東京オリンピック2021のマラソン競技で多くの上位者たちが着用していたナイキの”厚底”シリーズから、サステナブルに特化したハイパフォーマンスのランニングシューズが登場。発売日は10月15日。フォーム、カーボン、アッパーなどすべてのパーツにおいて、環境に配慮された素材を生み出したナイキ。その開発秘話を本国デザイナーに訊く。

ナイキ最高峰のランニングシューズをサステナブル開発する理由とは?

ナイキ ランニングシューズ
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ナイキが掲げる炭素・廃棄物排出ゼロを目指す取り組み「Move to Zero」。その中核となるテクノロジー開発は、パフォーマンス史上最高モデルとも言える「アルファフライネクスト」がターゲットとなった。ナイキがここで挑戦したのは、”機能性は落とさず、再生素材利用率を高める”こと。総重量の50%以上を再生利用率にすることを目標に開発は進められた。なぜこのシューズが選ばれたのか? それは、大気汚染などによる環境への負荷を抑えることは、アスリートが戦うフィールドの環境も同時に守られるということにつながるという理念があるからだ。だからこそ、プロが履くシューズへの開発にこだわりを持ったと開発チームは話す。

作る難しさ。パフォーマンスを落とさないための葛藤


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再生素材の使用率は、重量比50%以上。ミッドソール70%、カーボン50%、フライニットとフライプリントを使ったアッパー45%。

大きな課題となったのは、「最高の機能を持つ素材の端材や再生素材を活用して、同じような高い機能を維持することができるのか?」ということ。”すべてを使い切る”戦略のもと開発が行われた今回のシューズは、実際に現行品から出た端材を利用して作られている。

ナイキ ランニングシューズ
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それぞれの端材をつなぎ合わすには、”配合の適正量”や”熱の温度”などのテストを行いつづけ、トライアンドエラーを繰り返したという。特に、このシューズのパフォーマンスの大きな鍵を握るミッドソールのフォーム「ズームXフォーム」は、かなりの調整を行い、現行品と変わらぬ機能性を生み出した。実際、ナイキが契約するアスリートたちに、現行品の試作品として試走を行ってもらったところ、誰もこのシューズのパフォーマンス力に違和感を持たなかったそうだ。

気になる価格は?

今回の「ナイキ エア ズーム アルファフライ ネクスト ネイチャー」は¥38,500である。現行品より約3000円の価格差であるが、これはサステナブルアイテムだからという理由ではない。

私たちは”サステナブル=高い”という風にはしたくないんです。このシューズには、新たなテクノロジーが開発されました。それは、ズーム エア ポッドの生産過程で発生する廃棄物や端材をアッパーを作る3D印刷の工程に活用したことにより、フライプリントとフライニットを組み合わせたテキスタイルが誕生したのです。それによって、他にはない通気性とフォールド力が高まったアッパーを生み出せたそれぞれの素材の長所をきちんと理解する、それはテクノロジーの進化に欠かせないことなのです」(ナイキ開発チーム )

2025年までに全体の80%のプロダクトに再利用素材を使用を目指す

今後、ナイキはここで開発された技術を各プロダクツにも利用していくという。2025年には廃棄物を全体から10%減らすことを目標にする。このパフォーマンスとサステナブルテクノロジーとの共存を可能にしたランニングシューズ「ナイキ エア ズーム アルファフライ ネクスト ネイチャー」は、近い未来の挑戦に向けて、大きな一歩になるに違いない。

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「ナイキ エア ズーム アルファフライ ネクスト ネイチャー」¥38,500/NIKE カスタマーサービス 0120-6453-77

10月15日よりNIKEのメンバーシップ限定で発売予定。

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Chie Arakawa
ウィメンズヘルス・シニアエディター

タレント・アスリートインタビュー・スポーツファッション・ウェルネス記事などを担当。女性誌FRaUでファッション・スポーツ・ダイエットなどの編集キャリアを積み、その後スポーツライフスタイルマガジンonyourmarkのプロデューサーとして在籍後、2022年までウィメンズヘルス編集部に在籍。