悪いことばかりじゃない? ピルで生理を“止める”と体に起こること

06 May 2018

悪いことばかりじゃない? ピルで生理を“止める”と体に起こること

オーストラリアのテヴァ・ファルマ有限会社による新研究の対象になった女性の21パーセントは、月経を止めるのに特化した避妊法が欲しいと言っているそう。

自然な女性って?

生理が来て嬉しいという女性は少ないけれど、毎月毎月耐えていくのが自然だという風潮は根強い。妊娠していないというシグナルである以上に、健康な証のはずでは?

生理は強力な健康のシグナルだと語るのは、婦人科コンサルトのウルリケ・ザウアー博士。 

「妊娠を除けば、生理が止まるのは食事不足や過度な運動が主な原因。避妊薬を服用していない女性が生理を迎えていないなら、子宮内膜が変質して、深刻な問題が起こっているかもしれない」とのこと。南カルフォルニア大学で社会研究・ジェンダー研究の助教授を務めるケイティ・アン・ハッソンも、月経が心を落ち着けてくれるという意見に賛成。

「生理が来ることが、自分の女性らしさの重要な一部だとしている女性もいる」らしい。

けれど、実は定期的に生理が来るほうが不自然だとしたらどうだろう? ザウアー博士によれば、私たちの体は思春期を迎えた後はほぼ常に妊娠と授乳をできるように進化している。数世紀前の女性たちはめったに月経を迎えず、ほとんど更年期の前に死んでしまったという。確かに、現代の女性は一生の中でその頃の四倍も多く生理を経験するとの研究結果が出ている。

 

そもそも「自然」とはなんだろう? ピルを飲んでいる人が服用を休む時に訪れる消退出血は、婦人科医ケイト・ガスリー博士によればむしろ不自然なもの。ピルの人工ホルモンがなくなったのに反応して子宮内膜が崩れているのだ。対して自然な生理は、妊娠していないときのホルモンレベルの変化に子宮が反応して起こるもの。

「違う種類のピルを同時服用すれば、そのうち内膜が剥がれなくてはいけない厚さに達して、『破綻経血』と呼ばれる血が出てきます。これは人によって数週間から数ヶ月かかるもので、体が慣れてくると回数が減ってくるものです」とのこと。筆者も、2パック分の避妊薬しか飲まないうちに出血していた頃から、半年過ぎないと何も起こらない身体に変化している。しかし、異様な出血が起こっている場合は病院の検診で他に異変が無いか確かめるべきだという。

 

さらに、ガスリー博士によれば、ピルを飲んでいる時の経血は、妊娠していないサインとは限らないらしい。服用していない場合と同じく、妊娠中に生理がくる女性もいるので当てにならない。消退出血しない原因には、妊娠の他にも破綻経血を起こすほどホルモンが減少していない場合も挙げられる。

 

時を巻き戻してみると

では、ピルを飲みながら毎月生理が来ることに安心できないなら、飲む意味はあるの?

「歴史的な伝統に根付いているからでしょうね」と婦人科コンサルタントのジェーン・ディクソン博士は語る。「ピルの開発者たちは月に七日間服用しない期間を設けたけれど、それも医学的には必要ないもの。月経を真似ることで、教会などの宗教団体に受け入れられやすくなると思ったのでは」

婦人科医であり敬虔なカトリック教徒でもあったジョン・ロックは、生物学者グレゴリー・グッドウィン・ピンカスと共に、なるべく“普通に”経血が出るようにした。これは、アメリカ食品医薬品局の承認を確実に得るため。この試みは成功し、1957年には鎮痛剤、1960年には避妊薬として認定された。

 

フェミニズムが過去最高に高まっている今も、毎月生理に耐えている女性は少なくない。けれど、イタリアで行われている研究によると、生理痛や体調不良による欠勤がなくなれば給与格差が15パーセント小さくなるらしい。イギリスYouGovの調査によると女性の52パーセントが「生理が勤務に影響を及ぼしている」と答え、その三分の一は生理を理由に病欠した経験があると答えた。また、生理は女の子が学校を休む主な理由の一つでもある。

 

「生理を抑えるということは、気分変動、頭痛、膨張感、PMS、そして日常への支障を免れるということです。スポーツや試験に臨む多くの女性の足を引っ張る症状ですからね。更に、子宮内膜症にかかっている人は生理を抑えることでとても楽になれます」とガスリー博士は言う。私も、生理による睡眠への支障や、職場のトイレにこもる時間が作業効率の低下になっているのに気づいた。


安全性は?

安全性は?

けれど、ピルが女性の生き方を大幅に変えてから57年が経った今も、長期的な安全性に対する懸念は残っている。ザウアー博士は、ホルモン性の避妊薬の功罪を検討するように呼びかけている。2014年の研究では、経口避妊薬を複数使用すると乳がんの発生率が50パーセント上がり、一方で2007年には子宮頚がんのリスクが倍増するという研究結果が『ランセット』誌に掲載されている。

 

これは心配の理由になる? ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの生殖保健学名誉教授のジョン・ギルボールは、「服用時には乳がんのリスクが上がるものの、服用をやめればそのリスクはなくなる。10年後、あるいは50歳、60歳になっても残留効果があるわけではない。ピルを飲む人の多くは35歳以下で乳がんの発生率はもともと低いため、50パーセントの発生率増加も決して多くはない」

 

現在生産されているピルに含まれているホルモンの量は、昔に比べてだいぶ減っている。ガスリー博士によれば、発明当初のピルはエストロゲン100ミリグラムが含まれていたので、乳がんとの関連性の研究はそれに基づいていたという。今は20ミリグラムに減少しているので、これからの研究ではさらに関連性が低いか、あるいはまるでないことが発見されるかもしれない」とのこと。また、エストロゲン量の減少は血餅が発生するリスクも減るということ。

 

むしろ経口避妊薬が、がんを防ぐかもしれない可能性もある。「パートナーがコンドームを利用して避妊している女性より、ピルを飲んでいる女性のほうが、卵巣がん、子宮内膜がん、大腸・直腸がんのリスクを使用後10年間まで抑えている」とギルボールは話す。2008年には、『ランセット』誌に、経口避妊薬がおよそ10万人の女性を卵巣がんから救ったかもしれないという研究が発表された。

 

それも、他の部位でがんが発生する確率よりもはるかに大きな数字。ディクソン博士も、「肥満や喫煙、遺伝などの因子に比べれば、ピルの摂取が健康に及ぼす影響は微々たるもの」としている。

  

さらに、去年はピルが精神的な副作用を持つかもしれないという研究がニュースになった。身体的な影響に加えて、うつ病の発生率を23パーセント引き上げているというもの。

 

「少数の人には、気分の落ち込みや極端な気分変動を起こしうります。しかしうつ病は非常に多くの人がかかる病気なので、その研究の対象となった経口避妊薬を使ううつ病患者の中で、ピルがうつの原因だったのは123人に23人だけ。他の100人は使っていなくてもうつ病と診断された可能性が高い」とのこと。興味深い。

 

オウ、ベイビー!

ところで、卵巣の機能を停止させると、出産にどう影響してくるの? 24歳の私は今すぐ子供が欲しいわけではないけれど、時々考えることでもある。

 

産婦人科医シャズィア・マリク博士いわく、「ピルの服用で不妊症を起こすことはないものの、もともとのサイクルがいつ戻るかはわからない」とのこと。赤ちゃんを作りたければ、半年前からピルや子宮内避妊器具をやめてコンドームに避妊法を切り替え、普通の排卵周期を取り戻す必要があるという。

 

しかし、全ての女性にそこまで長い時間が必要なわけではない。「注射は例外的に効果が切れるまで一年ほどかかりるけれど、多くの避妊具は使用をやめるとすぐに元の月経周期が戻る」とギルボール。

 

「むしろ2002年の研究では、ピルを定期的に服用してからやめた女性の方が、やめた後の半年間、未使用の女性に比べて妊娠する割合が高かったそう」

 

今妊娠を考えていないなら、別種のピルの併用が効果的。「ピルを飲んでいるときはいつも卵巣が眠っている状態だけれども、7日経って飲むのをやめると、卵巣が目を覚まして排卵を始める」とディクソン博士。毎日飲めば数週間、数ヶ月間卵巣が眠る訳である。服用の再開を忘れて妊娠する可能性も低くなる。これを踏まえて、服用を休むのも自由だとベイトソンはいう。経血が流れた方が安心する女性もいるのである。

 

また、従来の7日より短い休止期間を設けても良いとのこと。最初の週の冒頭で飲み忘れると、妊娠のリスクが発生する。なので、飲まない期間を短くする、あるいは無くすのは理にかなっている。複数のピルを飲み、開ける間を4日以下にすると、子宮内膜が薄くなり消退出血を起こさないのも得になりうるそうだ。

 

これからどうする?

生理の悩みを重くしている一因は、生理に厳しい社会。ハッソンは、「文化的に、生理は汚くて恥ずかしいことなので、出来るだけ避けたほうがいいという考え方が私達の中にはある。経血の状態を細かくオープンに話すことがないので、健康的な基準が分からない。ホルモンを使って生理を止めるのは、自分でもどんな生理が健康なのか分からなくなること」と述べる。ザウアー博士も、避妊や鎮痛の手段として生理を止めるのは十分理由になっているものの、なんとなく止めるのは良くないとしている。

 

とはいえ、避妊薬が反映し出しているのは生理のないライフスタイル。「医師として、ピルを始めた女性には『生理は止められる』とより積極的に伝えるようになっている」とベイトソンは語る。「三ヶ月、別々の種類のピルを91個まで飲める新しいピルも登場している。うち7日間は、服用しないのではなくエストロゲンの量を減らす製品。一つのパックで複数のピルを飲めるので、楽になる女性もいる」。今飲んでいるピルを続けながら別のものも使いたいなら、必ず医師に相談して、処方しているピルに何が一番合うか確かめよう。

 

男性と対等な立場に立つのが理想なら、生理痛を気にしなくて良くなるのが職場で追いつくきっかけに、そして鎮痛剤や生理用品以外にお金を使える機会になるかもしれない。

 

「女性は自分の人生を自由にコントロールできるべき。生理に合わせるのではなく、自分にあった生理を」とガスリー博士。白黒つけがたい問題ながら、以前は四週間おきに悩まされていた出勤が苦なくでき、プールの季節も(痩せたいという他には)心配なく迎えられている私には、もう結論が出ている。

 

※この記事は、オーストラリア版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text:Team WH Translation:Emi Ito Photo:Getty Images

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