コロナ禍の経験もあり、健康志向が以前に増して高まっていると言われる日本。その流れで、“オーガニック”に対して興味を持つ人たちは確実に増えている様子。そこで、ドイツ在住のオーガニック専門家・レムケなつこさんに、エビデンスのあるオーガニック情報を4回の連載を通して伝えてもらう。前回はオーガニック(有機)野菜について教えてもらったが、第2回の今回は“オーガニックコスメ”について。選び方のポイントを中心に使うメリットやご自身のエピソードなどを伺った(以下「」なつこさん)。

オーガニックコスメで有害物質暴露を避ける

「私は長年、オーガニックコスメを愛用しています。そもそもは超がつくほど敏感肌、アトピー性皮膚炎のある自分の肌に合うものを探していたら、それがオーガニックコスメだったことが始まり。巷では石油由来の成分が使われているコスメ、いわゆる石油系コスメが数えきれないほど出回っていますが、ものによっては有害物質にばく露することもありえます。例えば、一般的なコスメ原料によく使用される一部の成分には、残留農薬量が高く検出され、マイクロプラスチックが原料として使用されているという報告もあります。一方、オーガニックコスメの場合、肌に不要な化学物質を取り入れる心配が少なく、汚染物質の自然界への放出を避けることで、地球環境や生物保護など次世代に貢献できるのも大きな魅力の一つ。有名なメーカーのものだから、トレンドだからなどといった理由でコスメを選択してきた人はぜひ、この機会に一度、コスメについて考えてみてほしいもの」

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Artfully79//Getty Images

選ぶ際のポイントは認証にあり! 

「世界にまだ統一定義がないので、極論を言うと一滴でもオーガニック原料を使用したら、オーガニックコスメと名乗ることができてしまうのが現状。そんな中で、私がオーガニックコスメを選択したいという人に選び方のポイントを伝える場合、“認証”についてお話しています。

 オーガニックコスメにはオーガニックコスメ認証を取得しているものと、取得していないものがあるんです。そのため、オーガニックコスメの定義は、オーガニックコスメとしての認証を取得しているもの、または認証と同等な厳しい条件下で作られているものとされています」

2つの認証を知っておくのがおすすめ

「世界で最も大きなオーガニックコスメ基準値策定団体は、“COSMOS(コスモス)”認証と“NATRUE(ネイトゥルー)”認証の2つ。日本のオーガニックコスメメーカーさんのコスメにも、このどちらかの認証マークがついているものを見たことがあるはずです。

 ちなみにどちらの認証も、いわゆる民間認証団体が作っているものです。みなさんがよくご存知の有機JASは、公的認証と呼ばれ、要するに農水省、日本政府が管理している公的なもの。オーガニックコスメ認証に関しては、まだ公的な認証は存在しておらず、先述の民間認証団体が作った独自の認証、独自の基準を物差しとしていくことになるわけです。

 この認証を得るには、その基準に定められたプロセスに沿って生産製造されていないといけません。例えば、全成分中のオーガニック原材料の使用率は何%だよとか、この成分はこういった用途なら使用OKだよとか。環境社会に配慮した製造方法が基準の中で推奨されていて、“ルール”としてあるということなんです。認証について、意外とご存じない人も多いので、ぜひ知っておくと良いと思います」

オーガニックコスメのデメリットも把握を

close up of african american woman dipping finger in lotion jar
JGI/Jamie Grill//Getty Images

「私は今までいろいろなオーガニックコスメを使ってきましたが、その経験から感じるのは、『私の肌に合うから、私の肌には優しいからといって、他の人も肌に合う、優しいとは限らない』ということ。オーガニックコスメは植物を使っているので、植物に対してアレルギーを持っているなど、肌が非常に敏感な人は特定の植物に対して反応してしまうことがあるんです。私自身も超敏感肌なので、これまでにそういった経験をしたことがあります。そのため、『このメーカーならOK!』ということは言えず、『このメーカーのこの商品はOK!』となるわけです。実際、私も使用しているオーガニックコスメはメーカーがバラバラで、ライン使いはしていません」

私個人が愛用しているものは……

「スキンケアだと、NEROLILA Botanica(ネロリラ・ボタニカ)のインテンシブ ビューティーセラム(2層式美容液)やオーストリアのDerma ID(デルマ・アイディ)のアイテムを使っています。Derma IDは超敏感、アレルギー&アトピー肌を自ら克服した薬剤師であり、博士課程までとったドクターが作ったメーカー。個人的には『これ以上のオーガニックコスメはない!』と思うほど、お気に入りです。ここのスキンケアアイテムはトラブルの時も頼りにしています。他にも吉川ひなのさんのanelia natural(アネリア ナチュラル)のアイブローやアイライナー、マスカラを愛用中。ドイツが発祥のメーカーのDr.Hauschka(ドクターハウシュカ)のフェイスウォッシュも使っています。アーモンド成分が入った洗顔料で、洗顔後はオイルで保護されたような肌感になるのが好きで長いこと使っています」

ナチュラル志向の背景にも注意! 

「最近は日本市場でも“ナチュラル志向”が当たり前のようになってきていますよね。だから、一般コスメの中にも天然素材が結構使われています。例えば、“●●●エキス”という表記をコスメのパッケージで見たことがある人もいらっしゃるのでは。私はそのエキスが抽出された原料の残留農薬が気になります。

例えば、コスメによく使用される天然素材の中に、スイートアーモンドオイルやカカオバター、レモン精油などがあると思いますが、これらの原料がオーガニックではない場合、農薬が残留しているという報告が多数見受けられているんです。この事実を知ったら、『ナチュラルならなんでも良い!』とは言えなくなりますよね」

まとめ

どうだった? せっかくキレイになったり、気分を上げるためにメイクをしているのに、逆に健康や環境に害を及ぼす可能性があるなんて…。驚きの事実にショックを受けた人もいるはず。でも、この機会を良い機会と捉えて、オーガニックコスメについての認識を深め、自分が納得できるコスメを見つけてみて。

【教えてくれた人】

レムケなつこさん

natsuko

オーガニック専門家。ドイツ法人オーガニックビジネス研究所IOB代表取締役CEO。慶應義塾大学経済学部卒業後、本場ドイツの大学院と食品研究所でオーガニックを研究開発。オーガニックセクターの国連IFOAM欧州本部リーダーシップ研修にて、日本人初として選抜される。20代でボリビアにてJICA⻘年海外協力隊、メキシコでJICA専門家として途上国の生産者支援に関わった経緯から、オーガニックに目覚める。現在はオンラインスクール運営、企業研修、コンサルティング、講演、執筆のほか、InstagramやYouTubeを通じてオーガニックに関するさまざまな情報発信なども行う。プライベートでは、夫と男児の3人暮らし。

公式HP

YouTube:「オーガニック専門番組」

Instagram:@natsuko_bio

Text:ERI HAMADA

Headshot of Kanna Konishi
Kanna Konishi
ウィメンズヘルス・副編集長

編集者として多くのメディアに携わったのち現職。健康オタク歴20年、趣味は"毒出し"で、体と心と部屋を効率よく整え、環境にもいい健康法を探るのがライフワーク。チアリーダー経験あり、勝手に人を応援しがち。仕事では「心から推せるものしか紹介したくない!」と目を血走らせ、常に情熱大陸に上陸中。 

Instagram: @editor_kanna_purico