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“ゾーンダイエット”という言葉はきっとどこかで聞いたことがあるはず。ジェニファー・アニストン、サンドラ・ブロック、デミー・ムーアもこのゾーンダイエットのファンだという話も。あるいは、ジムで誰かがゾーンダイエットのことを話題にしていたかもしれない。『CrossFit Journal』では、ゾーンダイエットのことを理想の栄養バランスに近いと評したこともある。

このゾーンダイエットは、ボストン大学やマサチューセッツ工科大学の生化学者のバリー・シアーズ博士が考案したもので、食事による炎症を抑えることで慢性疾患のリスクを下げて、体重を減らすダイエット法。

シアーズ博士によると「ゾーン」とは、身体が炎症をもっともおさえられる状態になるそう。これは、病院あるいはウェブサイトで販売されている試験キットを使って3つの臨床マーカーを調べることで確認することができる。このときにチェックするのは、インシュリンや、炎症をおこすホルモンの値だそう。身体をこのゾーン状態にキープすることで、1週間で500gから1kgほど体重を減らすことができると言われているそう。

ゾーンダイエットは流行りのダイエットと思われがちだけれど、実際は30年も前からあるもので、関連書籍3冊は二ューヨークタイムズのベストセラー本にもなっている。ただ、2018年には、アメリカのU.S. News & World Report’s Best Diet Rankingというランキングの中で、40あるダイエットの中で22位にランキングしている。つまり、この順位は健康に悪い影響はないけれど、必ずしもベストなオプションではないことを示唆している。

炎症と体重にはどんな関係がある?

ゾーンダイエットは炎症を抑えることで体重を減らすものだけれど、炎症はそもそも体重とどう関係しているの? 炎症とは、身体の免疫システムが身体を外からの異物からどれだけ守れるかというもの。ただ、アレルゲンなどの異物は空気中や食べ物にも含まれていて、それが身体の中で反応をおこして炎症を起こす。

ある科学論文によると、肥満のことを低レベルの慢性炎症状態と呼んでいて、炎症をおこしやすいタンパク質が増えると将来的な体重増加につながることを示している。

ファティマ・コーディ・スタンフォード医学博士も「炎症とは身体に外的ストレスを与えることで、血中のストレス関連マーカーがあがってしまう状態のこと」と説明する。ハーバードメディカルスクールの医学部教授で、マサチューセッツ大学の肥満治療の医師でもあるスタンフォード医学博士によると、炎症マーカーの値が増えると、脂肪細胞が増えることになるそう。これは、慢性的な炎症によって脂肪細胞が異物や体液をためこむようになり、結果どんどん肥大化してしまうからなんだとか。

炎症を抑えることだけでなく、ゾーンダイエットはインシュリンレベルを一定にすることも大切にしている。インシュリンとは脂肪の蓄積を制御するホルモンのこと。精製された炭水化物や加工食品、砂糖の多いものを食べた後などに血糖値が急激に上がると、インシュリンも急激に上がり、これが炎症を起こすことになる。

ゾーンダイエットで食べられるものは?

では、「ゾーン」に入るためにはどうすればいいの? 答えは食べるものにある。ゾーンダイエットは主要栄養素を摂取する割合を厳しく設定している。炭水化物40%、タンパク質30%、そして脂質30%という割合がゾーンダイエットが推奨する割合。この割合が血糖値とホルモンを安定させて、炎症作用を防ぐとされている。

この割合を目指すには、タンパク質の豊富な卵の白身、魚、鶏肉、赤身の牛肉、低脂肪の乳製品で毎食お皿の1/3を占めるようにして。それ以外は、野菜を何種類かとルーツを少々。なるべく、糖質の高いバナナ、ニンジン、ブドウ、レーズンやデンプン質の多いイモ類やトウモロコシは避けるようにして。そして、オリーブオイル、アボカドやアーモンドなど一価不飽和脂肪酸を含むものも少し加えて。

ゾーンダイエットでは、食べてはいけないものはないけれど、GI値の高い炭水化物、たとえばパスタやパン、ジャガイモなどは血糖値を乱してしまうため、なるべく摂らないことをすすめている。またポリフェノールや抗酸化成分が多いものを優先的に食べるようにとしている。こういった食品は抗炎症成分を多く含んでいる。

カロリーや食べる時間にも気をつけて

ここまで読んですでに気づいているかもしれないけれど、ゾーンダイエットは低炭水化物ダイエットの一種でもある。ただ、完全に炭水化物をやめなくて良い食事法だと、マウントサイナイ医科大学の助教授をつとめる、レシュミ・スリナス医学博士。完全に炭水化物をカットするわけではないので続けやすい。

食べるものの制限はあまりないけれど、ゾーンダイエットにもカロリー制限はある。女性の場合は1日1200kcal程度。多くの人にとってこれはなかなか厳しいもの。そして、カロリー摂取量が少なすぎると体重を減らしたいときには逆効果になることも。これは身体が飢餓モードになり、脂肪を燃焼するかわりに溜め込むようになるため。その結果、代謝が悪くなって体重が減りにくくなる。

そして、厳密なスケジュールを守らなくてはいけないのも大変なポイント。一日3食と2回の間食を食べる際にそれぞれ、5時間以上の間をあけてはいけない。この食事のタイミングがとても大切。スタンフォードは、「頻繁に食べることで、あとで食べすぎることや身体に悪いと分かっている加工食品や甘いもの、しょっぱいものを食べたくなりにくくなる」と話す。加工食品や味の強いものは、どれも炎症を起こしてしまうものだとスタンフォードは話す。ゾーンダイエットのようにある程度の間隔でなにか食べることで、血糖値を安定させて、炎症反応を抑えてくれる。

ゾーンダイエットの効果は?

ただし、科学的な面から見ると、ゾーンダイエットに対する評価は分かれるところ。ある研究によると、1年間ゾーンダイエットを行ってもたったの3kgしか体重が減らなかったという結果も。これは、低脂肪ダイエットを行った人よりも少なかった。ただし、ウエイトウォッチャーダイエットや低炭水化物のアトキンスダイエットよりは効果があったそう。

また、別の新しい研究では、ゾーンダイエットを1年行っても約1.3kgから2.2kgしか減らないという結果も。これは、低脂肪ダイエットやアトキンスダイエット、飽和脂肪酸を減らした上で適度な炭水化物を食べるダイエットよりも体重減少効果は少なかったそう。

このように研究でも効果は分かれているけれど、ゾーンダイエットで推奨されている食品を食べていれば、炎症は抑えられることは間違いない。ただしそれが体重を減らすかについては個人差がある。

ではゾーンダイエットをやるべき?

ゾーンダイエットで身体に悪影響があるわけでもなく、体重は減らせるかもしれない。ただ、このようなカロリーガイドラインや食べるタイミングをこれほど厳密に守らなくても、似たような結果を出すことはできる。

「ゾーンダイエットの主要栄養素のバランスをとるという考えは、どんな人も食事に取り入れることのできる良い考え」とスリナス医学博士は言う。この3つの栄養素の割合を使うことで、食べる量やエネルギーを意識することができる。そして、カロリーを主に炭水化物とタンパク質から摂り、そこに補助的に脂質を摂るというバランスも取りやすくなる。

ただ、主要栄養素のバランスを厳密に守ることが逆効果になることも。30-40-30の割合を守ると食物繊維、カルシウム、ビタミンDやカリウムの多い食品を結果的に制限することになることもある、とスタンフォード博士は話す。これらはどれも大事な栄養素。また、気をつけたいのは、主要栄養素の摂取目標は達成していても、それがヘルシーな食べ物から摂れていないこともあるということ。

もしこのゾーンダイエットの割合に沿って食事をしようと思っているなら、管理栄養士に一度相談して、必要な栄養素を不必要にカットしていたり、主要栄養素は入っているが健康的ではない食べ物を食べていたりないかを確認してみてから取り組んでみて。

※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text:Ashley Mateo Translation:Noriko Yanagisawa Photo:Getty Images