世界保健機関(WHO)は近く、広く使用されている甘味料「アスパルテーム」について、安全性に関する分類を「発がんの可能性がある物質」に変更するという。この決定が明らかになったことを受け、「砂糖 vs 人工甘味料」の議論が再び過熱している。イギリス版ウィメンズヘルスで詳しく見ていこう。

WHOは、これまでに発表されているアスパルテームに関する1300件の研究論文のレビューを行い、その結果、がんの発症リスクを高める可能性があることを確認。そのため傘下の国際がん研究機関(IARC)を通じて、危険性の程度を示す分類を変更することにしたという。IARCは過去にも、危険性に関する見直しの結果として、赤味肉や携帯電話の使用の危険性のレベルを変更している。

だが現在のところ、アスパルテームに関する専門家の意見は一致しておらず、「恐怖心をあおっている」との否定的な見方もある。WHOのレビューの結果を批判する人たちは、「数十年にわたって示されてきた質の高い研究結果と矛盾する」と指摘。今回の決定は「根拠が疑わしい」としている。

また、(毒性学でいわれるとおり)「毒であるかそうでないかを決めるのは、服用量だ」として、リスクが発生するのは、摂取量が一定の水準を上回った場合のみだと主張している。

assorted artificial sweeteners
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砂糖 vs 人工甘味料

WHOと国連食糧農業機関(FAO)の合同食品添加物専門家会議(JECFA)は1981年、アスパルテームについて、体重1キログラムあたりの1日の許容摂取量を設定。それを受け、イギリスではこの量を40ミリグラムとしている。

例えば体重70キログラムの人は、1日に2800ミリグラム(ダイエットコーク15本に含まれる量)を摂取しても、「許容範囲」ということになる。

なお、アスパルテームの使用は、米食品医薬品局が1974年に認可。甘さは砂糖の200倍、歯や心臓の健康、体重にも“優しい”とされるほか、血糖値を上昇させないことから、糖尿病の人にも適した砂糖の代用品として使用されてきた。

いっぽう砂糖は、私たち人間が、何千年も前から摂取してきたもの。消費量が特に多くなったのは、18世紀とされている。ただ、カロリーが高く、コラーゲン量を減少させ、血糖値を上昇させるほか、歯の健康にも悪いことがわかっている。

アスパルテームは安全?

アスパルテームと一部の種類のがん、不安障害、脳卒中のリスクの上昇には、関連性があると指摘されている。また、マイクロバイオーム(微生物叢)に悪影響を与える危険性もあるという。

だが、減量を促される高血圧や高コレステロールの人たちは、人工甘味料などよりカロリーの低い食品に切り替えることを推奨されてきた。そのため、勧められてきた人工甘味料が健康問題の原因になるといわれることに、反発する人たちもいる。

規制当局を含め、アスパルテームを安全な食品に分類している関連機関は、90を超えている。いっぽう、がんの罹患率を上昇させることを示唆する動物実験の結果は、1980年代半ばから発表されている。これについては、「商業的な利益と相反することから、アスパルテームが“安全ではない”ことを示す証拠の信頼性が低く評価されてきた」との批判もある。

sugar substitutes
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イギリスでは2018年、砂糖の含有量が100ミリリットルあたり8グラムを超える製品に高い税率を課す“砂糖税”が導入されたことで、食品メーカーの多くが人工甘味料の使用に切り替えることを決定。砂糖と甘味料の問題が大きな話題となった。

専門家らはそのほか、親たちに対し、子どもの味覚が形成される(甘党かどうかが決まる)時期に甘いものを食べさせることには、特に注意が必要だと呼び掛けている。

いずれにしても、現時点でほぼ議論の余地がないと考えられるのは、アスパルテームは「無害の代用品ではない」ということ、そして、「何の影響もないと思って摂取すべきものではない」ということ。

IARCは7月14日(現地時間)、リスク評価の結果をまとめた報告書を発表する予定だという。

※この記事は、海外のサイトで掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。

From Women’s Health UK

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Rebecca Gillam

Bex is a wellbeing writer, brand consultant and qualified yoga and meditation teacher who likes baths, crystals, running with her pup Gustav and making unboring vegan-ish food. 

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翻訳者。学業・仕事のため、5カ国の7都市でおよそ10年を過ごす。帰国後は経済・ビジネス関連の文書やニュース記事の翻訳を中心に、ウェルネス系の専門誌やアート関連の書籍、映像翻訳も手掛けるなど、長年にわたってフリーランスで活動。常に新たな情報に触れる仕事柄、心がけているのは、「浅くても、 何でも広く知ろうとすること」。