デスクワークで肩こりが気になる、猫背で悩んでいるという人は多いのでは? 大人はもちろん、子どもの猫背も増えているという。今回は、「宮前まちの整骨院」代表、猫背矯正マイスター®︎でもある小林篤史さんに猫背の原因や対策方法を取材。大人と子どもの猫背の改善法をそれぞれ解説してもらった。
<目次>
猫背の原因
猫背の原因は主に2点。
① 骨盤が傾いている
骨盤をまっすぐ立てることがよい姿勢の第一歩。しかし、骨盤が前傾すると背骨のS字が急角度になることで反り腰型の猫背になり、内股にもなりやすい。また、骨盤が後傾するとS字カーブ自体がなくなり、背中が「逆くの字」型となって猫背になってしまう。骨盤後傾タイプの人は、ひざが曲がりやすく、がに股の人が多いのだとか。
大人の猫背は、骨盤が傾く原因が子どもより増える。
出産
出産後の女性は、子宮口が開くことで骨盤底筋が伸び、骨盤が前傾する状態が続き、猫背の原因になる。腰と骨盤底筋が引っ張り合って姿勢のバランスをとっているため、骨盤底筋を鍛えることで猫背予防になり、腰痛予防にもつながる。
デスクワーク
デスクワークが原因の猫背は、骨盤前傾型の猫背が多い。長時間座ったままでいると、股関節の前側の太ももの筋肉が縮まって骨盤が前傾し、股関節が伸びきらなくなってしまう。
さらに、細かい文字を見るため前かがみでパソコンを見る人は、自然と背中が丸まって猫背になる。
②自信がない
自信がない人は、猫背の姿勢になりやすい。とくに子どもは、大人が何も感じないような些細なことで緊張したり不安になったりする。そのため、精神的な理由で姿勢がうつむきがちなったり、肩をすくめたりする癖がついてしまい猫背になる子どもも多いのだとか。こういったことを解決するために、子どもと向き合う時間が大切。
小林さんいわく、子どもの猫背は体幹を鍛えたり、よい姿勢をキープしたりすることで改善しやすいが、大人の猫背は、小さい頃から猫背の状態で筋肉が固まってしまっていることが多く、子どもと比べて治りにくく、肩こりにもなりやすいという。最初は、肩が張っているという状態から最終的にその凝っている部分が線維を触っているような筋っぽい感触に変わると肩こりの症状が重いサイン。
ひどい場合には、猫背によって胃が圧迫されたり、筋肉が動きづらくなったりして呼吸が浅くなる人もいて、放っておくと大きな病気につながることもあるそう。
そのため、猫背は子どもの頃に治してしまうのがベストだと小林さんは言う。
猫背習慣チェックリスト
自分が猫背かどうかわからない? そんな時は、下記のチェックリストで確認してみて。
小林さんいわく、3つ以上当てはまっている場合は姿勢に良くない状態が定着している可能性が高いそう。
□ソファでよくごろごろしている
□床に座り込んでテレビを観たり本や漫画を読んだりしている
□ソファの肘掛けを枕にして寝転がることが多い
□床やテーブルの上に置いたタブレットやスマートフォンを、上からのぞき込んでいる
□挨拶や軽いお辞儀をするとき、頭や首を曲げている
□床に落ちたものを、背中を丸めて拾う
□床で横すわり(お姉さん座り、人魚座り)をしている
□背もたれにもたれて椅子に座っている
□内股で歩いている
現代人は、運動不足やソファに座る習慣がある人が多く、股関節が固くなりやすい生活をしているため、猫背になりやすい。これは、大人だけでなく子どもにも言えること。
また、床に座るのも骨盤を立てにくくなってしまい、骨盤が傾きやすくなる。日々何気なくやっている行動が、気づかないうちに体を猫背にさせてしまっている。
猫背の種類
子どもの猫背も大人の猫背も、骨盤の傾きが猫背になる大きな原因。骨盤の傾き方もタイプによって異なるから、骨盤の傾きタイプがどっちなのか確認してみよう。
①前傾タイプ(アヒルタイプ)
□腰が反っていて、お尻が出っ張っている
□お腹がぽっこり出ている
□リラックスして腕を下ろして立ったとき、手が前のほうにいく
□内股気味
□太ももの前側の筋肉が硬い/盛り上がっている
②後傾タイプ(ゾンビタイプ)
□腰があまり反っていないか丸まっていて、お尻は平坦気味
□リラックスして腕を下ろして立ったとき、手が後ろのほうにいく
□がに股気味
□膝が曲がり気味で伸びきっていない
□太ももの後ろ側の筋肉が硬い
猫背のデメリット
猫背は見た目の問題にとどまらず、身体面、精神面、印象にも関わってくる。今回は、デメリットを7つご紹介。
1.背が伸びづらくなる
2.肩こりや腰痛を引き起こす
3.運動面で力が発揮しにくくなる
筋肉や股関節などの関節の動きが悪くなることで、骨が伸びようとする力に抗う力が働き、背が伸びづらくなってしまう。また、骨盤が傾いていると体のゆがみや崩れた重心によって体のバランスを立て直そうと本来とは違うところに力が入り、肩こりや腰痛の原因になる。
4.ダルさがある、やる気が低下する
5.イライラしやすい
6.集中力が下がり、勉強の成績が上がりづらい
猫背によって後頭部と首の後ろが詰まりやすくなることで首の後ろの神経が圧迫され、血流や自律神経の働きが悪化する。自律神経の働きの低下は、怒りっぽくなったり、やる気や集中力低下につながってしまう。子どもの場合は、学校の成績にまで影響が出てしまう。
7.見た目の印象が悪くなる
自信がない人が猫背になることで、その人の印象が悪くなってしまうことも多い。悪印象を与えないためにも、猫背にならないように気を付けたい。
猫背の治し方
猫背は「猫背にならないように常に意識をすること」が大切。そのためにまず環境を整えていこう。日中と夜にできる簡単なコツを伺った。
日中
1.パソコンを打つときはワキを締める
ワキを締めることで体が傾きづらくなり、猫背になることを防ぐことができる。
2.ずっと座ったままでいない
休憩時間は、座ったままでいるよりも外に歩きに行こう。こまめに立ち上がって、骨盤を動かすストレッチを行うのもよいそう。
夜
寝ているときにリラックスできていないと感じる人も多いのでは? これは、体に力が入って肩が上がっていたり、歯を食いしばっていたりすることが原因。睡眠中に体に力が入ってしまうのは、大人の猫背の人に多いそう。
1.寝具選びは、「安眠できるか」が大切
睡眠中が筋肉のこわばりから解放されるタイミング。この脱力時間が長いほど、猫背になるリスクの軽減&猫背軽減につながり、筋肉のこわばりの解消や血流、ダメージの回復力が高まる。寝具選びは、入眠のしやすさと寝返りのしやすさを基準に選ぼう。
かけ布団…寝返りがしやすい、軽いものが◎。
マットレス…スプリングの入ったある程度硬いのもの。柔らかすぎると体が沈み、寝返りがしにくい。
パジャマ…かさばらず、ゆったりと着られるもの。フードタイプ、フリースや厚手のものは寝返りがしづらくなってしまう。見た目も大事だけれど装飾は少ないものがおすすめ。
寝具の素材…摩擦が少ないなめらかな素材や本人が触れていて快適に感じるもの。
2.安眠するためには、入眠姿勢を意識
小林さんいわく安眠のコツは、眠る体勢すなわち入眠姿勢にある。よい入眠姿勢をとるには、枕の選び方が大きなポイント。
①寝返りが打ちやすい硬さ
枕が柔らかすぎると、うまく寝返りが打てず首を寝違えることもある。
②素材
パイプ枕は適度な硬さがあるものが多いのでおすすめ。他の素材でも中身がしっかり詰まって適度な硬さがあるものを選ぼう。
③高さ
入眠姿勢があお向けか横向きかで枕の高さを変えると安眠につながる。
あお向け
顔のおでこから顎までのフェイスラインがベッドと水平になるようにする。寝た時に首の角度が15度になるようにしよう。枕が低いとあごが上がってしまい、枕が高いと息がしづらくなるから注意して。
横向き
横を向いた時に顔が真横になるように、枕を高めにするのが◎。首が枕側に曲がるのはNG。
シャワー派の人も湯船にしっかり浸かって、筋肉をリラックスさせたり、お風呂に入って眠る準備をするときには、暗めの照明にして脳を寝るモードにしよう。
子どもの猫背対策
大人になってから肩こりなどの不調が出ることを避けるために、子どもの頃から対策をしていく必要がある。子どもは猫背を意識して治すことが難しいため、大人が一緒に治していこう。
今回は、猫背にならないスマートフォンの見方と親子のスキンシップの時間を増やしながらできる簡単ストレッチを2つご紹介。
スマホを見るときは、腕組みを
小学生でもスマートフォンを持つ子や親のスマートフォンを見る機会が増えている。気づかないうちに長時間見てしまうスマートフォンだけれど、画面をのぞき込む姿勢で見ないように注意。スマートフォンを見るときは、顔の近くまで画面を持ち上げよう。その際には、スマートフォンを持っている腕のヒジをもう片方の手で支えるようにすると腕が疲れず、よい姿勢でスマートフォンを見ることができる。
テーブルの上でスマートフォンを見るときは、スマホスタンドを使うのがおすすめ。
簡単ストレッチ
①背中シュッシュ
背中シュッシュは学校に行く前の玄関先でもできるから、子どもが学校に行くときにルーティン化しやすい。
1.立っている子どもの斜め後ろに立ったら、片手を子どもの肩に置き、支える
2.もう片方の手で、子どもの背中を上から下へ勢いよく10回さする。(約10秒)
ポイント①さする範囲は、首の付け根~お尻まで
ポイント②強めのチカラで手のひらを押し当ててさする。最後は、さすった手を振り下ろすイメージ。
②バンザイストレッチ
あお向けになって手を上げるだけで簡単にできるストレッチ。これなら、めんどくさがらずに習慣化できるはず。
1.子どもにあお向けになってもらう。このとき両足は、しっかり伸ばす。
2.両手を上げ、バンザイの姿勢で10秒キープ
ポイント①:子どもに余裕がある場合は、子どもの顔の上に膝立ちでまたがり、両手で子どもの両ワキを押さえ、ヒザでそっと子どもの腕が耳につくくらいまで押して負荷をかけると、ストレッチの効果が高められる。
ポイント②:子どもが腰の痛みを感じている場合は、両足のヒザを立てて行わせて。
また、寝具の選び方や入眠姿勢を意識したり、寝る前に、バンザイストレッチをしたりするのもGOOD。
まとめ
猫背対策は、子どものうちから早めに始めるのが吉。大人になってからの猫背は、子ども時代からの猫背よりも治りやすいから、あきらめずに対策していこう。
小林さんの書籍『10 秒で治る! 子どものねこ背のばし』
子どもの猫背の原因や日常でやってしまいがちな猫背習慣を予防する方法や猫背にならない環境の作り方などの情報がたくさん詰まっている『10 秒で治る! 子どものねこ背のばし』。背中シュッシュ以外にも今回の記事でも紹介した子どもの猫背の種類別ストレッチやスマホ首予防体操もあわせてチェックしてみて。
さらに本を購入した人限定で、書籍で紹介されていたストレッチをまとめたPDFのプレゼントも。これを見ながら、猫背対策を行おう。
□お話を伺ったのは…
小林篤史(こばやし・あつし)さん
宮前まちの整骨院代表、猫背矯正マイスター®︎。柔道整復師、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師。高校時代にプロ野球選手を目指すも、腰痛などのたび重なる怪我や体調不良により挫折。その悔しさから日本大学文理学部体育学科に入学し、トレーニング理論、機能解剖学などを研究する。2006年、宮前まちの整骨院を開院。猫背を治す秘訣は「骨盤を立てること」であり、そのためには骨盤・股関節まわりの筋肉の柔軟性が不可欠と提唱。整体とストレッチ・歩き方などのセルフケアを交えた「持続する猫背矯正」として高い評価を得ており、これまで姿勢を診てきた人数は30,000人を超える。
2015年に「治る環境づくり」のビジョンの元、株式会社ボディスプラウトを設立。
整骨院・整体院の施術、「はくだけ整体®︎シリーズ 整体ショーツ」などの商品企画開発及び販売、姿勢の専門家の育成、各種情報発信などを行う。NHK「ひるまえほっと」、日本テレビ「バゲット」、フジテレビ「ポップUP!」などのテレビ出演、『anan』、『女性自身』、『週刊女性』、『週刊朝日』などメディア掲載も多数。『ねこ背は10秒で治せる!』(マキノ出版)、『歩くだけで効く! おさんぽ整体』(三笠書房)など、著書累計は20万部を突破。
アシスタントエディターとしてSNS業務も担当。人間の心理、睡眠や美容に興味を持ち、記事執筆を行っている。自他ともに認める運動音痴だが、最近ヨガとピラティスで心と体を整え始めた。健康なライフスタイルを送りたいため、1日1食オートミール生活を実践中。