引き締まって、しなやかな体。リオオリンピックで注目を集めたブラジルの女性たちが、世界で一番目を引くのはなぜだろう? その秘密に迫る!
「美しいオリンピック」を開催しようというブラジルの熱い情熱に唯一、肩を並べるのは“「美しい体への探求心」。そう、この国は多くの『ヴィクトリアズ・シークレット』のモデルを輩出している。
スーパーモデルのジゼルやアドリアナ、アレッサンドリア。彼女たちが美人を生み出す貴重な遺伝子を引き継いでいるのは確かだけど、究極の美ボディを追求するブラジル人ならではの美意識はどんなものだろうか。
美しく磨き上げられ、アマゾネスのように引き締まったボディラインの美女たちが、リオデジャネイロ南部のイパネマ海岸を見事に闊歩している。これは、イギリス北西部のリゾート地のブラックプールに、欧米の未婚女性のパーティーである「ヘンパーティー」に、飲んだくれが集うのと同じくらい“当たり前”の光景だとか。
「ブラジルは一年中、ビキニシーズンなの」 と語るのはブラジル人の起業家、クリスティアーナ・アルカンゲリ。コラーゲンドリンクとスナックで有名な「Beauty’In」の仕掛人で、ブラジル版カレン・ブラディ……スマートでリッチでゴージャスな女性だ。
「私たちは独特の方法で体をいたわるの。ブラジルの女性は、セクシーに見せることを恥じたりしない。ここでは、見栄を張るのが悪いことではないのよ。
美しくありたいと認め、そのために頑張る覚悟をするのは恥ずかしいことじゃないの」。彼女たちの美容や健康の秘訣は、ぜひ学びたい。
2014年以降、多くの女性の合言葉になっている#strongnotskinny (スキニーではなくストロング) は、長年にわたりブラジルのボディイメージを扇動してきたハッシュタグ。
スキニーではなくストロング
アルカンゲリによると、「ブラジルの女性はスキニーに憧れたことがない」。スキニーはセクシーじゃないし、ブラジル人のセクシーな魅力を定義するものでもないのだとか。
「ブラジルには今でも男性優位の文化が残っており、ブラジル人女性は女性たちにではなく、男性にとって美しくあってほしいと願っているのよ」
だから女性らしい曲線的なボディラインは残しつつも、体をできるだけ引き締めるようとするのだとか。
ここで、彼女たちの運動習慣を見てみよう。ジムの会費は安く、レベルの高いジムでさえ月額3,000円前後。ビーチなどの公共エリアには、無料で使える運動器具が設置されていることも多いそう。
大きなお尻が命のこの国では、ジムにヒップエクサイズ専用エリアも用意されているという。
臀筋を鍛えるキックバックマシンは最も人気のある器具の一つで、女性は筋トレエリアで完全にくつろいでいる。
ビキニデザイナーとしてブラジルに数年間滞在したルース・ファーガソンは、「ブラジルの女性は、スキニーというよりも、むしろ健康で強い体を目指している」 と話す。
「たくましいね、と女性に言うのはいつものこと。イギリスでは無礼だと思われるかもしれないけれど、ブラジルでは純粋な誉め言葉」
でも彼女たちの体は、スクワットやブラジル名物のエンパナーダだけでは作られない。ブラジル人の食生活では、“何を食べるか”だけではなく、“どう食べるか”も非常に重要だ。
ブラジル人の食生活
食事の時間はブラジルの一大イベント。片手でエクセルをいじりながら、サンドイッチを食べる? そんなものでは済まされない。
昼食時間は“基本的人権”で、一日の中でもメインの食事と多くの人が考えている。アルカンゲリの話では、「食べる時間をしっかり取るので、インスタント食品の需要が少なく、とてもナチュラルな食事をする。加工食品も少ない」 そう。
仕事から遅く帰ってきて、ワインを飲みながらチェダーチーズのビスケットをつまむのが一般的なイギリスとはちょっと違い、ブラジルでは中流階級にもたいていメイドがいる。
「作ってくれる人がいた方がヘルシーにな食事になるわ。食事を作るのも楽になるのは間違いない」 と、アルカンゲリも首を縦に振る。
「ジムから帰ってくる私のために、シェフが卵白のオムレツとサラダを作っておいてくれるのよ」
ブラジルの食品産業が「体を大切にする文化」の生みの親であることは、家を一歩出ればすぐに分かる。気候のおかげで、フルーツと野菜が豊富に採れて値段も安い。
アマゾン盆地を原産とするスーパーフードのアサイーは、欧米のスーパーマーケットに並ぶずっと前からブラジルでは当たり前の食材だったらしい。
さらに、料理の重さの分だけ支払うサラダバーは、自制心を強くするのに役立っている。
リオデジャネイロでは、シドニーやロサンゼルスなどの世界の他のビーチ都市と同じように、公衆の場でもセミヌードになる機会がある。セミヌードで余暇のほとんどを過ごすブラジル人のニーズに基づき、 ヘルシーな食事の選択肢と最先端のフィットネストレンドが作られているのだ。
それらが見栄から生まれたものでも、結果的には健康が手に入るみたい。
「ブラジル人女性は食事を制限しないけど、ヘルシーな選択肢を選ぶ努力はしている」 と語るのは、スポーツ栄養士のポーラ・ダビッドソン。
「私が担当する女性クライアントのほとんどは卵、ソフトで非常に軽いホワイトチーズであるミナスチーズ、ヨーグルト、赤肉、鶏肉、魚、シーフードといった脂肪分の少ないタンパク質を食生活のベースにしているのよ」
ブラジル人の飲酒
パーティーは大好きでも、彼女たちは飲みすぎにはならない。ブラジル人が伝統的なカクテル、カイピリーニャを発明したのは事実だけれど、ほろ酔いはしても泥酔はしないのがブラジルの女性。サンパウロ出身の29歳、フェルナンダ・セルソンは 「女性が手がつけられないほど酔うのはまれだわ」 と語る。
「とても魅力に欠けることだと思われているから……。何でもありのカーニバル以外ではね!」
リオデジャネイロのバー直伝のレシピでは、カイピリーニャを甘味料入りか砂糖抜きで頼み、ブラジル原産の蒸留酒カシャッサはやめて、ウォッカか酒にチェンジする。これで350キロカロリーもカットできる 。これで二日酔いも防げるならいいのに、ね。
ちなみにブラジリアンは、アルコールの力を借りなくたって自信満々。そう育てられており、男女ともに生まれつきの自信家。
「だからブラジル人は目立つんだと思う」 と語るのは、人気パーソナルトレーナーのレアンドロ・カルバリョ。「僕の父は70代だけど、今でもスピードのスイムウエアを穿いて泳いでいる。体を人に見せるのが当たり前の環境で育つから、若いうちからそれが平気になるんだ」
ブラジル人の「美容整形文化」
人々を虜にするブラジル人の美しさ。しかし、その美を支える“明らかな矛盾”がある。ブラジルは、体に自信のある国なのに、脂肪注入の本家でもあるのだとか。
ブラジルはアメリカに次ぎ、世界で2番目に整形率が高い国。毎年150万人が美容整形手術を受けると推定されていて、そのうちのなんと38パーセントは19~35歳の女性。
この国の化粧品産業は世界で3番目に大きく、現在第2位の日本を抜かす勢いだ。毎週のマニキュア、ペディキュア、ワックスは当たり前で、ケミカルピーリングなどの施術も歯医者に行くのと同じくらい一般的。
ケロッとした顔で肌を大々的にさらけ出す人々が、ここまで完璧さを追い求める必要があるのだろうか?
『Pretty Modern: Beauty, Sex And Plastic Surgery In Brazil』の著者、アレクサンダー・エドモンズは、こう説明している。
「見た目のためなら何でもありなので、美容外科手術が標準化した」
そう、ブラジルにおける整形は、自尊心を高める習慣の一部として見られるようになったのだとか。
ブラジルで最もパワフルな女性、ディルマ・ルセフ大統領でさえ、2010年の選挙戦の勝利前にまぶたを含む大胆な整形をしている。
エドモンズいわく、「アメリカやイギリスでは政治家の美容整形手術が、見栄っ張りであることの証や不誠実であることのサインとして捉えられるかもしれないけれど、ブラジルでは女性が自己研磨しているだけの話とされる」
実際、ブラジルでは美容整形手術が国民全員に与えられた“権利”だと思われている。格安、あるいは無料でサービスを提供するクリニックもあるが、これは “美容整形手術の最高権威” と言われる外科医のイヴォ・ピタンガイの功績によるところが大きい。
リオデジャネイロにある彼の病院では、低収入層を対象としたヒップリフトなどの施術が年間1,800件も行われているそう。
もちろん、整形が大好きだからといって、ブラジル人女性の魅力が半減するわけではない。
ブラジリアン美ボディを手にするまでの道のりは長いけれど、頑張ってスクワットしよう!
Text: Clemmy Manzo Translation: Ai Igamoto Photo: Getty Images
2018年に「ウィメンズへルス」編集部にジョイン。アシスタントを経て、エディターとして美容、フード、ダイエットなどの記事を担当。流行りそうなヘルシーキーワードをいち早くキャッチすることを心がけている。CBDや筋膜リリース、アーユルヴェーダ、植物療法を学ぶ、自他共に認める“セルフケア マニア”。2023年初めてのハーフマラソンに挑戦。