「ソトコト サファリマラソン」はハーフマラソンとジュニアの部の2部門。ジュニアの部は一般の子どもたちだけでなく、靴を贈ったキベラの子どもたちや施設の子どもたちも招待している。
「今年で10年目なのですが、年を重ねるごとに、楽しく、命を守るだけでなく、靴を得ることによってもっと速く走りたいという子どもたちの夢を育むことができています。キベラの中でランニングチームができたり、子どもたちが一生懸命走っているのを見て、周りの親たちが200人から300人集まって清掃活動をすることもありました」
「大会を始めて4年目には、スラムから出場した子が2位、4位、7位と入賞を果たしたんです。するとメディアに取り上げられ、それを見て他の子どもたちも“自分たちも頑張れるんじゃないか”と夢がどんどん伝染していったんです」
「最初から携わっている子どもたちも、“尚子は1年に1回しか来られないけど、僕が365日、周りの子どもたちに走ることの楽しさや夢を持つことの大切さを伝えていくね”と言ってくれました。一人一人が前を向き、考え、同じ気持ちで前進するということが根付いてきたと思います」
初めて大会を開催した年に高橋さんに「陸上選手になりたい」と語っていた少年は、「自分には両親がいるけれど、両親がいない子もいるのだから、将来はそういう子どもたちを支援できるようになりたい」と言っていた。その後、病気で父を亡くし、母も火事を起こして彼自身が施設に入ることになってしまったという。
「そんな辛い状況なのに、“僕はお父さん、お母さんと離れ離れになってしまったけど、僕には靴がある。靴にはたくさんの日本の人たちの思いがこめられているから、陸上はやめないよ。友達をたくさん作って前を向いていくからね”と私に話してくれたんです。靴を贈る日本の子どもたちは日本語でメッセージを書いて靴に入れます。するとあちらの子どもたちはなんて書いてあるの?と聞いてくるんです。日本の子供たちの“ケニヤの子達の役にたちたい”という思いが込められた靴だから、彼らの力になっている。2年目に同じところに行ったら、親指も中指も穴が開くほどに使ってくれていて、ものを大切にする思いは、私たちが彼らから学ぶことのひとつだと実感しました。与えるばかりがチャリティじゃないんです」
スタートして10年間で届けた靴は93000足。1足を送るのにかかる費用は2000円以上と決して安くはない。それでも企業や会員のみなさまからの支援を受けて続けている。