ランニングを始めたい、ランニング仲間を増やしたい。そんな時に良いコミュニケーションツールとなるのがソーシャルネットワーク機能を組み込んだフィットネストラッキングアプリ「Strava(ストラバ)」である。一体どんなベネフィットをもたらしてくれるのか? 「2022ニューヨークシティマラソン」に挑戦する4人のランナーにモチベーションを上げてくれる「Strava」の魅力を語ってもらった。

世界のアスリートが愛するアプリ「Strava」とは?

ストラバ

世界195カ国、1億人以上の人が利用しているフィットネストラッキングアプリ。ランニングを始めとする30種以上のスポーツを記録でき、進捗管理をサポート。ソーシャルネットワーク機能を持っているので、仲間やコミュニティとの繋がりを深めてくれたり、新たな仲間との出会いを見つけてくれたり、初めての場所でのランニングコースなどの発見もできる。「Strava」は「2022ニューヨークシティマラソン」の主催者である「ニューヨークロードランナーズ」に2017年前からバーチャルレースの仕組みを提供。今年の本大会もサポートしている。昨年の大会では出走者の41%が「Strava」に記録をシェアしていて、いまやランニングアプリの王道となりつつある。

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Strava
筆者も完走記録を「Strava」にアップロードすると、同じレースに出ていたユーザー20人以上のユーザーアカウントの情報が表示されていた。今回は海外の大会だったため外国の人がほとんどだったが、ここでフォローし合えば、新たな仲間がどんどん増えていくのだろう。 hhttps://www.strava.com/activities/8080963879

セントラルパークに集う数百人の「Strava」ユーザー

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マラソンを前日に控える11月5日。ランナーの聖地、セントラルパークは多くのランナーで賑わいをみせていた。この日は「Strava」がチャレンジ機能を使って、マラソンの決起会としてオンラインでランナーを招集。

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レース前日というのに、当日の朝7:00には500人以上のランナーがセントラルパークに集まった。予定されている約5kmのコースを走るためにこれだけの人が集まったわけだから、ニューヨークランナーのモチベーションの高さに驚く。

ランニングのモチベーションが高まる理由

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一人で参加するランナーもいれば、友人同士やベビーを乗せたバギーランナーなど参加者はさまざま。お揃いのTシャツを着て参加しているランナーは、おそらくランコミュニティの仲間同士なんだろうと察した。

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今回取材をしたランコミュニティ「ハーレムラン」のメンバーも参加していた。ランニングは、人種、体型、国籍、能力を問わず、多くの人々を集めることができる。そして、ランナーであれば、たとえ言葉が喋れなかったとしても、一様に楽しい時間を共有できるのだ。

自分と仲間と繋がるランコミュニケーション

2022ニューヨークシティマラソン

多種多様な人々が集まるニューヨークはランニングがカルチャーとして根付いており、ランニングという共通言語を持ったコミュニティが300以上存在すると言われている。ニューヨークシティマラソンの最大の魅力と言っても過言ではないのは、沿道からの迫力のある声援である。

「2022ニューヨークシティマラソン」ギャラリー
ニューヨークマラソン

32km~37kmくらいのフルマラソンの中で最も苦しいと言われる距離の場所には、多くのランコミュニティのチームが点在し、チーム以外のランナーにも声援を送ってくれるのだ。ランナー側からすれば応援は走るパワーにつながる。そして応援側からしてみれば、レースに参加していなかったとしてもレースを楽しめる場となっているようだ。ランナーであっても、応援の景色を目の当たりにすると、なんだかその仲間に入りたいと思ってしまうものである。ランニングを通して、”痩せたい””速く走れるようになりたい”ではなく、仲間を増やしてライフスタイルを豊かにしたいという意識が彼らには強いように感じた。いわば、それは自分の”居場所”を見つけているようだ。

毎週300人が集まる大型ランコミュニティ「ハーレムラン」

ハーレムラン


そこで今回、ニューヨークのハーレム地域から一人の女性が立ち上げた「ハーレムラン」を取材。ここはあらゆる体型、年齢、能力のランナー、ウォーカー、ジョガーが集う。その中から4人の走力の違うメンバーにランコミュニティの魅力を聞いた。ニューヨークにコミュニティが根付く理由を紐解く。

CASE 1:ジェシー「人と走る必要性を感じていなかった僕に、走ることの楽しさを教えてくれた」

ハーレムラン

スパルタスロンレースのトレーニングの一環としてランニングを始めたジェシー。もっと速く走りたい、そんな気持ちから、「ハーレムラン」が運営する毎週木曜のスピードトレーニングに参加することにしたという。

ハーレムラン

「一度入ってみたら、走ることの世界が変わったんです。ランニングの友だちが増え、フルマラソンに挑戦するきっかけをもらいました。スパルタスロンの経験はあったけど、フルマラソンは初心者。そんな僕に、コミュニティの仲間たちが色々教えてくれたことで無事に完走できました。2015年から参加するようになって、8年目を迎える今、僕はコミュニティの運営側になって楽しんでいます。参加した当初、初心者の僕をみんながサポートしてくれたように、今では初心者のランナーを僕がサポートしています。今では自分のタイムを縮めることよりも、初心者のランナーが成長していく姿に喜びを感じています。ランニングに対しての価値観を変えてくれたこのコミュニティに感謝しています」

チャレンジ機能を使ってコミュニティのモチベーションをアップ

ハーレムラン

運営を手伝うようになり、メンバーたちのモチベーションをアップさせるために色々な企画をチームの中心となるメンバーと共に立てているというジェシー。走力を問わないグループランニングのセッションでは毎週200~300人が参加するというから、このランコミュニティの影響力の大きさを伺える。そのため、レース事務局やスポーツブランドからの注目も高く、ニューヨークシティマラソンを始めとする、様々なレースのエントリー枠の協賛やスポーツブランドによる物資の協賛などが集うそうだ。

ハーレムラン

「その時に活躍するのが『Strava』のチャレンジ機能です。年に3回、ビッグチャレンジをしていて、ランニングに問わず、アクティビティをどれだけしたかという”時間”を競い合います。1位になったら、協賛ブランドの商品を提供。今回のように、ニューヨークシティマラソンの出走権というスペシャルギフトの時は特に盛り上がりますが、メリットはそれだけではなく、メンバーが積極的に体を動かすログがタイムラインで出てくるので、それを見ると、やる気が出るんです。フォロワーから”Kudos”(Strava上で交わす “いいね!” のこと)を受けるとモチベーションも上がりますし。『Strava』はそういう相乗効果を生んでくれますね」

2022ニューヨークシティマラソン

マラソンのゴールタイム目標はなんとサブスリー(3時間を切ること)。当日は途中で右足を攣る(つる)というアクシデントに見舞われてしまい、顔を歪めながら33km地点の「ハーレムラン」が応援するエリア通過。

2022ニューヨークシティマラソン

チームは全力で彼を励まし送り出した。3:23でゴール。ゴール後、コミュニティが応援する沿道の元に向かい、後続するランナーたちを応援した。

CASE2:デスティニー「初めてのニューヨーク、自分と同じ価値観を持つ仲間を見つけたかった」

ハーレムラン

昨年ニューヨークに引っ越してきたデスティニー。慣れない土地ということもあって、不安は大きかったそう。

「”世界にフルマラソン完走者は1%しかいない”というFacebook広告をたまたま目にして、私もその1%の経験をしてみたいって思ったのが走るきっかけでした。初めはよくわからなくて、一人で走り始めて。朝や夜、人の少ない時間に走ることが怖いと思ったこともありました。ランナーとすれ違っても挨拶もしない。コミュニケーションのないままにトレーニングを始めてみたんです。そんな時に、通っていたジムのインストラクターから「ハーレムラン」を勧められました」

ハーレムラン

思い切って入会してみると、想像以上に温かく向かい入れてくれ、ランニング仲間も増えたという。

「まだ土地勘もないので、自分がどういうところを走っているのか、位置を知りたくて『Strava』を使い始めました。知らない土地でも、アプリ上でランニングコースを見つけることができるし、同じ時間に同じコースを偶然走ってると、『Strava』がオンライン上でフレンドとしてつなぎ合わせてくれる機能もあって。ランニング仲間がすごく増えたんです」

ハーレムラン

コミュニティや『Strava』がきっかけとなり、ランニングのモチベーションはどんどん上がっていった彼女は初のフルマラソンに挑戦する。

「今年、『2022ニューヨークシティマラソン』にエントリーできることになり、1%の経験を体験できる機会が思ったよりも早くやってきました(笑)。目標タイムは一応5時間ですが、とにかく完走が目標です」

2022ニューヨークシティマラソン

大会当日、「ハーレムラン」の声援に笑顔で応え、颯爽と走り抜いたデスティニー。5:48で無事完走を果たし、フルマラソン完走者として、1%の仲間入りを果たした。

CASE3:モーリス「足首を故障し、もう走れないと思った。コミュニティに入ったからこそ今も走れる」

ハーレムラン

9年前、足首に1年以上走れないくらいの大きな怪我をしてしまったモーリス。一人でランニングを続けることが困難であると感じ、誰かのサポートを求め「ハーレムラン」に入ったという。

ハーレムラン

「とにかく、モチベーションをどう上げていったらいいか、本当に悩んでいたんです。一人では抱えきれない。誰かと一緒なら、楽しく走れるかもしれない。そう思ってコミュニティに参加し始めました。このコミュニティは、経済的にも、ジェンダー的にも多様性があるところが気に入っています。女性が立ち上げたという面でも、他のコミュニティよりも多様性(個性)が強いと思っています」

ランニングは自分と対話できる、自分でいるための大切な時間であるというモーリス。その時間を継続するためにモチベーションになっているのが「Strava」だ。

2022ニューヨークシティマラソン

「“Kudos”がすごい好きで(笑)。友だちのアクティビティに“Kudos”をすると、自分のモチベーションにすごく繋がるんです。逆に、友達から“Kudos”を受けるということは、彼らのモチベーションにもなってるんだっていう気持ちにもなる。それが嬉しいですね。また、アクティビティにコメントができるから、この日、走りにいこうよ、と誘ってみたり。そういう、”つながり”が持てるところが気に入ってます。僕はこのコミュニティ以外にも、アディダスやナイキなどが関連するグループランに参加することも多くて。そんな時に出会ったランナーと『Strava』でフレンドになって、仲間をどんどん増やしていくのも楽しみの一つにしています」

「2022ニューヨークシティマラソン」の参加者の一人でもあるモーリス。もともと陸上部でランニングキャリアが長いことから、好タイムが予測されたが、聞くと、意外にもタイムには無頓着の様子。

「ゴールタイムは4~5時間くらいを考えています。走り終わったトータルのタイムは見ますが、普段から走っている間のペースタイムにはとらわれないで走っていますね。なのでトラッキング用の腕時計もしません。速く走れるようになることにはもちろん興味がありますが、それ以上に僕にとっては誰かと繋がり合いながら、ランニングをできる限り長く続けていくことの方が大切。僕のランニングは苦しいものではなく、楽しいものでありたいんです」

2022ニューヨークシティマラソン

結果は4:54で無事完走。肩の力の抜けたレース中のランニングスタイルも彼らしさを物語っている。

CASE4:サライ「ランニングはセルフラブみたいなもの。コミュニティに入って、フルマラソンが一層楽しくなった」


2022ニューヨークシティマラソン

2020年、コロナ禍がきっかけとなりコミュニティに入ることにしたサライ。パンデミックの状態が続いたニューヨークでは、当時、ソーシャルディスタンスが取れるアクティビティは唯一ランニングだけだったからだ。

ハーレムラン

「ここに入る前までは、10km走ることでさえ苦しくて、なかなかできなかったんです。もっと言えば当時は5kmだって厳しかったかもしれません。でも、コミュニティの仲間が私のトレーニングを支えてくれる後押しになってくれて、より自分を追い込めることができるようになりました」

彼女のランニングスタイルはコンペティション主義。レースにエントリーすることにより、その目的に向かってトレーニングを積んでいくというスタイルだ。レースにこだわる理由とは?

ハーレムラン

「私にとってランニングはセルフラブのようなものです。レースにサインアップして、そのためにトレーニングにコミットすることは自分自身を成長させるものであるし、自分の中の強さも感じられます。それがランニングの最大の魅力です。コミュニティに参加するようになって、チームのみんながアドバイスを色々としてくれるんです。知識が生まれることによって、走れる距離もどんどん伸びました。コミュニティは私に自信を与えてくれたんです」

インターバルやビルドアップなどのスピード・コンビネーションなどのトレーニング法などを取り入れ、先月はシカゴマラソンを完走。そしてその1カ月後には「2022ニューヨークシティマラソン」に挑戦する。

ハーレムラン

「『ハーレムラン』に入ってから、しっかりとトレーニングを積んでいるという実感が湧いて、長い距離を走ることにも抵抗がなくなりました。ちょうどこのコミュニティに入ってから『Strava』を使うようにしたんです。私はレースに結構出るタイプなので、出るたびに『Strava』のフォロワーが増えていって、そのコミュニケーションがモチベーションに繋がっています」

最近では新たに動画が投稿できるようになり、夏場の苦しいトレーニング時のモチベーションアップに大いに役立ったという。

「真夏日のワークアウトは本当に暑いし苦しいんです。でも動画投稿を見たら、仲間も苦しいトレーニングをしていて、同じ気持ちを共感できました。また、動画だとトレーニング内容がすぐわかるので、参考にもなります。『Strava』は体を動かす人たちが楽しめるような機能が充実しているから使いやすいですね。安全面を考慮してマップの開始・終了地点などを隠す機能などがあって、そういった配慮を考えてくれているというのも魅力の一つ。企業色をあまり感じさせない『Strava』は、私にとってソーシャルメディアという位置づけになっています」

2022ニューヨークシティマラソン

先月のシカゴマラソンの疲れもあり、今回の「2022ニューヨークシティマラソン」の目標タイムは体調を考えて5:15にしたサライ。慎重なゴールタイム設定もコンペティション派のサライらしい。結果は4:53と想定以上の速さで無事ゴールした。

コミュニティの魅力を最大限に活かしてくれるスポーツアプリ「Strava」

2022ニューヨークシティマラソン

「2022ニューヨークシティマラソン」をきっかけに出会った「ハーレムラン」。速さも、体型も、年齢も、性別もバラバラのランナーが集い、同じコミュニティの中で、それぞれの目的を持ってランニングと向き合っていた。モチベーションを保ちながら、あるいは、一層上げながらランニングを継続している理由にはコミュニティの存在が大きいと言える。ただ、そこに相乗効果を生み出し、ランニングライフの幅を広げてくれるのは「Strava」であることに間違いなさそうだ。走り始めたい、誰かと繋がりたい、そんな気持ちが少しでもあるならば、今すぐオレンジマークのアプリをインストールしてみよう。きっと世界が広がるはずだ。

問い合わせ先/Strava https://www.strava.com/about

Photo: Mitsu Watanabe

Headshot of Chie Arakawa
Chie Arakawa
ウィメンズヘルス・シニアエディター

タレント・アスリートインタビュー・スポーツファッション・ウェルネス記事などを担当。女性誌FRaUでファッション・スポーツ・ダイエットなどの編集キャリアを積み、その後スポーツライフスタイルマガジンonyourmarkのプロデューサーとして在籍後、2022年までウィメンズヘルス編集部に在籍。