健康と美容にとって細胞の老化は大敵。そのスピードをゆっくりにするか、加速させてしまうかは、まさに自分次第。遺伝的な体質はもちろん関係するが、圧倒的に関係するのは生活習慣やストレス。とくに最近、老化の原因として話題の「糖化」は、生活習慣やストレスが大いに関連するという。「糖化」は健康のみならず、肌のシワやたるみの原因にもなる。そんな恐ろしい「糖化」とはなにか、詳しい症状や原因、予防法を桐村里紗先生に伺った。
糖化で全身が“焦げつく”
砂糖を焦がしたキャラメルを想像してください。キャラメルは、ベタベタといろいろなものに絡み、ガチガチに固めてしまいます。糖化とは、まさにその状態。
タンパク質がキャラメルでガチガチに固まってしまい、身動きが取れなくなった状態と考えてください。キャラメルが絡んだ焦げたタンパク質のことを「最終糖化産物(AGEs:エージーイー)」と呼び、老化の新たな指標として注目されています。
タンパク質は単にエネルギー源になるだけではありません。体のあらゆる構造を作り、あらゆる働きをしています。
体をつくるタンパク質
代表的なタンパク質は、コラーゲンです。コラーゲンが糖化するとシワの原因、骨粗しょう症や血管の動脈硬化の原因になります。
- 皮膚・骨・血管など:コラーゲン・エラスチン
- 爪・髪の毛など:ケラチン
- 筋肉:ミオグロビン
- 血液:ヘモグロビン・アルブミン
- 内臓:細胞構成タンパク
- DNA・RNA:核タンパク
体のすべての働きには、タンパク質が必要です。酵素やホルモン、抗体、神経伝達物質などの原料になります。消化機能、免疫機能、内分泌機能(ホルモンの分泌)、精神機能にも必要です。また、解毒作用や抗酸化作用、代謝作用などのさまざまな働きは、タンパク質によって成り立っています。
糖化で起こりうる症状
糖化するとこれらのタンパク質の構造や働きが妨害され、結果として、さまざまな症状が起こります。
- 肌の老化:シワ、たるみ
- 爪や髪の毛が弱くなる
- 骨や歯、筋肉が弱くなる
- 血管が脆い
- 感染症にかかりやすい
- 太りやすい
- 疲れやすい
- 抑うつやイライラ、集中できないない、やる気が出ない
- 寝付けない、眠りが浅い
- 貧血になりやすい
このような症状が思い当たる人は要注意です。
見た目の老化だけでなく、あらゆる生活習慣病も起こりやすくなりますので、自分のライフスタイルを見直してみましょう。
糖化しやすい食生活とは? 避けるべき食べ物
糖化を引き起こす代表的な糖質は、「ブドウ糖」と「果糖」。ブドウ糖は食事に含まれる砂糖や炭水化物が消化されることで体内に吸収されます。
血液中のブドウ糖濃度を「血糖値」と呼びます。
(1)血糖値が上がりやすい食生活
- 砂糖たっぷりのスウィーツ
- 砂糖やブドウ糖入りの飲料
- 精製された白米・麺類
まずはこれらを控え目にすることが大切です。
(2)果糖を含む食品に注意
果糖は名前のイメージから、「果物に含まれるいい糖分」と思われがちですが、実は違います。果糖は血糖値を上げない「低G I」ではありますが、ヘルシーではないので注意! 実は、ブドウ糖よりも約10倍糖化しやすいとされています。
ヘルシーな甘味料として人気の「アガベシロップ」も実は、果糖を80%以上含んでいます。さらに、果糖を含む甘味料「異性化糖」にも注意が必要です。「高果糖液糖」「果糖ブドウ糖液糖」「ブドウ糖果糖液糖」と表示されていることもあります。
ジュース類だけでなく、なんと美容ドリンクや調味など、さまざまな食品にも使われています。必ず飲む前に原材料表示を確認して。
果物には果糖も含まれますが、甘味料と比べると少量。そのほかの糖類や食物繊維、ビタミン、ミネラルなどの栄養素の働きによって、その作用は緩和されます。ただし、市販のフルーツジュースは、食物繊維などの栄養素が少ないものが多いため注意を。甘さを追求した糖度の高い果物も控えめに。
- 糖度の高い果物やフルーツジュースの摂りすぎ
- アガベシロップ
- 異性化糖を含む飲料や調味料・食品
これらに気をつけて。
AGEsを含む食事にもご注意
AGEsは体内で作られるだけでなく、食品にも含まれています。とくに肉や魚、乳製品など、タンパク質の多い食品を高温調理する際に増えてしまいます。高温で長時間調理するほどAGEsが増えるため、調理法の工夫も必要です。
AGEsが多くなる調理法は、
揚げる>焼く>電子レンジ・茹でる・蒸す>生(刺身など)
とはいえ揚げ物やグリル料理をゼロにすると、調理法も偏ってしまい食事が楽しくありませんね。バランスを考えて、取り入れてみてください。
糖化させない食生活の工夫5つ
これらを控えたうえで、糖化させない食生活の工夫も取り入れてみましょう。
- 食べる順番を工夫する
先におかずを食べてから炭水化物を最後に。 - お酢(酢酸)やクエン酸を摂る
酢酸やクエン酸には糖の吸収をマイルドにしたり、ブドウ糖をエネルギーとして燃焼しやすくしたりする働きが。 - 欠食をしない
空腹時間が長いと血糖値が上がりやすくなります。 - 食物繊維をしっかりと摂取する
糖の吸収をマイルドにする食物繊維を含む野菜や海藻、きのこ、豆類、ナッツ類などをしっかり食べること。 - 亜鉛やビタミンB群をしっかり摂る
亜鉛やビタミンB群が不足すると、代謝が悪くなり、血糖値が上がりやすくなります。普段の食事だけでは不足しがちになる必須栄養素の代表なので、ベースサプリメントとしてこれらを含むマルチビタミン・ミネラルを摂るのも○。
ストレスは大敵
どんなに食生活を整えても、ストレスが多い人、ストレスを感じやすい人は、AGEsが体に増えやすい傾向があります。生真面目に頑張りすぎる人のほうが、楽天的でおおらかな人よりも、糖化しやすいといえます。
ストレスで自律神経が交感神経モードになると、ストレスホルモン・コルチゾールが高まり、血糖値を上げてしまいます。副交感神経モードを高め、リラックスしてストレスリリースする習慣を取り入れることがとても大切です。
- 有酸素運動
- ヨガや瞑想
- ゆったりとした入浴
- 好きなアロマを嗅ぐ
- 質の高い睡眠
- 笑いのある生活
- 愛する人との触れ合い
こうした習慣はいずれも糖化を抑制することに繋がります。
ストイックになり過ぎず、糖化しない生活を
私自身は食事にすごく気を付けているものの、ストレスを感じやすいタイプ。夫は食事に気を使わないのに、ストレスに強いタイプ。測定してみると、年齢は夫のほうが上でいい加減なのに、気を付けている私のほうがAGEsが多かったというショッキングな経験があります。
ストイック過ぎるとストレスになってしまうため、糖化には逆効果です。
100%実践しようと思うと窮屈になるため、「楽しむときは楽しもう」くらいの緩めのスタンスで取り組むのがちょうど良いかも知れません。
臨床現場において、最新の分子栄養療法や腸内フローラなどを基にした予防医療、生活習慣病から終末期医療、女性外来まで幅広く診療経験を積む。食や農業、環境問題への洞察を基にした人と地球全体の健康を実現する「プラネタリーヘルスケア」や女性特有の悩みを解決する「フェムケア」、また世界の最新ヘルストレンド情報などを様々なメディアで発信、プロダクト監修を行なっている。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」には腸内環境評論家として出演。他、「とくダネ!」などメディア出演多数。著書に『日本人はなぜ臭いと言われるのか~口臭と体臭の科学』(光文社新書)、『腸と森の「土」を育てる〜微生物が育てる人と環境』(光文社新書)ほか多数。
tenrai株式会社:https://tenrai.co/
美容・ダイエットを中心とした記事を担当。自他共に認める美容マニアで、ハマり症。その気質から、自分が挑戦する取材企画には必ず結果へのコミットにこだわる。男性ライフスタイル誌、女性向けアプリメディアなどを経て、2021年までウィメンズヘルス編集部に在籍。