より持続可能な生活を送るための方法の中でも、食生活の見直しはインパクトのある方法のひとつ。大体の人は1日に3回お皿に食べ物を盛る、その内の一つだけでも「何を食べるか」と意識することで、理想とする食のシステムを支えるチャンスなのだ。

今回は、最新の研究をベースに地球環境に優しい食品と環境負荷の大きい食品をまとめた持続可能な食事リストを紹介する。

「何から始めればいいの?」という人は、ぜひ参考にしてみて。

食生活からエコを考えることはどうして必要?

エコな食品リスト
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地球にとって優しい食卓と聞いてどんな食材が思い浮かぶ? 食のシステムとはとても複雑なので、もしかしたら“完璧な食材”を見つけるのは難しいかもしれない。

それでも、栽培に水をあまり必要とせず、土地の開拓や生物多様性の喪失に寄与せず、大量の温室効果ガス(農業では炭素とメタンが大きな問題)を排出しない食品は地球環境にとって持続可能な食品と言えるのではないだろうか。

とは言っても、これだけ技術が発達した飽食の現代。季節関係なしに好きな時に好きなものを食べることだって簡単にできてしまうし、差し迫って必要というイメージが湧かないという人もいるかもしれない。

シンプルに言うと、食品産業は巨大な産業でありその影響を軽減することは気候変動の最悪の影響を回避するために大きな役割を果たす可能性が考えられるから。

たったひとりが食生活を変えたからといって地球が救われるわけではないけれど、”みんなが”何かをすれば、その効果は絶大となるはず。

2022年1月にThe American Journal of Clinical Nutritionに発表された研究を例にとってみると分かりやすい。この研究では、16,800人のアメリカ人の毎日の食事について、カーボンフットプリントとウォーターフットプリントを測定。その結果、最も環境負荷の高い食事をしているグループが、1日に1回だけ持続可能な食品に置き換えた場合、1日の食事全体のフットプリントが最大で48.4%削減されることが分かったという。

お肉について知っておくべきこと

girl pushing shopping cart full of meat
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地球に優しい食生活について考える上で、まず知っておきたいのがお肉について。畜産業が環境に大きな影響を与えていることは今やさほど驚くことではないかもしれないけれど、改めて数字を認識してみよう。

FAOによると、世界の畜産は人間が排出する温室効果ガスの14.5%を占めており、農地の80%近くを占めている。けれど、実際は世界のカロリーの20%未満しか供給していないという。

食肉が気候に与える影響を理解するためには、まず、家畜の餌となる食物を栽培するために必要な土地の面積を考えてみよう。一般的な畜産においては、農林水産省によると1 kgの食肉を生産するために、牛肉で11 kg、豚肉で6kg、鶏肉で4 kgの穀物が必要となる。畜産物はカロリー換算での生産効率がとても低く、膨大な面積の飼料生産用の農地を使用することになることが問題としてあげられている。

そして、家畜そのものが排出するメタンガスについても考える必要がある。牛、羊、ヤギなど複数の胃を持つ反芻動物は、地球環境にとって最も負荷のある動物と言える。メタンガスとは、二酸化炭素の25〜80倍の温暖化係数を持つ強力な温室効果ガス。2017年のある分析によると、反芻動物の肉が環境に与える全体的な影響は、植物性食品の約100倍にものぼるという。

一方で、胃を一つ持つ単胃動物である鶏や豚などは、メタンガスを排出しないため、持続可能性の観点からはベターと言えるかもしれない。

けれど、ここでキーポイントとなるのは動物の飼育方法。再生可能な放牧を行う小規模農家の草で育った鶏や豚などは、環境、動物福祉、そして人間の健康にとって良い選択と言えるだろう。

よりサステナブルになりやすい食品を選ぶための基礎

サステナブルな食生活のヒント
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実際にわたしたち消費者がどのような食品を選べばよいかを考える前に覚えておきたいことは、食品システムは複雑だということ。つまり、どの食品も本質的に「良い」「悪い」ものではないことに留意する必要があるのだ。

繰り返しになるけれど、“どこから来たのか”、“どのように栽培されたのか”、“誰が栽培したのか” ということが重要なのだ。

文化的背景や栄養ニーズも理想的な食事に影響するし、誰もが地球に優しい選択肢を手に入れられるわけではないので、貶したり非難したりはしないことが大切。

これより紹介する食品は、水の使用、土地の使用、温室効果ガス排出の面で、環境フットプリントが最も少ない傾向にあるもの。より持続可能な(そしてより健康的な)食生活を目指すなら、次からのリストを参考にしてみて。

1.オーガニックの野菜とフルーツ
woman takes fresh organic vegetables
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前述したように、植物性の食べ物は動物性の食べ物に比べて育てるのに資源を必要としない傾向がある。

もっと言うと、オーガニックの野菜や果物は、化学農薬や化学肥料を使わずに栽培されているため、環境保護の観点からもより優れていると言える。化学農薬や化学肥料は健康への影響が懸念されるだけでなく、土壌の健康にも悪い影響を与える。そして、地球温暖化を引き起こす化石燃料を使用し、周辺の野生生物にダメージを与え、農民を脅かす可能性も。

とは言っても、全ての野菜や果物をオーガニックにするのは「お値段的に厳しい」という人や、住んでいる場所によっても難しいかもしれない。そんな人は、残留農薬値の高い野菜や果物から避けるようにしてみてはいかがだろうか。米Environmental Working Group(EWG)が毎年公開している残留農薬値の高い野菜や果物のリスト「ダーティー・ダズン」2022年度版によると、イチゴ、ホウレンソウ、ケール、カラードグリーン、マスタードグリーンが上位を占めている。

一方で栽培に必要な資源が最も少ない具体的な農産物としては、玉ねぎ、セロリ、ジャガイモ、ニンジンが、重量比で最も地球温暖化係数が低い食品として2015年の調査で上位にランクインしている。屋外で栽培された食品は、気候的に管理された温室で栽培された食品よりも資源消費が少ない傾向にあるようだ。

2. 地元産の旬の野菜とフルーツ

farmer taking credit card from customer
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地元で採れた旬の野菜を食べることは、長距離の輸送を経ずにあなたの元に届くことを意味する。つまり、温室効果ガスの排出量を削減するための簡単な方法だ。(ある研究によると、食品に起因する温室効果ガスの約15%は輸送によるものなんだとか)。

更に、採れたばかりの野菜やフルーツはより美味しく、より新鮮。旬の食材であれば、その季節に必要な栄養素も取れるので良いこと尽くし。

ファーマーズマーケットや道の駅などを利用すれば、生産者さんから食材を購入できたり、近所の農家から運ばれた食材を選ぶことができるので、ぜひ利用してみて。

3. 豆類(レンズ豆、ひよこ豆、インゲン豆)

skillet and metal scoop with dried brown lentils on wood
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豆類は温室効果ガスの排出量が少ない傾向にあるタンパク質だ。

特に、レンズ豆、ひよこ豆、インゲン豆のような作物は、健康な窒素で農地を活性化することができ、土壌にやさしい食事となると研究でも示唆されてる。

ベジタリアンやヴィーガンの人は当たり前のように摂っているかもしれないけれど、もしあなたが肉食であるなら、週1回だけでもこれらのタンパク質に切り替えてみるのもアリかも。

4. 穀物

ライ麦、大麦、オーツ麦などの穀物は、重量比でお米よりも二酸化炭素排出量が少なく、温室効果ガス排出量も比較的少ない傾向にあると言われている

けれど、穀物は世界中で安価に手に入るため、単一作物で栽培されることが多いのは注意が必要。その結果、土壌の健全性が損なわれてしまう可能性がある。

穀物を選ぶ時には、できるだけ小規模な農場から購入するのがおすすめ。

5. 海藻

wakame seaweed salad
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わたしたち日本人の食卓には欠かせない海藻類。これらは、ほとんど何も必要とせず、すぐに育つ作物ということはイメージできる人も多いのでは。

実は海藻の可能性は私たちの食卓をはるかに超えているよう。海藻は一種のフィルターとして機能し、周囲の海水を浄化する働きがあるという。

また、カリフォルニア州の研究者たちは、海藻を家畜の飼料として利用する実験を行っている。海藻は牛の胃の中で発酵プロセスを開始させ、消化の過程で大気中に放出されるメタンガスの量を減らすことができると考えられているそう。イェール大学のレポートによれば、牛は平均して1分に1回ゲップをするけれど、カリフォルニア州だけでも毎年1150万トンの二酸化炭素(自動車250万台分に相当)を排出しているという。海藻はこれを30〜50%削減することができるかもしれないのだとか。

6. きのこ類

海藻類と同じく、きのこ類は人の手が入らないような場所でも簡単に栽培できる低投入型の作物だ。

種類によっては肉のような食感や味を持つものもあり、ベジタリアンの代用品としても最適。日本でもベジミートというワードをよく聞くようになったけれど、きのこをベースとして使った“代替肉”は欧米でかなり人気。

代替肉として日本で主流の大豆を使ったベジミートは比較的粒が小さなものが多いのに対して、きのこ肉は厚切りにカットすればハンバーガーにも使えるので、満足感あり。

日本ではまだそこまで広まっていないけれど、これからきのこ肉もじわじわと浸透してくるかも?

持続可能性の低い選択肢とそれぞれに対する代替品

cheerful family enjoying at outdoor meal table
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以下の食品は、環境負荷が大きい傾向があるもの。より持続可能な食生活を目指すなら、適度な摂取を心がけるのがベター。1日1回だけでも代替品を選ぶことで、フードプリント全体に大きな違いをもたらすことを忘れないで。

・牛肉・ラム肉・​​ヤギ

前述した通り、牛肉、ラム肉、ヤギの反芻動物は最も環境負荷の高い食品の一つ。

これらを頻繁に食べる人は、植物性タンパク質、鶏肉などに代替を検討してみよう。


・牛乳

乳製品は牛から作られるため、環境負荷が大きいと言えるだろう。最近では、豆乳に加えて、ピープロテインミルク、ヘンプミルク、オーツミルク、アーモンドミルクなどさまざまな種類の植物性ミルクがあり、それぞれ栽培に必要な土地や水の量は異なるけれど、ほとんどの場合、乳製品を使った牛乳よりも持続可能性が高いことが多いので、牛乳に代わるお気に入りミルクをぜひ見つけてみて。

・チーズ・バター・ヨーグルト

牛や羊などから作られるチーズ、バター、ヨーグルトもまた、持続可能な選択肢とは言えない。代わりに、 カシューナッツチーズ、タヒニ、植物性ヨーグルトなどを試してみて。

・“レッドリスト”シーフード

モントレーベイ水族館のシーフードウォッチの“レッドリスト”は、環境問題や人権問題に関連する魚をマークしているので、シーフードを食べる時の参考にして。漁獲・養殖場所によって異なるけれど、エビ、マグロなど、よくリスト入りする魚の傾向がある。一方で、サーモン、サバ、アンチョビ、イワシ、ニシンなどは持続可能性の高いシーフードだ。

・ペットボトルの水と清涼飲料水

赤身のお肉ほど資源を必要としないとはいえ、多くの飲料は予想以上にフットプリントが大きいと言われてる。その理由のひとつは、多くの包装が施され、重量が重いので輸送にかなりのエネルギーを必要とするため。また、私たちの大好きな飲み物を作るには、多くの原材料が必要。例えば、1杯のオレンジジュースをつくるためには、たくさんのオレンジが必要。そして、残念なことに残ったもののほとんどは捨てられてしまう。ワインやビールなどのアルコールも同じ。水道に浄水器をつければ、美味しいお水が飲めるのでぜひ検討して。

・パーム油

パーム油のプランテーションが、世界、特に東南アジアの森林破壊の主な原因となっているのはご存知? 筆者の住むシンガポールでも、近隣国で実施されている焼畑農業のおかげで年間数回、ヘイズと呼ばれる公害がある。

パーム油を選ぶ時は、できるだけRSPO認証(持続可能なパーム油のための円卓会議)の森林破壊を伴わないパーム油を探そう。

地球環境に優しい食生活を送るために…

young woman laughing while standing by plants against sky
Eva Blanco / EyeEm//Getty Images

これらの持続可能な食生活を送るのに加えて、食生活全体的に、環境への影響を軽減する方法として以下も参考にしてみて。

  • お肉はメインではなく、味付けやサイドディッシュに使う

  • フードウエストを減らす

  • コンポストをはじめる

  • 過剰包装された食材の購入を控える

食のシステムは複雑であることは否めない。けれどこのガイドが、あなたの暮らしに合った持続可能な食生活を見つけるための参考になればとても嬉しい。

できることからコツコツと続け、みんなの笑顔が溢れる持続可能な地球を目指していこう。

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桑子 麻衣子
ライター

1986年横浜生まれ。2013年よりシンガポール在住。幼少期よりクラシックバレエの練習に励みバレリーナになることを目指していたが、思春期に恋愛に走ってしまう。ヨガインストラクター、アーユルヴェーダアドバイザーの経験を活かし、現在は国内外のウェルネスやフィットネスなど健康周りの情報を中心に発信するライターとして活動。根っからの健康オタク。
Instagram: @mic_kwk