ドクターが指南!夏バテを招く「やってはいけない生活習慣」12
汗をたっぷりかいて、水をゴクゴク飲むのは要注意!
冷たい物を食べ過ぎたり、食欲不振で食事を抜いたり……いつにも増して食生活が乱れ、胃腸に負担をかけがちな夏。東洋医学によると、夏は消化吸収を司る“腸”と関係が深いシーズンという。そこで、胃腸のコンディションを整えて健康な毎日を送るための夏の食習慣を、西洋医学と東洋医学の両面から診察をするドクター、頼建守先生が指南!
Text:YOSHIE ODA
1 冷房が効いた部屋で長時間、じっとしている
東洋医学では、過剰も不足もない“中庸”をよしとします。長時間冷房の効いた部屋にいると、暑い外気に触れたときに急激に体感温度の変化が起こり、さまざまな不調の原因に。
その振れ幅を抑えて中庸をキープするためには、除湿モードにするか、あるいは隣の部屋のエアコンから冷気を入れるか工夫して、冷えすぎを予防して。
2 汗をたくさんかいた状態で、水分をたくさん摂る
発汗したあとの水分補給は大切ですが、体には、取り入れた水分の収支のバランスを保つ働きがあります。必要以上に水分を摂ると、今度は排出するために、過剰な発汗、頻尿や下痢といったトラブルにつながります。夏から秋の場合、1日の摂取量は体重1kgにつき25〜30mlを目安に。
3 冷たいものを食べたり飲んだりする
冷たい物を摂りすぎると、体は冷やさないように、かえって「胃腸熱」を誘発します。腸に過剰な熱がこもるとさらに、この熱が体の乾燥症状をもたらし、皮膚の乾燥、ドライアイや便秘などの原因に。
できれば、常温や温かいものを飲食するように心がけて。また、ドリンク類なら、体を温める作用があるプーアール茶や生姜入り紅茶なども選択肢に。
4 朝いちばんにフルーツやヨーグルトを食べる
朝食の定番メニューであるフルーツやヨーグルトにも注意が必要。朝の空腹時に甘いフルーツを食べると、胃酸の分泌を過剰に促し、ヨーグルトの吸収を妨げ、また胃腸に負担をかけてしまう場合があります。
先に朝食をしっかりと噛んで食べ、胃腸の働きを活性化させてから、食後に食べるようにしましょう。
5 遅寝遅起き
夏は日の出の時間が早いので、早めに起きて太陽のエネルギーを最大限に取り込むことを心がけて。朝は5時半から6時に起床し日光を浴びると、体の陽気を助け疲れにくくなります。また疲れを感じたら、午後1時頃に15分ほど昼寝をすれば、疲労の回復にも役立ちます。
一方、日没時間は冬に比べて遅いので、就寝時間も冬よりは遅めで大丈夫ですが、23時頃を目標に。少なくとも翌朝の3時までしっかり睡眠をとり、腸を休ませることにより、自律神経、免疫力、水分の調整機能を増進できます。
6 食事中、水を飲みながら食べる
食べ物の消化を助け、胃腸を丈夫にするためにはよく噛むことが大事。しっかり噛んでいることで胃腸の蠕動・分節運動や、膵臓からの消化酵素の分泌が促されるからです。
水やスープを飲みながら食べることが習慣になっている人は、よく噛まないまま飲み込んでしまうことが多く、胃腸に負担がかかっている可能性があります。ひと口につき、なるべく30回ほど咀嚼するよう心がけるように。
7 早食い
早食いの人も要注意。急いで食べるとひと口の咀嚼回数が少なくなり、前述のように胃腸への負担が増加。同様に、夏は食欲がないからといってのどごしがよいそうめんなどをよく噛まずに食べることで、ますます胃腸が疲れてしまいます。
たくさん食べられなくても、きちんと噛むことを心がけて、胃腸の働きのサポートを。
8 おやつに甘いものを食べる
空腹時に甘いものを食べると、胃酸の分泌が過剰になり胃腸への負担が増えてしまう恐れがあります。また、甘いものの過剰摂取は「胃腸熱」をもたらし、腸に熱がこもることで、肌の乾燥、便秘、むくみなどのトラブルが発生。
甘いものを食べたいときは、朝食や昼食(陽の時間帯)のときによく噛んで食べ、胃腸を活性化させた直後に、デザートとして食べるのがベターです。
9 夜、お風呂で熱めのお湯につかる
日が沈み、体を休めるべき“陰”の時間帯である夜に、熱いお風呂に長く浸かるとかえって体が疲れてしまう可能性も。ゆっくりお風呂に入りたいときは、可能であれば、体がまだ活動モードの時間帯である夕方早めに入るのが理想的。
夜遅くなってしまった場合は、軽くシャワーですませたり足湯をしたりと工夫すれば、疲れがとれやすくなります。
10 朝、ジムでハードな運動をする
東洋医学では朝は活動のための“陽”の時間なので、運動して体を活性化させるのはおすすめ。ただし、汗をたっぷりかくようなトレーニングは脱水の原因に。朝の運動は、早歩きの散歩程度でOKです。
屋内で、片脚立ちするだけでも充分、効果を発揮します。上げているほうの脚の膝を90度に曲げて1分キープするだけで、しっかり活性化されますよ。
11 夜8時以降に夕飯を食べる
日中は“陽”の時間帯なので、摂ったカロリーをさばいて消費することがわりと簡単にできますが、日没以降は体を休める“陰”の時間。そんなときに、副交感神経が優位に支配する消化器系に仕事をさせると、摂ったカロリーは全て吸収され「胃腸熱」も盛んになります。
また、睡眠の質もこの熱の影響で下がってしまうので、夜遅くの飲食は控えめにするのが基本です。夕食は、夜7時までには食べ終えるのがベスト。1日の食事の摂取量の配分は、朝食4、昼食4、夕食2の割合を意識しましょう。
12 夜の食事でお酒を飲む
ワイン、日本酒、紹興酒などの醸造酒類は糖分が高く、腸の熱を生み出す食材。夜遅くに飲むと胃腸に負担がかかるので、日中の太陽が出ている時間に楽しんで。パーティを開く場合は、昼間が理想。
【豆知識】夏は苦いもの、赤いものを積極的に食べましょう
夏は、血の巡りや精神を司る“心”の季節。養生のためには、ゴーヤやセロリなどの苦いもの、トマトやパプリカなどの赤いものを摂るのがおすすめ。また残暑の頃には、カボチャやさつまいも、人参などの黄色いものが胃腸の働きをサポートする効果があるとされています。
頼 建守先生
PROFILE●らい・けんしゅ●漢方医療 頼クリニック院長、産婦人科医時代より、西洋医学と東洋医学の融合に注力。漢方養生に基づいた生活指導方法が支持されて、メディア出演も多数。著書に『図解 世界一優しい東洋医学』(エクスナレッジ)。