運動している女性は貧血に注意!
トレーニングも体調も、不調なのはこのせいかも……?
トレーニングも体調も、不調なのはこのせいかも……?
意外に思えるかもしれないけれど、実は運動している女性ほど鉄分が不足している可能性があるそう。博士課程に通う27歳のシャーロット・ジェリーマンも鉄欠乏性貧血になった一人。彼女の体験を聞いてみた。
シャーロットは普段からトライアスロンクラブでクロスカントリーを10キロ走るだけでなく、50分のランも加えるなど、定期的に走っていた。でも、1年ほど前からトレーニングをつらく感じるように。
「ボーイフレンドと一緒に40キロずつ走るリレーマラソンにエントリーしたので、トレーニングをもっとがんばらなくてはいけなくなった」と話す。
「数ヶ月すると、脚がものすごく重く感じて、肺がついていけなくなってしまった。今までできた強度やスピードよりもずっと軽い運動でも苦しくなって、普段より多く寝ないといけないように」。
血液検査をするとシャーロットは鉄欠乏性貧血と診断された。世界保健機関(WHO)によると、15歳から50歳の女性のうち12パーセントから15パーセントの人がこの病気で、よくみられる栄養疾患の一つだそう。
「自分のことをずっと健康的だと思っていた」とシャーロットは言う。「バランスの取れた食事をしていたので、必要な栄養はちゃんと食事から摂れていると思っていたの。今までに何か問題があったこともないし、突然のことで本当にびっくりした」
息苦しさや爪がボロボロになる、集中できなくなる、寒気を感じる、髪の毛が抜けるなどの分かりやすい症状もあるが、実は一見健康的な女性が最も貧血のリスクがあるそう。ダイエットや重い生理が鉄欠乏の原因であることは知られている一方で、運動も鉄を失わせる要因に。
でも2016年の研究によると、症状があった女性アスリート(エリートとノンエリート含む)のうち22パーセントしか実際に治療を受けなかったという。症状が問題だと感じなかったか、症状があってもうまくつきあう方法を見つけたからではないか、というのが研究の見解。
これは、鉄欠乏は複数の要因によって起きる進行性のものだからと考えられる。つまり、気付かないうちに進行してしまうから。誰もが、ワークアウトの後に疲れ切った経験も、朝起きられなくて何度も目覚ましのスヌーズを止めた経験はあるはず。だから、症状があってもいつものことだと思ってしまいがち。
シャーロットの場合も限界まできて初めて治療したと言う。
「振り返ると、本当に色々重なっていたこともある。一年くらい前から生理が重くなり、最近ベジタリアンになったばかりで、赤身のお肉から鉄分を摂らなくなっていたと思う。そこに、ハードなトレーニングが加わって限界を超えてしまった」
では、なぜシャーロットのようにトレーニングする鉄欠乏性貧血は女性に多いのか。
Text:Victoria Woodhall Translation:Noriko Yanagisawa Photo:Getty Images
鉄分が失われる仕組み
鉄は細胞のエネルギーに欠かせないもので、免疫システムや酸素を体内で運ぶ役割をするヘモグロビンの生成にかかわっている。
「鉄欠乏性貧血の場合、酸素を運べる量が少ないので、パフォーマンスに影響し、運動をより困難に感じる」とリチャード・バーデン医師。バーデン医師はイギリスでオリンピック選手やパラリンピック選手を指導し、English Institute of Sportの学長も務めている。
鉄欠乏性貧血の場合、病気になりやすく、さらに慢性的に疲れた状態でトレーニングをするとケガをしやすくなる。しかし、ここでむずかしいのは結果を出すのに鉄分は必要だが、その結果を出すトレーニングで鉄分が失われていること。トレーニングが増えるにつれて赤血球のもとを作るために必要な鉄分は増えるが、汗や、運動によってかかとに衝撃を受けることで鉄分は失われていく。これは、ランニングやジャンプによって血液細胞が壊されることで、赤血球のターンオーバーが早くなるため。
ランニングは体重の2.5倍の力が足の裏にかかる、とパーソナルトレーナーで栄養士のサラ・オニールは話す。彼女自身も10代の頃に鉄欠乏性貧血に悩まされたそう。「アスリートは鉄分が必要な上に失われる分も多いので、通常よりも1.3倍から1.7倍多く必要」
運動後の痛みも関係があるそう。「あの痛みは、筋肉の繊維が断裂するせい」とUniversity College Londonの血管外科の教授でありThe Iron Clinicの創業者、トービー・リチャーズ。
「この筋肉の損傷は炎症を起こす。競技後にアスリートがみんな氷で冷やすのはこのため。そして、炎症は体内における鉄分の吸収をその後数時間も妨げてしまう」
だから、なくなった鉄分の補給をする前に、まずは冷やすか、できるのなら氷風呂で炎症を抑えて。
鉄欠乏とパフォーマンスの関係
リチャーズ教授とUniversity College Londonのチームは、鉄欠乏性貧血が女性のスポーツのパフォーマンスにどのくらい影響するのかを調べてみた。この実験では、鉄欠乏のランナーの有酸素の状態を、点滴を使って鉄分の補給をする前に計測し、その後数日間休ませるというもの。
実験の詳細な結果はまだ発表されていないが、中間の結果も十分衝撃的。酸素消費量の最高の値は、ロンドン在住の32歳の理学療法士、アイリーシュ・トーメイで彼女の最大有酸素的作業量は、鉄分を補給すると12パーセントも改善したそう。治療の2週間後、彼女はロンドンマラソンで、自己最高記録を更新したという。
「いつも疲れていてきちんとトレーニングできていなかったので、自己ベストを更新できてとてもうれしい」とアシュリーは話す。
「チームメートも数人この実験に参加していて……私たちから、トレーニングをしている人に向けてのメッセージは、記録が伸びないようだったら一度鉄分の値をチェックしてみて」
シャーロットも鉄分の静脈内投与を受けることで結果が改善。「投与後走ったら別人のようで、今までの過去最高に近い走りができた」と話す。
ただし、この治療法はイギリスでは自費診療で治療費も高いため全員が取れる選択ではないそう。
もし、鉄欠乏性貧血を疑うなら、まずはタンパクの一種で貯蔵鉄の量を調べることができるフェリチンと酸素を運ぶヘモグロビンの値を検査して。もし値が低ければ食生活の改善や、鉄剤を処方されるかもしれない。ただ、これが一番の解決法じゃないことも。
「3分の1の人は、鉄剤が合わないため、下痢や腹痛などの症状を訴える」とリチャーズ教授。
2014年の調査では、50パーセントもの人が、鉄剤を飲まなくなり症状を放置してしまうと言う。さらに最新の調査では、鉄剤が腸内の悪玉の菌を増やしてしまうことも分かった。
お腹にやさしいものも開発されつつあるが、まだ食生活の改善が選ばれやすい。
仕事が忙しくきちんとした食生活をしていない人や、運動しすぎの人を見ているサラにとって、一番はじめの問診票と10日分の食時記録で栄養失調を見分けるのは簡単なこと。
「鉄欠乏性貧血が疑われるときは、まず血液検査をすることをすすめている。これは効果的にトレーニングして、健康でいるためにも大切なこと」
「まず、最も身体に吸収されやすい形のヘム鉄を含む、脂肪の少ない肉と魚をしっかり食べて。ベジタリアンの人は、肉を食べる人の1.8倍の鉄分が必要。これは食物由来のものは吸収されにくいため。さらにベジタリアンの人には吸収を高めるためにビタミンCをたくさん摂るようにすすめている」
一方でリチャーズ教授は、入会時に鉄欠乏性貧血の注意を促すようスポーツジムに働きかけている。「データでは、生理時の出血が重い人のうち半数は、鉄欠乏なので、スポーツクラブ側からも生理が重い人に対しては一度検査をすることを促してほしい」と話す。
こんな症状がないかチェック
●疲労
●頭痛
●イライラ
●青白い
●息が上がる
●心臓がバクバクする
●手足が冷たい
●すぐ病気になる
●めまい
●集中できない
●貧乏ゆすり
●舌が痛い
●口のまわりが切れる
●毛が抜ける
http://www.womenshealthmag.co.uk/nutrition/recipes/6519/dairy-free-cheesecake-recipe
※この記事は、海外のサイトで掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。