今年結成16年目を迎え、新たな魅力を放ち続けるガールズバンドSCANDAL。その表現力豊かなドラムプレイと華やかな存在感で注目を集めるRINAさんが、アーティストの枠にとらわれない、幅広い活動を見せている。エシカルな発信を続ける彼女を動かしたのは、5人兄弟の母子家庭で育った小さな少女時代の彼女自身だった。

海外ツアーで感じた日本との意識の違い

2008年にデビューして以来、常に道を切り開いてきたガールズバンドSCANDALのRINAさん。インディーズ時代からコロナ前の2020年まで、ツアーのために毎年欠かさず海外へ渡っていた彼女は、早いうちから日本と海外のサステナブル・エシカルに対する意識の違いを肌で感じていた。

rina スキャンダル scandal

「自分のなかで明確に意識が変わった」と振り返るのは、2018年のアメリカ・メキシコ6都市を回ったツアー"Special Thanks"。

「その頃から海外ではエコバッグを使うのは当たり前で、プラスチックやビニールを減らす運動やエコな取り組みをみんなが実践していました。そういうライフスタイルを送る人たちへライブを届けるときに、ペットボトルや使い捨てのストローを必要以上に使うのは違うなって思ったんです。まずは自分たちにできることから始めようと、ステージドリンクをタンブラーに変えて、ストローも繰り返し使えるステンレスのものにしました。そのうちお客さんも気づいてくれるようになって、音楽と一緒に意識を持ってもらうきっかけを作れることがすごくいいなと思って、いまも地道に続けています」

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同じ洋服を、違う見せ方で長く楽しむ

「サステナブルな意識を持ってものをつくることも大切」というRINAさん。SCANDALのメンバーで手がけるブランドFEEDBACKでも、エコな取り組みを知るきっかけづくりをしたいと、オリジナルのエコバッグやエコボトルを発売した。そのアイテムは、いまも自身で日常的に使うほどお気に入り。日常生活では、洋服選びの視点も変わったという。

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「私服を衣装にして人前に出ることもたくさんあったので、以前は『毎回違う服を着たい』と思っていたけど、『同じ洋服で違う見せ方をするのもいいな』って思うようになりました。いろんなブランドのサステナブルな取り組みを知ってからその洋服を着ると気分も変わりますね」

サステナブルに関する情報が少なかった日本で「できる範囲で意識を持ってもらえたら」と発信を続けるRINAさんだが、エコだからと、生活のすべてを変えることを求めたりはしない。

「私は地元が奈良なのですが、5人兄弟のシングルマザーの母に育てられました。子どもがたくさんいて忙しい日々を送る母に、『地球のことを考えて生きた方がいいよ』とは、私は言えないなと思います。でも、そういうことを知りながら生きるのは大切だと思っていて。ものを大切にするとか、お下がりを可愛く着せるとか……、限られたことでも、意識を持つか持たないかで大きな差があるはず。一人ひとりができることは限られているけれど、できる範囲で意識しながら生活できる人が増えたらいいなと思います」

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母への思いからスタートした子育て/女性支援活動

「音楽をやっているからこそ発信できることがある」と実感したRINAさんは、コロナ禍を機に、子育て/女性支援活動『MAKE A WISH DAISY PROJECT』をスタート。このプロジェクトのきっかけとなったのは、母への思いが大きかった。

「5人兄弟の長女として、母が一人で頑張る姿や傷つく姿を目にしてきました。母だって一人の人間として幸せになって良いはずなのに、仕事や子どもがハードルになって、自分の幸せを考えるところまでたどりつけない。そんな様子を見ているのが、子どもながらに苦しかった。だから、何か手助けできないかなと言う思いは常にありました。幼い頃からの夢を叶えたい気持ちも強かったので、中学でバンドを組んで、高校二年生でデビューしました」

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そんな家庭環境で育ったことから「いつかは一人で子育てする人を、何かの形でサポートしたり、うれしい気持ちを届けたりしたい」とずっと考えていた。

「センシティブなテーマだし、ファンに向けてもどう発信したら良いか分からなくて手付かずのままだったのですが、コロナ禍で自宅待機の要請が出たとき、『母は大変だろうな』って思ったんです。それに、DVがある家庭のように、家が苦しい場所の人だっている。まったく違う暮らしをしている人たちがひとつのルールでまとめられる、そのつらさはあるなと感じたんです」

そして、同じ思いを抱えていた友人でモデルのSeinaさんと共に、プロジェクトの立ち上げを決意した。「DAISY PROJECT」では、あくまで“楽しく”をモットーに、手に取ると思わず元気が出るようなキュートなアイテムをつくり、その売り上げを支援金として、サポートが必要な家庭に届けている。

支援先を自分で探し、直接届ける

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「支援先も自分たちで探して一本一本電話して、気持ちを届けたい人にダイレクトに支援が届くところを選んでいます。プロジェクトを大きくすることも大切ですけど、すごくドメスティックであることも大切だと思っていて。必要な家にレトルトのカレーが届いたり、必要な子にランドセルが届いたり。そのダイレクトさが大事だと思っているので、誰かに任せたりせず、自分たちのできる範囲でやっています。アイテムを買ってくれた人も『これでサポートできた』と思えるものを作りながら、楽しく発信する。それでお金もちゃんと回り続けるという仕組みを作れたらいいなと思っています」

誰もが“自分を肯定できる”音楽を届けたい

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現在、子育て/女性支援活動は「やってよかったと思えるほど良い循環をしている」と笑顔を見せる。「探り探りだけど、それでもいい」、何より大事なのは「一番大変だけど〈続ける〉こと」。

「少数派の暮らしが無視されてはいけないと思うんです。『普通はこうでしょ?』って言われて傷つくことってめちゃめちゃ多いし、ガールズバンドをやっていても感じたりします。その感じ方もメンバー4人で全然違う。他のメンバーは傷ついてなくても、私だけ違和感を感じてることもありますしね。そこで少数派だからって我慢したり、言わなかったりするのはだめだなって思うようになりました。いろんな場面でマイノリティになる瞬間や、くじけそうになるとき、このままでいいのかな?って落ち込むときは誰にだってある。それを肯定できる音楽をやりたいし、そういう一人の人間でありたいと思っています」

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30代を迎え、これからの“理想の自分”を尋ねると、「見ているだけで、自由な気持ちになれるアーティストでいたい」と、強い眼差しをみせた。

「性格、ジェンダー、セクシャリティ、ライフスタイル……いろんな個性や性質を持っている、その誰もが『SCANDALを見ていたら、自分を肯定できる』と思えるアーティストになりたい。そのためには、自分が自由に生きていることが大切だと思っているんです。好きなことをしながら、やるべきこともして、どんどん変化していく姿を見せることができたら。そんなふうに自分の人生を音楽と共に残していけたら良いなと思います」

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RINA プロフィール

ガールズバンドSCANDALのドラム・ボーカル。2006年に大阪でSCANDALを結成し、2008年「DOLL」でメジャーデビュー。翌年「少女S」でレコード大賞新人賞受賞。ライブを中心に国内外で活動し、その圧巻のパフォーマンスが高い評価を得ている。近年はファッションアイコンとしても注目を集め、アパレルブランド「FEEDBACK」をプロデュース、2019年にはプライベートレーベル「her」を設立。活動は多岐に渡り、2020年よりモデルのSeinaと共に子育て/女性支援活動を展開している。Instagram:@urarina821

現在、ワールドツアーを開催中

1月に発売した10thアルバム「MIRROR」を引っ提げて現在ワールドツアーを開催中。日本は残すところあと3公演、ぜひチェックして。

<SCANDAL WORLD TOUR 2022 “MIRROR” >https://tix.to/scandal/
<FEEDBACK>https://feedback.official.ec
<MAKE A WISH DAISY PROJECT>https://daisyproject.official.ec

Photo: HIDE OHBA Text:HIROMI ONDA(Listen)Special Thanks:PILATES ROOM TOKYO

Headshot of Kanna Konishi
Kanna Konishi
ウィメンズヘルス・副編集長

編集者として多くのメディアに携わったのち現職。健康オタク歴20年、趣味は"毒出し"で、体と心と部屋を効率よく整え、環境にもいい健康法を探るのがライフワーク。チアリーダー経験あり、勝手に人を応援しがち。仕事では「心から推せるものしか紹介したくない!」と目を血走らせ、常に情熱大陸に上陸中。 

Instagram: @editor_kanna_purico