マリー・ヘルヴィンは、ファッション業界のエイジズムを非難したくて高級ランジェリーブランド『ブルーベラ』のバレンタインデー広告の顔になることを承諾したわけじゃない。でも、現在71歳のマリーはモデルというキャリアを通して、いくつもの常識を覆してきた。イギリス版ウィメンズヘルスから詳しく見ていこう。

70年代と80年代のファッションアイコンとして『Vogue』誌の表紙を12回も飾ったマリーは、著名な写真家デイヴィッド・ベイリーの元奥さま。昨年は乳がんを発症し、乳房切除術と乳房再建術を受けたけれど、この写真からも分かる通り、元気な姿でモデル業に復帰した。

「ブルーベラは私が手術から回復するのを1年も待ってくれました。だから、この撮影が始まったときはとてもワクワクしましたし、信じられないくらい最高の気分でした」とマリーは語る。

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Courtesy of Bluebella

「私がこの仕事をするのは私がモデルだからですが、この仕事を通して自分の言い分を少しでも証明できるのはうれしいですね。私たちは何歳になっても、世間から忘れられる私くらいの年になっても、ランジェリーを身にまとい、官能的でセクシーな気分になっていいんです」

ブルーベラのブラジャー、ブリーフ、サスペンダー、シュミーズ、ボディスーツの最新コレクションは、その主張を間違いなく表現している。ロマンチックなカラーの定番であるピンクと赤、そしてクラシックな黒を基調にしたレースの刺繍、透き通るようなパネルとカットは、まさにセクシーで高級なランジェリーの手本と言える。

マリーがインタビューの最中に叫んだ通り、「いくつかのランジェリーは本当に露出が高かった!」。でも、それで彼女の士気が下がることはなかった。71歳という年齢にかかわらず、そして体を一変させた大手術のあとにもかかわらず、マリーは他の撮影と同じように今回の撮影に取り組んだ。

a person in a red dress
Courtesy of Bluebella

「私は、ありのままの自分の姿に心から満足しています」とマリーは語る。「私の外科医は(乳房再建術で)素晴らしい腕前を披露してくれました。彼はもはやアーティスト。この手術はNHS(英国民医療サービス)系列のガイズ病院で受けました」

でも、この治療の影響でマリーはエクササイズのルーティンを変えざるを得なかった。手術前のマリーは、自称“ジムオタク”らしく多数のマシンを使いこなし、ウエイトリフティングも含め1時間半のトレーニングを週4でするというトップアスリートさながらのルーティンをこなしていた。でも、手術後は床でハンドウエイトを使って行うエクササイズしかできなくなり、1回の所要時間も30~40分に短縮しなければならなかった。

「71歳にもなってシックスパックができたことに自分でも驚いています。トレーニングをしていたら、たまたまできただけですが」。マリーによると、以前はともかく、現在のルーティンはさほど難しくない。

a woman in a black garment
Courtesy of Bluebella

「いまの私は極端なことをしませんし、一般的な女性にできないようなこともしません。でも、私が乳がんになる前のルーティンは非常に負荷が高かったので、(私の年齢の)大半の女性には難しかったと思います」

マリーは健康的な食生活を維持することにも熱心で、ブルーベラの撮影前の一週間は砂糖を完全に排除していた。朝はデカフェのコーヒーを(コーヒーより牛乳多めで)飲み、ゆで卵とサプリメント一式を摂取する。乳がんと甲状腺を治療するための薬に加えて、ヘアケア、ヒアルロン酸、タラ肝油のサプリメントも飲んでいるそう。

朝食のあとはニンジン、セロリ、リンゴ、みかん、生姜とターメリックをブレンドしたジュースを飲み、ビタミンB・C・Dとマグネシウムのサプリメントを摂取する。また、更年期は10年以上前に抜けたけれど、乳がん治療薬の副作用でホットフラッシュや不眠といった更年期のような症状が出ているため、ホルモン補充療法のパッチもルーティンの一部になっている。

a woman in a black garment
Courtesy of Bluebella

夜は夜で、ヘアケアとヒアルロン酸のサプリメントに加え、スキンケアのサプリメントとCBDオイルも摂取する。「月に一度はハーヴェイ・ニコルズという百貨店の中にあるウェルネスセンターのREVIVで、ビタミンB12の注射も打ってもらっています」とマリー。「この注射を始めて1年になりますが、力が湧くだけでなく、もう50年以上食べていない赤身肉を補ってくれているとも思います」

もちろん、このようなライフスタイルを続けているのはがんの治療とモデルという仕事のためで、マリー自身これと同じライフスタイルを同年代の他の女性に勧めているわけではない。「私は気分的にも見た目的にも最高の状態で70代を過ごしたいと思っています。私がここまで熱心なのは、モデル業で生計を立てているから。この仕事は見た目に大きく左右されます」

そして、マリーは高齢の女性に対する社会の先入観も変えたいと思っている。「人々は60代から80代の女性に対してサンタクロース夫人のようなイメージを抱いています。髪もところどころ白髪ではなく、完全に真っ白のイメージです」

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Courtesy of Bluebella

マリーがブルーベラのキャンペーンに参加したいと思った理由にはもう1つある。「手術後はスポーツブラのようなものを着けなければなりません。巨大で重くてかさばるし、とにかく醜い。鎧を着けているように見えるので、私は大嫌いでした。そのブラを着ける必要がなくなったら今度はワイヤレスのブラを見つけなければなりません。これが本当に大変なんです」

術後1年が経過して、やっと自分の好きな下着が着られるようになったマリーは上質なランジェリーに凝っている。「最近はマークス&スペンサーで買った普段使いの下着と、上質なランジェリーで引き出しを分けています。毎日ではないですが、いまは美しいランジェリーを身に付けたい。本当に長い間、着られませんでしたから」

a woman in a black dress
Courtesy of Bluebella

通院する日も例外じゃない。「がんセンターに行くのは楽しいことではありませんが、自分がキレイなランジェリーを着けていると思うと、ちょっと気分が良くなります」

これはマリーが普段から取り入れているアプローチ。「おかしな話に聞こえるかもしれませんが、嫌なことがあった日も、赤い口紅を塗るとどういうわけか少し気分が良くなります。男性と違って女性は、いろいろなツールを使って簡単に自分の気分を上げることができるんだから積極的にそうすべき。男性が最悪の気分のときは本当に最悪です」とマリーは笑う。

a woman in a black dress
Courtesy of Bluebella

そして彼女は他の誰でもない自分のために、これだけの努力をしている。これぞマリーが気持ちの面でも体の面でも若々しい最大の秘訣と言えよう。「どれもこれも人のためにしているわけではありません。私は独身で一人暮らし。彼氏もいません。私にとって大事なのは自分を後押しするために全力を尽くすことです」

「私だけということは何事も私次第ということです」とマリーは続ける。「自分のためにいろいろやってくれる人がいないなら、自分でやるしかないでしょう」

いまのところ引退の予定はない。「いまは仕事が最高に楽しいので、まだまだ続けたいですね!」。これほど刺激的でポジティブな考え方のマリーなら、80代になっても余裕でランジェリーキャンペーンの顔を務めることができるはず。

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Courtesy of Bluebella

※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: Alexandria Dale Translation: Ai Igamoto

Lettermark
Alexandria Dale

Alexandria Dale is Digital Fashion Writer at Cosmopolitan & Women's Health UK. Covering everything from the celebrity style moments worth knowing about to the latest fashion news, there’s nothing she loves more than finding a high street dupe of a must-have designer item. As well as discovering new brands, she’s passionate about sustainable fashion and establishing the trends that are actually worth investing in. Having worked in fashion journalism for six years, she has experience at both digital and print publications including Glamour and Ok! 

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伊賀本 藍
翻訳者

ウィメンズヘルス立ち上げ直後から翻訳者として活動。スキューバダイビングインストラクターの資格を持ち、「旅は人生」をモットーに今日も世界を飛び回る。最近は折りたたみ式ヨガマットが手放せない。現在アラビア語を勉強中。