「腸活」というキーワードをよく耳にするようになったけれど、なぜいま腸活をしなければいけないのか。今回は、腸のスペシャリストで『腸を整えたければバナナを食べたほうがいいこれだけの理由』の著者である、小林弘幸(こばやし・ひろゆき)先生に、腸活をする理由と腸疲労の原因についてお話を伺った。

(「」内、小林弘幸先生)

目次

今、なぜ腸活をしなければならないの?

「『腸は、第2の脳』『腸内環境が乱れると免疫力が落ちて、病気にかかりやすくなる』。体や心の健康に腸が重要だということが、昨今語られるようになってきました。しかし、そのような情報が広まってきたにもかかわらず、特に最近、便秘や下痢など、腸の不調からくる、体や心の悩みを抱えている人が増えているように感じます。その原因の1つとして、やはりコロナ禍における生活環境の変化があげられます。コロナ禍における激しい生活環境の様変わりや先の見えない情勢などにより、私たちはこれまで以上に、目に見えないストレスにさらされながら生きています。そして腸は、神経やホルモンなどによって脳と密接につながっているため、環境の変化や不安によるストレスに敏感に反応してしまう臓器です。そのため、時代の波に翻弄(ほんろう)される今、腸は想像以上にヘトヘトになっていると考えられます」

腸疲労の原因

①ストレス

日々の生活で蓄積されるストレスが、腸にも悪影響を与えてしまう。

②多忙

休む暇なく慌ただしい日が続くと、脳とつながっている腸も疲れる。

③孤独、不安

孤独感や不安が脳から自律神経を通して腸に伝わり、腸疲労を引き起こす。

④過食や偏食

食べる量はもちろん、食事の質も腸内環境に大きな影響を与える。

⑤生活習慣の乱れ

寝る直前までスマホを見ているなどの行動は、脳と体が休まらず腸内環境にもよくない。

あなたの疲労度は? 腸疲労チェックリスト

腸の様子を実際に目で確かめることはできないけれど、腸内環境がどんな状態なのかを、便の様子や生活習慣から確認することができる。腸がどれだけ疲れているかをはかる目安になるはずなので、ぜひチェックしてみて。

  1. 便秘気味で排便が毎日ない
  2. 便が硬かったり、下痢だったりする
  3. 便意を突然感じる、またはまったく感じない
  4. 排便後、お腹に張りや残った感じがする
  5. のどが乾かないと水は飲まない
  6. 食事時間が不規則またはお腹がすいたら食べる
  7. 肉中心の食生活で発酵食品はあまり食べない
  8. 毎朝起きる時間がバラバラである
  9. お風呂はシャワーですませることが多い
  10. ほぼ歩かない日があり運動不足を感じる

Yes が0~1個の人は……「とっても元気」
腸は元気な状態です。今の生活スタイルを続けて、腸をいたわりましょう。

Yes が2~3個……「ちょっとお疲れ」
今は問題がありませんが、今後、問題が出る可能性もあります。

Yes が4~6個……「腸はお疲れモード」
このままの生活を続けると、心身ともに不調が出てくるかも。

Yes が7~10個……「超お疲れ」
腸がSOSを出しています、すぐに生活習慣を見直し、腸活を!

※ただし1~4にあてはまる場合は腸が疲れている可能性大。すぐに腸活をスタートしましょう。

腸活のメリット

腸を整え、元気にすることで得られるメリットはたくさん。便秘や下痢などのお腹の悩みがスッキリ解消されるのは想像しやすいけれど、それ以外にも、今の時代を健やかに過ごすために必要な効果が得られるのだとか。ここでは、代表的な腸活のメリットを教えてもらった。

免疫力が上がる

「新型コロナウイルスが蔓延する中で、免疫力を上げておくことの大切さにあらためて注目が集まりましたが、ウイルスなどの外敵から身を守ってくれるのが免疫細胞です。免疫細胞の7割が腸に集中しており、腸が元気だと、免疫細胞の産生を増強する物質が生成されやすくなります」

自律神経が整う

「自律神経とは、簡単にいうと、内臓や代謝、体温の調節など、体のあらゆる機能を24時間コントロールする司令塔のような役割をしている神経です。この働きがうまくいかないと(自律神経のバランスが乱れると)、体のさまざまな機能がうまく働かなくなるため、その結果、頭痛や冷え、不眠、肩こり、疲れがとれない、やる気が出ないなど心身にさまざまな不調をきたします。腸が排便のために行う蠕動(ぜんどう)運動をコントロールしているのも、この自律神経です。自律神経の働きがうまくいかないと、蠕動運動の働きもうまくいかなくなり、腸の働きが低下してしまい、便秘などの腸のトラブルが起き、その結果、腸内環境が乱れてしまいます。逆に、便秘や下痢などが解消されて腸内環境が整うと、自律神経が整うことも近年の研究でわかってきました。つまり、腸を元気にすることは、自律神経を整えることにもつながるというわけです」

ストレスを感じにくくメンタルが強くなる

脳と腸は、自律神経などを通して密接につながっており、脳がストレスを感じると腸に伝わって腸の状態が悪くなります。それがまた脳に伝わり……という負のスパイラルに陥ってしまうのです。緊張するとお腹が痛くなるのがその証拠。このような脳と腸の関係性を『脳腸相関』といいます。実際のところ、幸せホルモンと呼ばれ、脳が幸福感を覚える神経伝達物質の『セロトニン』の9割を作っているのは腸ですし、やる気を生み出す『ドーパミン』を合成するビタミンを作っているのも腸にすんでいる腸内細菌です。つまり、腸内環境が整い、それらの腸内細菌が活発に働くことで、幸福感ややる気が生み出され、ストレスを感じにくくなるというわけです」 

美肌になれる

「ストレスがたまると、お腹の調子が悪くなり、肌も荒れ気味に……。そんな経験がある人も多いのではないでしょうか。腸内環境が乱れると、腸内で有害物質が生成され、それが血液にのって全身に行き渡り、肌にたまり、肌が新しく生まれ変わるのを妨げてしまいます。腸の不調は肌に出やすいので、肌に吹き出物ができたり、肌荒れがひどくてメイクのノリが悪かったりしたら、腸内環境が乱れていないかを疑ってみてください」

腸活で大事なポイント

①本気で腸活したいなら、大切なのはなによりも「継続」

「腸を整えて元気にするために、気をつけなければならないのは、運動と食事です。最近では、いろいろな方法が紹介されていますが、本気で腸活をするならば、『どれぐらいで効果が出るのか』よりも『これなら続けられる』という基準で自分に合ったものを探してみてください」

②レジスタントスターチをとる

「レジスタントスターチは、『消化されない(レジスタント)』『でんぷん(スターチ)』という意味で、その名の通り、食物繊維と同様、消化されずに大腸まで届いて作用してくれます。そのすごさは、『不溶性と水溶性(発酵性)、2つの食物繊維の機能を兼ね備えている』ところです。善玉菌がすみやすいように腸をきれいにし、なおかつエサとなり元気にさせる、まさに『腸活の二刀流』といった働きをみせてくれます。その効果から、食物繊維を超越しているという意味合いを込めて『ハイパー食物繊維』という異名を持っています。レジスタントスターチは、大麦などの穀類、さつまいも、じゃがいもなどのいも類、米にも多く含まれています」

まとめ

腸は環境の変化や不安によるストレスに敏感に反応してしまう臓器。生活習慣を取り入れたり、リラックスできる時間を意識的に作って、腸を労わろう。

■お話を伺ったのは……

小林弘幸(こばやし・ひろゆき)先生
順天堂大学医学部教授。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。

1960年、埼玉県生まれ。87年、順天堂大学医学部卒業。92年、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属医学研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学小児外科講師・助教授を歴任する。順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した「腸のスペシャリスト」。さらに、腸と密接なかかわりを持つ、自律神経研究の第一人者として、プロスポーツ選手、アーティスト、文化人へのコンディショニング、パフォーマンス向上指導にかかわる。また、日々の生活の中で、健康的な習慣を少しずづでも実践してほしいという思いから、みそをはじめとした腸内環境を整える食材の紹介やストレッチの考案など、さまざまな形で健康な心と体の作り方を提案している。『医者が考案した「長生きみそ汁」』、『最高の体調を引き出す超肺活』(アスコム刊)などの著書のほか、「世界一受けたい授業」(日本テレビ)や「中居正広の金曜日のスマイルたちへ」(TBSテレビ)などメディア出演も多数。

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Nana Fukasawa
ウィメンズヘルス・エディター

2018年に「ウィメンズへルス」編集部にジョイン。アシスタントを経て、エディターとして美容、フード、ダイエットなどの記事を担当。流行りそうなヘルシーキーワードをいち早くキャッチすることを心がけている。CBDや筋膜リリース、アーユルヴェーダ、植物療法を学ぶ、自他共に認める“セルフケア マニア”。2023年初めてのハーフマラソンに挑戦。