化によって、うつ病のような症状を引き起こすことがわかっている。一方で、「ネガティブな人生の変化は、ストレスの増加に関連します」と話すのは、変化を専門とする臨床心理学者エリーゼ・ベンニク博士。「ポジティブな人生の変化でさえも、うつのような症状が起きることを私たちは発見しました。短期間で多数の変化を一度に経験する場合は特にです」
ベルリンに移ったエイミーは、何度も夜中に目が覚める日々が数ヶ月間も続いたそう。「ホームシックではなかったし、引っ越しを決めた自分の決断を疑ったことは一度もなかったけど、ドイツには友人が1人もいなかったし、週末はベッドから起き上がることもできず、完全にやる気を失っていた。それでも、この決断が正しいという確信はあった。家賃は安かったし、市内はすてきな店やバーで溢れていた。私のアパートから5分のところには、ヴィーガン食材が買えるスーパーもあった。それでも、街へ繰り出すほどのエネルギーが私にはなかったし、この機会を最大限に生かすことができないでいた」
ベンニク博士に言わせれば、エイミーが経験した症状は珍しくないという。「引っ越しをしたり、今までの仕事を辞めるなど、もしくは、移動のきっかけでもある恋人との別れなど、ネガティブな要素が混在した人生のポジティブな変化を半年以内に経験した人は、不眠や過眠症(日中にひどい疲労感がある)、無気力感を経験することが科学で証明されています」と、ベンニク博士。自らに課した人生の変化は、自分の人生を向上するためであり、夢に向かって突き進むことが肝心だそう。そのためには、どうすればいい?
「人間の脳は、ネガティブな先入観と結びついています。要するに、ごくありふれた普通の変化でさえも、『難しいもの』や『脅威を感じるもの』と脳で認識されてしまいます」と説明するのは、心理療法士のクレア・グッドウィン=フィー。「あなたの脳は想像力を一層働かせて過剰に警戒するので、変化に対するあなたの反応の仕方に、大きな影響を及ぼします。あなたの脳が変化を“脅威”と認識すれば、体はコルチゾール(ストレスホルモン)を分泌します。体は、ストレスと変化の違いを区別できないため、負のストレスを抱えたときと同様に反応してしまうのです」
人間の脳は、ネガティブな先入観と結びついている
ポジティブな変化? それでもやっぱりストレスはつきもの
「20年間、小学校の教師を務めて気づいたことは、小さな子供たちは、ストレスや疲れを訴えることなく、新しい環境に驚くほど早く適応できることです」と話すのは、作家兼演説家で人間適応性の専門家、リチャード・ガーバー。私たちは大人になるにつれて、立ち直る力(弾力性)を失う。このガーバーの見解は、モントリオールのコンコルディア大学が行った2011年の研究結果により支持された。この研究では、年を重ねるにつれて、習慣となっていることをやめ、新しいルーティンを取り入れるのが難しくなる事実を明らかにしている。「年を重ねるたびに、日々の日課や不変性を、安全や安定と結びつけ、新しい環境を恐れたり、面倒だと受け取るようになるのです」
変化を受け入れるには?
コンフォート・ゾーン(居心地の良い場所)から抜け出して人生を変えるという戦略が、誰に対しても平等に効果があるとは限らない。もともと不安症を抱えている人にとっては特にリスクが高くなるとベンニク博士は考えている。「予期していなかった変化の余波にも負けず、自分の未来の可能性を信じることさえできれば、新しい変化におじけづく必要はないのです。変化とは習慣的で、必ずしもあなたにダメージを与えるものではありませんから」と、ガーバー。
「レストランで普段と違う料理を注文してみるというような小さな経験は、あなたの想像力を刺激し、新しい環境への適応力をつけることができます。その料理が気に入らなかったとしても、新しいものに挑戦した自分を誇りに思えるようになります」。このような体験を重ねることで、ガーバーいわく、変化に対し今までとは違った対応ができるマインドに鍛えたり、好奇心や興奮を呼び起こすこともできるようになるんだとか。
これには、ベンニク博士も同意している。「この研究から、大きな変化に伴いうつ症状が現れた場合の最善策は、新しいことに挑戦し続けることだということが明らかになりました。初めはやる気も湧かないかもしれませんが、ストレスやメンタルヘルスに与える好影響は大きなものです」
これは、実際にエイミーにも効果的だったアプローチ法だという。「以前は毎日ランニングをしていたから、1人で公園に走りに行く代わりに、ランニングクラブに参加することを決めた。疲れていて心寂しい日でも、新しい人に出会い、一緒にランニングができると思うと、走りに行く気力が湧いてきたのよ」と、エイミー。
「たまには、ヘッドフォンをつけて1人で静かに走ることもある。徐々にストレスを感じることも減り、ランニングは私の新しいルーティンになった。ここで新しい友達ができてからは、どこへ行くにも色んな人と会話ができるようになった。今では、ドイツが私の故郷だと感じている」
※この記事は当初、アメリカ版ウィメンズヘルスに掲載されました。
※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。
Text: CORINNE REDFERN Translation : Yukie Kawabata