私たちは、さまざまな抱負を胸に新年を迎える。普段は目標を設定したり達成したりするのが苦手な人も、ちょっとした生活習慣の改善になら無理なく取り組めるかもしれない。『Alcohol Change UK』というイギリスの団体が始めたドライジャニュアリーは毎年1月を禁酒月間にするというもので、このたび、その長期的な効果を示す最新の研究結果が発表された。詳しく見ていこう。

医学専門誌『BMJ Open』に掲載された同研究論文によると、ドライジャニュアリーに乗り遅れても、1カ月間の禁酒をすれば、広範囲に及ぶ健康上の効果が得られる。

この研究の目的は、ドライジャニュアリーを始めてすぐに訪れる変化と長期的な変化を調べることにあった。参加者のうち94名は飲酒を控え、残りの47名はコントロールグループとしてみな同等量のアルコールを摂取した。

ポッドキャスト『The Keri Report』のホストで著書に『The Small Change Diet』を持つ公認管理栄養士のケリ・ガンズによると、長期にわたるアルコールの摂取は、肝疾患、一部のがん、心疾患、認知症、消化不良、免疫力の低下といった深刻な問題を引き起こす。そう考えると、1カ月間お酒を控えたグループの健康状態が著しく改善したのも驚くようなことではない。具体的には、インスリン抵抗性が改善し、がん関連の成長因子と体重が減り、血圧が低下した。

禁酒の効果はこれだけじゃない。個人差はあるものの「よく眠れるようになった、朝から元気が出るようになった(これが運動量の増加につながることも)、仕事がはかどるようになった、よりヘルシーな食べ物を選ぶようになった、気分が全体的によくなったという人がいます」とガンズ。「体重が減ったという人もいますよ」

この研究で禁酒したグループに現れた効果は、研究期間を終えても薄れなかった。研究チームが6~8カ月後にフォローアップをしたところ、参加者の「飲酒量は大幅に減ったまま」で、AUDIT(WHOが開発した飲酒問題の程度を調べるテスト)のスコアが“危険”から“低リスク”に変わっていた。

ウェルネスセンター『Behavioral Health and Wellness Center』の臨床心理士、サリ・チャイト博士から見ても、これは本当に有望な研究結果。「1カ月間の禁酒によって飲酒問題が完全に解決する可能性は低いですが、今回の研究結果は、1カ月間の禁酒によって行動が変わる可能性があること、その結果、健康が改善する可能性もあることを示しています」。チャイト博士いわくアルコール関係の問題は、数々の心理学的・生理学的・行動学的な不確定要素が絡んでいるからこそ解決するのが難しい。でも、ドライジャニュアリーは短期的なチャレンジなので、成功する確率が高いと言える。

「過去の研究でも、短期的な小さな目標は長期的な目標よりも達成しやすいことが繰り返し証明されています」とチャイト博士。「お酒を完全にやめると言うより、1カ月だけ禁酒すると言うほうが心理的な抵抗は少ないですよね。最初から無理な目標に対しては、みんな頑張ろうとしないものです」。また、ドライジャニュアリーは「社会的に容認された」チャレンジで、連帯感やサポートが得られる分、成功しやすいという声もある。

ドライジャニュアリーを成功させるコツ

チャイト博士によると、過剰な飲酒が健康に悪いということを認識するだけでは不十分。ドライジャニュアリーに参加するなら、その1カ月をマインドフルに過ごす努力が必要になる。

チャレンジ期間中は、自分に起こるプラスの変化を見逃さないようにして。お酒をやめると、睡眠の質が高くなったり、エクササイズをする気になったり、肌がキレイになったり、不安を感じにくくなったり、胃腸障害の症状が改善したりすることも。「このような変化を記録しておけば、チャレンジ期間が終わっても健全な飲酒量を維持しようという気持ちになれます」とチャイト博士。

ガンズによると、社交の場ではおいしいノンアルコールのビールやカクテルを選ぶといい。「ただし、砂糖たっぷりの飲み物は控えて、カロリーの摂りすぎに注意しましょう。普通の炭酸水をグラスに注いで、柑橘系のフルーツ、ベリー、ハーブ(生姜、バジル、ミントなど)で風味を付けるとラクですよ」

結論

ドライジャニュアリーおよび1カ月間の禁酒は健康を促進するきっかけになる。でも、チャイト博士によると、アルコール依存症の人には不適切なので要注意。アルコールへの依存度を調べる方法は数多くあるけれど、1カ月間の禁酒に無理を感じる人や頑張っても続かない人は専門家による治療が必要かもしれない。

「問題のある飲み方をしている人には危険な離脱症状が出る可能性もあるので、専門家による観察が必要です」とチャイト博士。「お酒がないと負の感情に対処できない人や健全な社会生活が送れないという人も、セラピストの力を借りてください」。アルコール依存の治療は入院と通院でも受けられる。

※この記事は、アメリカ版『Prevention』から翻訳されました。

Text: Shannen Zitz Translation: Ai Igamoto