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くしゃみが出そう。でも、通勤電車の中だからくしゃみをしたくない……。だからといって我慢するのは、英国の医療ジャーナルに掲載された論文からすると名案ではない模様。くしゃみを我慢することによる、思わぬトラブルとは? ドクターの見解とくしゃみを止めようとした男性の悲劇をオーストラリア版ウィメンズヘルスからご紹介!

とある34歳の男性の話をしよう。くしゃみが迫ってくるのを感じながらも、鼻水をまき散らすのが嫌だった彼は、指先で鼻をつまんで口も閉じた。
これで確かにくしゃみは止まった。しかし直後に彼は、首の何かがポンと外れるような音を聞き、激痛に襲われた。喉が腫れ、うまく唾が飲み込めなくなったかと思いきや声が出なくなり、緊急治療室へ駆け込んだのだ。

診察にあたった医師は、彼の首と胸郭の下の方でポンとかパンとかいう音がすることに気付く。診断結果は、「突発性咽頭破裂による頸部皮下気腫および縦隔気腫」。

くしゃみを我慢したことで喉に小さな穴が開き、そこから胸の組織や筋肉に空気が入ったことになる。くしゃみを我慢すると、普通にくしゃみをした時の最大24倍の圧力が喉にかかってしまうそう!

ハーバード・メディカルスクールの耳鼻咽喉学助教授、アフマド・R・セダガート医学博士は、「この男性の場合、気道の最も弱い部分が偶然にも喉の裏にあり、そこに穴が開いたために気道内にたまった空気が逃げて行った」 と説明している。

セダガート博士によれば、肺の外に空気があると、胸の臓器に余分な圧力がかかり、大きな問題となることもある。

「(肺の外に空気があると)肺が拡張するスペースがなくなるので、呼吸が困難になる。心臓に血液がたまりにくくなるため、血行が悪くなることもあるだろう」。
でも、首や胸に空気が入ることで一番怖いのは感染症。「首や胸に入る外界の空気は、大量の細菌を連れてくる。首と胸、縦隔が感染症にかかると、たちまち命を落とすことも」 とセダガート博士は続ける。

この男性は、感染症を予防する抗生物質と、管を通した食事を一週間続けてから退院し、2カ月後には完全に回復した様子を見せた。

この患者のケースは、くしゃみを我慢しないべき理由を示す実例だ。非常にレアではあるものの、くしゃみを我慢した先に深刻であり、時に致命的な結果が待ち受けていることもある。同論文によればこの男性のように喉に穴が開いたり、胸に空気がたまったりする他にも、脳動脈瘤が破裂する可能性さえあるそう。

だけど、みんながみんな、心配する必要はあるんだろうか?

耳鼻科医のデール・アマンダ・タイラーは、「鼓膜が薄い人、鼻(鼻腔)と眼窩や脳の間にある壁が通常より薄い人、またはこの男性のように気道消化管の上部に弱い部分がある人は特に注意が必要だ。それが強い気圧で破れ、危険なことになりかねない」と語る。

こうした体の弱点を知らずにいるとくしゃみを我慢したことで、鼓膜が破れたり目や鼻の血管が破裂する、かなり不快な経験をすることになるかもしれない。だから、くしゃみを我慢しようとしないこと。飲み込みたくても、鼻腔と口を同時に閉じることだけはしないで、とタイラー博士は呼び掛ける。

「鼻をつまんで抑えるのはいいけれど、くしゃみがせきとして出るように口は開けたままにして」

※この記事は当初、アメリカ版メンズヘルスに掲載されました。

※この記事は、オーストラリア版ウィメンズヘルスから翻訳されました。



Text: Emily ShifferTranslation: Ai Igamoto Photo: Getty Images

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Nana Fukasawa
ウィメンズヘルス・エディター

2018年に「ウィメンズへルス」編集部にジョイン。アシスタントを経て、エディターとして美容、フード、ダイエットなどの記事を担当。流行りそうなヘルシーキーワードをいち早くキャッチすることを心がけている。CBDや筋膜リリース、アーユルヴェーダ、植物療法を学ぶ、自他共に認める“セルフケア マニア”。2023年初めてのハーフマラソンに挑戦。