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サスティナブルシティとの呼び声高いサンフランシスコや北欧の街では、ゼロウェイストなライフスタイルが幅広い世代の人々に浸透している。私たちはどうだろう? ファッションや飲食業界でサスティナブルな取り組みがトレンドになっていることをニュースで知っている人は多いものの、実生活に取り入れている人はまだまだ少ない印象。食材や日用品における過剰包装が問題視されている日本。今回は、私たちが日常的に触れる機会が多い食べ物・飲み物・洗剤において、 “量り売り”を導入しているお店に話を聞いてみた。彼らと消費者の良好な関係とは一体?

エコ意識を持っている人が少ないと言われがちな日本人。だけどその昔、お酒は樽から好きな分だけ買っていたし、醤油や豆腐は量り売りで手に入れるのが主流だったのだから、量り売りには馴染みがあるはず。

量り売りのイメージを消費者に聞いてみると……
「運搬がめんどう」「量り売りのお店が近所にない」「容器を持ってない」

一方、実際に試したことがある人の反応は……
「安く買える」「少量をまず試せるから、本当に気に入ったものを買える」「使いきれずに捨ててしまうことが減った」「容器は自宅にあるもので代用できるところがほとんど」「子どもは買うプロセスが楽しいみたい」と、ポジティブな感想が続々。

その魅力をもっと理解するべく、パッケージフリー実施店の実状を教えてくれたのはこの3店舗。元住吉に本店を構えるナッツやドライフルーツ、ドライベジタブルを扱う「バルクフーズ」(以下「バ」)、キッチンやランドリーなどの家庭用洗剤から赤ちゃんも使えるスキンケア商品をも取り扱う「エコストア」(以下「エ」)、アメリカでは主流のグロウラー(量り売り)販売で国内中心のクラフトビールを提供する「TAP & GROWLER」(以下「T」)。

Q1. 量り売りを始めた経緯は?

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バ:「始めようと思って始めたわけじゃなくて、量り売りは手段だったんです。家族全員病気がちだったので、お医者さんからは栄養価の高い食事を心がけるように言われていました。でも、1日だけいいものを食べても健康にはなれない。毎日少量でいいから継続することが一番の近道ですよね。それなのに、いわゆる“ヘルシーフード”と呼ばれる食材は高価なものが多い。高価だと続けられない。健康になりたいのに、金銭的事情が邪魔をして日々取り入れられないのはもったいないと思ったんです。だから、手に取りやすい価格にするために始めました。お客様が容器を持ってくれば、その分安くできるので

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エ:「エコ意識が高いニュージーランドで生まれたこのブランドは、無駄な容器削減を目的とした量り売りを、オークランドを始めとするさまざまな地域で普及させていきました。スーパーやドラッグストアでは当たり前のように、みんなが容器を持ってくる光景をみることができます。この販売方法を日本でも広めていくために、2016年の『エコストア』上陸とともに一部店舗で量り売り販売をスタートしました」

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T:「クラフトビールの醸造所をスタートアップするために、年間6000Lの販売実績をつくりたくてここを開店しました。よく見かけるビアパブではなく、日本ではまだ馴染みのない、再利用可能なビン容器で量り売りをする“グロウラー”販売を普及させたら、オンリーワンのお店になれると思いました」

Q2. 来店する人の何%が量り売りで購入する?

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バ:「店舗にもよりますが、一番多い新丸子店で全体の3割程度です」

エ:「洗剤で一番人気のファブリックソフナーは、売上げの約2割が量り売りです(直近6カ月の実績)」

T:「開店から1年が経過しましたが、売上げの約15%は量り売りで購入されます」

Q3. どのくらいお得に買えるの?

バ:「ものによるけど、パッケージされたものより3分の1くらいは安くなりますよ。例えば、スモークナッツ トレイルミックスは、100gあたり560円。パッケージされたものになると、700~800円が妥当な価格です。容器は、空き瓶に限らずジップロックや紙袋などでも代用可。新たに専用の容器を購入しなくても、身近にある品が食材を入れる容器に生まれ変わります」

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エ:「一つ例を挙げると、ランドリーリキッド(洗濯用液体洗剤)500mlの場合、容器入りで購入すると700円(税抜き)。一方、量り売りで購入した場合100mlあたり95円なので、同量買うと475円。約30%も安くなります

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T:「0.9Lで1,350円、1.8Lで1860円の専用の容器を販売しています。そこに各種値段の異なるクラフトビールを注ぐシステムなんですが、容器は水洗いをすれば何度でも使えるので、次回来店時にはぐっとお得になります

Q4. 量り売り販売において何か懸念点は?

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バ:「湿度が高い日本では、オープンスペースで食材を販売することは実は難しいんです。だから、徹底した品質管理が欠かせません」

エ:「大きな容器や棚を必要とするので、売り場スペースの確保が必要です。都内などの狭い店内だと、全商品を量り売り対象にするのは現実的でないかもしれません。さらに、日本ではまだ馴染みのない販売方法なので、スタッフが説明する際は人員をとられてしまいます。それらを改善するためにも、量り売りをもっと普及していきたいです」

T:「お土産やギフトに購入される方が多く、せっかくのリユースボトルがワンウェイになってしまっています。日常的に使ってくれる人をこれから増やします」

Q5. 今後どうやって量り売りを広めていく?

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バ:「他種のお店と一緒になって盛り上げることですかね。バルクフーズの店内では、自社製品だけでなくオリーブオイルや洗濯洗剤の量り売りも展開しています。これは、百貨店のイベントやポップアップで出会ういろんなジャンルの小売店と話すことから始まります。例えばこの洗濯洗剤も、イベントで向かいに出店していたクリーニング店の店主と話して、量り売りを提案したら、『ぜひやろう』ということになって。彼らの商品をうちで置くことにしました。こうして量り売りの価値を共感してもらい、広めていけたらと思います

エ:「現在は環境省主催のイベントにブースを出したり、キャンプ場に商品を置いたり、サスティナブルへの意識が高い方に量り売りを紹介しています。ゆくゆくは、スペースを確保できるローカルエリアにも売り場を設け、無理なく続けられるエコな取り組みの一つとして普及していきたいです」

T:「まずはこの店舗から、いろんな人にビールの量り売りの存在を発信していきたいですね。そのためにはやはり、清潔で美味しいビールを常に提供することが大切だと思っています」

エディターSAWAKOも量り売りにトライ!

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デザインが珍しいビンなどは「何かに使うかも」と保管しておくタイプのSAWAKO。でもお花を飾る以外になかなか活用できなくて処分を考えていたところ、意外にも都内近郊に手持ちの容器でも量り売りができるお店があることを知り実践。これまでは、思っていた使い心地と違うとか、買いすぎて食べきれないといった理由で捨ててしまうこともあった。いざ量り売りを試してみると、「少しだけ欲しい」「本当にいいものか見定めてからまとめて購入したい」、こうした要望を叶えてくれる仕組みだと実感。環境に配慮した生活に興味がある人はぜひ、お気に入りの容器を持って出かけてみて!

今回協力してくれたのは……

「バルクフーズ 元住吉店」
住所/神奈川県川崎市中原区木月祇園町7-13メゾンSK102号
TEL/044-750-7899
Instagram/@bulkfoods00

「エコストア アトレ恵比寿店」
住所/東京都渋谷区恵比寿南1-6 アトレ恵比寿西館2F
TEL/03-5475-8650
Instagram/@ecostore.jp

「TAP&GROWLER」
住所/東京都世田谷区北沢2-33-6飯嶋ビル1階
TEL/03-6416-8767
Instagram/@tapgrowler



Photo: Gettyimages

Headshot of Sawako Motegi
Sawako Motegi
コントリビューティング・エディター

スポーツファッション・サステナブルの記事を担当。山梨県の富士河口湖町へ移住し、オンラインを駆使して取材活動を行う。フェミニズムや環境問題などの時事ネタやニュース、人を掘るのが得意。  2020年までウィメンズヘルス編集部に在籍。