最近よく聞く、「推し活」。自分のお気に入りのタレントやアニメの登場人物などを応援する活動のことだが、推し活をサポートするグッズや書籍も登場し、これからますます盛り上がりを見せる予感。あなたの周りでも「推し」にハマっている人がいるのでは? 実はこの「推し活」は、本人の人生が充実するだけでなく、健康上の利点もあるのだとか。

そこで今回は、「推し活」の心理的な影響やメリットについて一般社団法人日本メンタルアップ支援機構の代表理事を務める大野萌子さんにお話を伺った。

<目次>

推し活とは?

アイドル、俳優、歌手、アニメの登場人物や自分の好きなものを応援する活動のこと。コンサートに行ったり、出演番組を見たり、グッズを買ったりと活動内容は多岐にわたる。

なぜ、推し活は盛り上がりを見せているのか?

推し活をする人が増加した背景は、主に2つ。

①孤独感、孤立感

コロナ禍で、気軽に友人たちと会えなくなったり、会社の歓迎会などもなくなったりとコミュニケーションをとる時間がなくなった。そのため孤独感、孤立感を持つ人が増えたことは、推し活を盛り上げた大きな理由。

②時間の余裕

コロナの流行により、人に会う時間や通勤時間が減り、時間の余裕が増えたことも理由としてあげられる。

どちらも、「満たされないぽっかりと空いた気持ちを埋めたい!」、「生活のうるおいや生きがいが欲しい!」という心理が働いている。

推し活の心理的メリットとは?

主なメリットは、以下の4つ。

①1つのことに集中でき、気持ちの切り替えに効果的

心理的に同じことを考え続け、気持ちの切り替えができない状態は、不調につながるという。推し活は、好きなものに集中する時間ができることで、仕事や家事から気持ちの切り替えがしやすいのがおすすめ。

気持ちを切り替えるためには、場所を変えることも効果的だけれど、コロナ禍では難しかった。でも、推し活なら、自宅にいながらにして画面上や仮想空間で現実からシフトすることができ、家のなかでも楽しむことができる。

②ストレスの軽減

実は、ストレスは1日のなかで生じる「変化」によっても引き起こされる。ストレスの原因となる嫌な出来事を忘れるほど集中できる推し活は、ストレスの軽減にとても効果的。また、「推し」がいることで人生に彩りが加わり、毎日の生活が楽しくなる。

③孤独感の解消

SNSで自分の思いを発信したり、共通の趣味を持つ人と簡単につながれる時代になった今。推し活においても、好きなグループや好きなものが同じ人同士がSNS上で語りあい、つながることは、孤独感の解消にもつながる。

また、人がいいと思うものを自分自身もいいと思えることに安心感を覚える傾向がある。人のツイートに共感し、「いいね!」をおすことで、一体感が高まり、さらに推しにハマるきっかけとなる。

④承認欲求を満たしてくれる

自分の意見に対し、同意してくれる人がいることで孤立感が解消される。また、「私もそう思う!」という気持ちを「いいね!」を押すことで表現し、自分の存在が認められたように感じるという。

推しの魅力を広く発信する理由は、自分の推しをみんなに知ってもらいたいという気持ちとともに、自分自身の存在を認めてほしいという気持ちも関係している。

推し活に、はまりやすい人の性格とは?

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Carol Yepes//Getty Images

推し活にはまりやすい人の傾向は、以下の5つ。

自分にも当てはまっているかチェックしてみて。

1.日常に不満、不安があり、もの足りなさを感じている人

日々感じている不安やもの足りなさをなにかで埋めたい気持ちが働きやすい。

2.まじめで責任感が強い人

まじめで責任感が強い人は、ものごとをしっかりと行いたいという気持ちが強い。その気持ちはとても大切だけれど、知らず知らずのうちにストレスの要因になっている場合も。

3.物事の一区切りがついた人

子育てが一段落したり、仕事で大きなプロジェクトが終わったりと、なにか物事が終わると喪失感があるもの。その喪失感を埋めるために推し活をする人が多い。

4.生活環境のなかで変化が少ない、人との接点が少ない人

日常の中で変化が少ない人は、刺激がほしいと思いやすい傾向がある。人との接点がない=変化が少ないということでもある。

5.答えがないことをよく考えてしまう人

悩んでも答えが出ないことに対し、思い詰めてしまうことがストレスになっている。

推し活を長く楽しむには?

推しの活躍を応援したり、推し仲間と感想を語り合ったりと、メンタルヘルスに有効な推し活。長く楽しむためには、意識しておくべきポイントがあるそう。

①現実と非現実の境界をあいまいにしない

SNS上で同じ人を好きになる一体感は、孤独感や孤立感をなくす。その一方で、意見をすぐに言い合える場所では、意見の相違からお互いを攻撃し傷つけあってしまう可能性も。

SNS上では感情的になりやすいので、自分が伝えようとしていることが対面でも言えるような内容か、推しや推し仲間を傷つける発言ではないかをもう一度考えてみて。

②推しをストーカーする行為はNG

好きな気持ちがエスカレートして、推しに迷惑をかける行為は絶対にダメ。

③楽しむという範囲を超えない

大野先生によると、「依存と攻撃は表裏一体」だという。つまり、人間は依存する相手に攻撃しやすいということ。相手(推しや推し仲間)を好きな気持ちが大きくなり、依存するようになるほど、その相手への要求が大きくなる。自分の意に反することを言われると、「あなたならわかってくれると思っていた!」「応援してきたのに!」という攻撃的な気持ちになりやすい。もし、相手に対する不満や怒りを感じるようになったら、一度自分の行動を見直してみよう。

まとめ

・推し活は、気持ちの切り替えやストレスの軽減にぴったり

・推し活は、日常の変化が欲しいと感じる人がはまる傾向

・相手に対する不満や怒りを感じたら、注意

メンタルヘルス的にメリットが多い推し活。長く、楽しく続けていこう!

□お話を伺ったのは…

大野 萌子(おおの もえこ)さん

大野萌子さん

一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャⓇ資格認定機関)代表理事、産業カウンセラー。企業内カウンセラーとしての長年の現場経験を生かした、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメント、ハラスメントの分野を得意とする。内閣府をはじめ、大手企業、大学等で年間120件以上の講演・研修を行う。また、だれでも参加できる「生きやすい人間関係を創る」コミュニケーションスキルを1日で学べる「メンタルアップマネージャ®資格取得講座」を開催。著書『「かまってちゃん」社員の上手なかまい方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)ほか。NHKをはじめ、テレビ、ラジオ、新聞などのメディア出演・監修多数。

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Nao Sakamoto
エディター

アシスタントエディターとしてSNS業務も担当。人間の心理、睡眠や美容に興味を持ち、記事執筆を行っている。自他ともに認める運動音痴だが、最近ヨガとピラティスで心と体を整え始めた。健康なライフスタイルを送りたいため、1日1食オートミール生活を実践中。