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中絶の経験をオープンに語った14人のセレブたち

「人生でもっとも苦しい経験の1つだった」

By  , Sarah Felbin, Sabrina Talbert and Jamie Spanfeller
29th annual glaad media awards arrivals
Alberto E. Rodriguez//Getty Images

米国最高裁が1973年のロー対ウェイド判決を5-4で覆してから1年以上が経過した。でも、この問題は依然として社会的および政治的な議論の中心にある。

2022年5月、サミュエル・アリート最高裁判事によって書かれた意見書の草案が漏洩し、最高裁が「中絶を合衆国憲法上の権利とする49年前の歴史的な判決を覆す構え」であることが判明した。この意見書は、妊娠15週目以降の中絶を禁止するミシシッピ州のドブス対ジャクソン女性健康機構事件に関するものだった。そして、実際にロー対ウェイド判決が覆ったのは、2022年6月24日のこと。

この草案が漏洩したとき、シンガーソングライターのフィービー・ブリジャーズは当時のツイッターで前年のツアー中に中絶したことを明かし、「そういうアクセスは万人にあってしかるべき」と述べたうえで中絶基金に関する記事へのリンクを貼った。

2022年9月15日にはモデルのクリッシー・テイゲンも、3度目の妊娠が母体の命を救うための中絶に終わったことを打ち明けた。『The Hollywood Reporter』誌によると、クリッシーは社会変革エージェンシーPropper Daley主催のイベント『A Day of Unreasonable Conversation』で「あれは紛れもない中絶だった」と語った。「生きられる可能性がまったくない赤ちゃんの代わりに、私の命を救うための中絶だった」

ロー対ウェイド判決が覆ってからというもの、中絶と望まぬ妊娠に関するスティグマを減らす目的で自分の経験をシェアする女性が増えている。多くの歌手、モデル、女優、ダンサー、トーク番組の司会者が名乗りを上げて、あのとき別の決断をしていたら、あるいは中絶という選択肢を与えられていなかったら、自分の人生がどうなっていたかを語り始めた。

米国最高裁はすでに判決を下してしまった。でも、こうした女性の経験談は後を絶たない。リサーチ会社Guttmacher Instituteの調べによると、女性の4人に1人は45歳までに中絶を経験する。

この記事では、自伝『The Woman In Me』の中でジャスティン・ティンバーレイクとの子どもを妊娠し、中絶したことを明かしたブリトニー・スピアーズを含む、14人のセレブたちの経験談をアメリカ版ウィメンズヘルスからみていこう。

1

ブリトニー・スピアーズ

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Alberto E. Rodriguez//Getty Images

ブリトニー・スピアーズは発売されたばかりの自伝『The Woman in Me』の中で、2000年後半にジャスティン・ティンバーレイクとの子どもを妊娠したことを告白している。

当時の彼女は18歳か19歳という若さだった。この自伝の抜粋には「驚いたけれど、私にとっては悲劇じゃなかった。当時の私はジャスティンを心から愛していた。いつか一緒に家族をつくりたいと思っていたから、あの妊娠は早すぎただけ」とある。「でも、ジャスティンは私の妊娠を喜んでいなかった。私たちは子どもを持つ準備ができていない、若すぎると言っていた」

ブリトニーはジャスティンが「父親になることを望んでいない」という理由で中絶というオプションを選択した。でも、「私1人の決断だったら絶対におろさなかった。あの中絶は人生でもっとも辛い経験の1つだった」と述べている。

『Page Six』誌によると、ブリトニーのファンたちは彼女が2009年の楽曲『Everytime』のミュージックビデオの中で中絶をほのめかしていたと考えている。このビデオでは、女の子が病院のベッドで亡くなり、その隣の部屋の女性が元気な赤ちゃんを産む。

2

クリッシー・テイゲン

one fair wage fundraiser
Variety//Getty Images

『The Hollywood Reporter』誌が報じるところによると、クリッシー・テイゲンは3度目の妊娠を振り返り、2020年の流産が実際は中絶であったことを公表した。社会変革エージェンシーPropper Daley主催のイベント『A Day of Unreasonable Conversation』の席では「途中から赤ちゃんは助からないだろうという話になった。私も医療介入を受けないと生きられないだろうと言われた」と語っている。

この中絶で命拾いしたものの、クリッシーは「自分が中絶したことを理解するのに1年以上かかった」そう。その気づきが訪れたのは、皮肉にも米国最高裁がロー対ウェイド判決を覆したときだった。

「私たちが流産と言ったから世間は私たちが流産をしたことに同意して、どのメディアも流産であるという報道をした。最初から中絶だと言わなかった自分に本気で苛立ちを覚えた」

3

アイルランド・ボールドウィン

premiere of youtube originals' justin bieber seasons  arrivals 
Jon Kopaloff//Getty Images

3分間のTikTok動画の中で26歳のアイルランド・ボールドウィンは、10代の頃、無意識の状態でレイプされたことを明かした。その後の彼女は「どんどん落ちていった」そうで、「あのとき妊娠していたら自分がどうなっていたか分からない」と語った。

この動画の後半では、元パートナーとの間にできた子どもを中絶したことも明かした。「彼に子どもも結婚も望まないとハッキリ言われて」。自分の子どもには、自分のように不仲な両親のもとに生まれてほしくないそう。

「赤ちゃんを産んで養子に出すというオプション? あったのかもしれないけれど、自分が経済的に自立しておらず、精神的な支えとなるパートナーもいない状態でひとり子どもを育てるなんて、私には無理だった。あのときの私は自分を選んだ。もう一度同じことが起きても、私は自分を選ぶと思う。自分の人生は自分で決める」

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4

シェリル・バーク

flp and imara s beauty partnership launch party
John Wolfsohn//Getty Images

ロー対ウェイド判決が覆ったことを受け、ダンス系リアリティ番組『ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ』に出演中のプロダンサー、シェリル・バーク(38歳)は、18歳のときに中絶したことを自身のインスタグラムで明かした。プランド・ペアレントフッド(家族計画連盟)のような場所がなければ、「みんなと今日こうして話せることもなかったと思う」

「避妊はしていた。相手はコンドームを使っていたし、私はピルを飲んでいた。それでも妊娠してしまうことはあるのよね」と語ったシェリル。「私は妊娠2週目で中絶をしたけれど、車でプランド・ペアレントフッドに乗り付けたら、中絶反対のプラカードを持ったデモ隊がいた。あれだけでも十分トラウマ的な経験だった。もちろん、中絶のプロセス全体もトラウマ的。にもかかわらず、私たち女性が自分の体に関する決断を下すことさえ違法にしようというのは狂気の沙汰」

簡単ではなかったけれど、シェリルは自分の決断を恥じていない。「中絶する権利がなければ、私は自分が好きなことを本気でしていなかったと思う。中絶するしないを決めるのは私たち女性であって、他の人は関係ない」

5

フィービー・ブリジャーズ

the 2023 met gala celebrating karl lagerfeld a line of beauty  arrivals
Jamie McCarthy//Getty Images

ロー対ウェイド判決が覆る可能性を示唆した意見書の草案が漏洩したことを受け、シンガーソングライターのフィービー・ブリジャーズ(27歳)は、その年の5月3日にツイッターで「去年のツアー中に中絶した」ことを明かした。「プランド・ペアレントフッドでもらった経口中絶薬を飲むだけだった。そういうアクセスは万人にあってしかるべき」

ツイッターにはフィービーの意見を支持する声が次々と寄せられた。「自分の経験をシェアしてくれてありがとう」「全体のほんの一部でもシェアしてくれてありがとう。あなたの話には、とても大きな意味がある」という感謝の声も多かった。

6

ヴァネッサ・ウィリアムス

"potus  broadway photo call
Bruce Glikas//Getty Images

女優のヴァネッサ・ウィリアムス(59歳)は米国の報道番組『ナイトライン』に出演し、高校時代に妊娠して中絶したことを明かした。

「妊娠ほど恐ろしいことはない。当時の私には子どもを産む覚悟も、子どものために戦ったり葛藤したりする覚悟もなかった」

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7

テス・ホリデー

the discoasis vip night arrivals
Amy Sussman//Getty Images

モデルのテス・ホリデー(36歳)は、2019年にインスタグラムで自身の中絶経験をシェアしている。「私はミシシッピ州出身で現在はカリフォルニア州に住んでいる。既婚者で2児の母。中絶したこともある。当時の精神状態で妊娠は無理だった。私は私自身と家族のために最善の決断をした」

「決して“ラク”ではなかったし、いろいろな意味で耐え難かった。それでも中絶は必要だった。当時の自分の選択を後悔したり疑ったりしたことは一度もない。私の友達の言葉を借りれば、『中絶はクィアの問題であり、トランスジェンダーの問題であり、ノンバイナリーの問題である』」

テスの投稿には、募金先として中絶賛成派の団体(Yellowhammer FundやSisterSongなど)のリストもあった。

8

ニッキー・ミナージュ

billboard women in music 2019 presented by youtube music
Rich Fury//Getty Images

ラッパーのニッキー・ミナージュ(39歳)は年上の男性と付き合っていた高校時代に妊娠し、「死ぬかと思った」と『Rolling Stone』誌に語っている。「まだ10代の私にとって、あれほど辛いことはなかった」

その後、ニッキーは「準備不足だった。当時の私には子どもにあげられるものがなにもなかった」という理由で中絶することを決めた。「それで中絶賛成派じゃないと言ったら矛盾することになる」。アルバム『The Pinkprint』に収録された楽曲『Autobiography/自伝』の歌詞の一部は、この経験がベースになっている。

9

チェルシー・ハンドラー

the tonight show starring jimmy fallon season 11
NBC//Getty Images

コメディアンで女優のチェルシー・ハンドラー(47歳)は『Playboy』誌の“フリーダム・イシュー”に寄せたエッセイの中で、16歳のときに2度中絶していることを明かした。当時の彼氏と避妊なしのセックスをして妊娠したそう。

「あのときは『子どもくらい産めるでしょう。双子が生まれたら、韻を踏んだ名前でも付けようかな』と思っていた。もちろん、あの年で1人で産んで育てるなんてバカげた話。当時の私は夜になると道に迷って家にすら帰れなかった。両親も私には無理だと思ったのね。初めて親らしいことをして、私をプランド・ペアレントフッドへ連れて行った」

その年の暮れ、チェルシーは16歳で再び妊娠し、2度目の中絶をした。「2度も意図せずに妊娠するのは無責任。それでも慎重な決断が必要であることには変わりない」

「人間はみな間違いを犯す。私の場合は16歳で2度も大きなヘマをした。その後なんとか正気を取り戻し、自分の健康を危険にさらしたり自分や家族を破産させたりすることなく、合法的に中絶を受けられたことに感謝している」

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10

ハンナ・ギャズビー

hamilton australian premiere arrivals
Don Arnold//Getty Images

『Variety』誌とのインタビューの中で、コメディアンのハンナ・ギャズビー(44歳)は性的暴行を受けて中絶した自身の経験に触れ、ほぼ全ての中絶を禁止する新しいアラバマ州法(2019年に可決)に対する懸念を示した。

「あんな州法が成立したのはブランディングが上手いからであって、“命を大切に”(中絶反対派のスローガン)しているからじゃない。事実、私は命を大切にしているけれど中絶をした。私はその二重性に満足している」

「私はレイプを受けて精神的にとても脆くなっていた」とハンナは続ける。「あの状態で子どもなんか育てたら死んでいた。そんなの全然“命を大切に”してないでしょう? 女性に中絶するなと言っておきながら、そういう女性を助けるためのインフラをまったく用意しないなんてありえない」

11

ジャミーラ・ジャミル

2023 texas conference for women
Marla Aufmuth//Getty Images

『People』誌によると、米テレビドラマ『The Good Place』に出演中のジャミーラ・ジャミル(36歳)は、ジョージア州で中絶が犯罪となったことを受け、自分の経験をツイートした。

「私は若い頃に中絶をしたけれど、あれはいままでの人生で最高の決断だった。私にとっても私が望んでいなかった赤ちゃんにとっても。当時の私は気持ち的にも精神的にも経済的にも準備不足だったから」

「たくさんの子どもたちが児童養護施設に送られる。多くの命が無駄になる。すごく残酷」。5月5日、ジャミールはロー対ウェイド判決が覆りそうというニュースを聞いて、インスタグラムにシンプルなメッセージを投稿した。「中絶は私の命を救ってくれた。私にとっては難しいことじゃなかった。いまはなに1つ後悔せず、ただ深い安堵と感謝の気持ちで生きている」

「中絶を禁止しても“安全”な中絶がなくなるだけで、中絶そのものがなくなるわけじゃない。これは歴史的な事実」

12

ビジー・フィリップス

global citizen now
Noam Galai//Getty Images

42歳のビジー・フィリップスは自分が司会を務めるトーク番組『Busy Tonight』の中で、「女性の4人に1人は45歳までに中絶を経験するという統計がある」と語った。「この数字は意外かもしれないし、あなたの周りには中絶するような女性がいないかもしれないけれど、私は中絶を経験している」

「私は15歳のときに中絶をした。今日この話をしようと思ったのは、アメリカの女性と少女の未来が純粋に心配だから」

ビジーは2018年発売の自伝『This Will Only Hurt a Little』の中でも中絶問題を扱っている。

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13

キキ・パーマー

soul train awards 2023 show
Paras Griffin//Getty Images

レイプや近親相姦の被害者を含む、ほぼ全ての中絶を禁止するアラバマ州法の成立(2019年)を受け、28歳のキキ・パーマーは24歳で中絶したときのことをツイートした。

『The Los Angeles Times』紙が報じるところによると、このツイートには「自分のキャリアに対する責任を感じていたし、キャリアウーマンとしても母親としても失敗しそうで怖かった」という当時の心情が綴られていた。

『People』誌によると、その後キキは「ツイッターは個人的な話をするにはフラットで短すぎる。文脈を伝えられないのは本当にじれったい」という別のツイートでフラストレーションを露わにした。「アラバマ州のニュースにはガッカリ。女性の権利は後退している気がする。個人の権利が奪われている。私には、いまの世の中と政策が理解できない」

14

ミンカ・ケリー

minka kelly signs copies of her memoir "tell me everything
David Livingston//Getty Images

女優のミンカ・ケリー(41歳)は2019年にインスタグラムで自身の経験をシェアした。「若い頃に中絶をした。あのときは私にとっても彼にとっても、それが最善の決断だった。生まれなかった胎児にとっても」

「若いがゆえに準備不足で、家族の助けも得られない2人の間に生まれた子どもは苦労する羽目になる。あの時点で子どもを産んでも、貧しくてハチャメチャでまったく機能していない生活を長引かせるだけだった」

フォロワーからは「シェアしてくれてありがとう。私も10代の頃に同じ経験をした」「自分をさらけ出してくれてありがとう」という感謝の声が相次いだ。
 
※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: Sarah Felbin, Sabrina Talbert And Jamie Spanfeller Translation: Ai Igamoto

Headshot of 伊賀本 藍
伊賀本 藍
翻訳者

ウィメンズヘルス立ち上げ直後から翻訳者として活動。スキューバダイビングインストラクターの資格を持ち、「旅は人生」をモットーに今日も世界を飛び回る。最近は折りたたみ式ヨガマットが手放せない。現在アラビア語を勉強中。 

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