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映画『ブラック・パンサー』に出演するシデル・ノエルは、もともとオリンピック出場を目指していた陸上選手。彼女は、とある出来事をきっかけに一生をささげていた陸上が一切できなくなってしまった。その後、うつに陥った時期を乗り越え女優に転身したシデル。

ウィメンズヘルスでは、彼女が経験した周りから求められるボディイメージに対する葛藤、そしてそれでも自分に妥協しない方法に迫った。

「昔から女優になりたかったわけじゃないの」そう語るのは、シデル・ノエル。20代までは、速くなること、そしてできるだけ強くなることを目標と掲げていた彼女。

それもそうのはず、彼女は高校と大学を通じて陸上部に所属。プロとして、100メートルハードルや走り幅跳びの競技で戦い、夢はオリンピックへの出場だった。

ところがある日、疲労骨折をしてしまい、彼女の夢はあっけなく散ってしまった。ずっと目指していた未来が奪われてしまったことに絶望したシデル。この先どうしていいかもわからず、自分を見失ってしまった彼女は、一年ほど心を病んでしまった。ワークアウトもやめて、どんどん筋肉が失われていくばかり。でもそれをどうにかする心の余裕もなく、真っ暗な穴に放り込まれたまま、出口が見えない日々がずいぶんと続いたそう。

そこでシデルのマネージャーが彼女に勧めたのは、アスリートモデルへの道。早速試してみると、これを意外にも楽しく感じたシデル。なぜなら今までアスリートになるために注いできた努力とパッションを、今度はモデル、そして女優になる方向に当てられる、と考えるようになったから。再びアクティブに動き出すようになったシデル。ようやく光が見えてきたのもこのとき。

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とはいっても、キャリアを変えることは決して簡単なものではなかった。彼女は典型的なモデル体形でもなかったし、洋服のサイズもMよりも大きかったためにフィットネスモデルという肩書きを持ちつつも、事務所やクライアントには「太ももが大きすぎる」「筋肉が付きすぎ」などと言われる始末。

そこで彼女が気付いたのは、実際のスポーツ選手の体形と、スポーツブランドのウエアを着るモデルとして求められる体形には、大きなギャップがあるということ。自分の体を愛していたシデルは、このようにネガティブな言葉をぶつけられることにとても違和感を感じたと言う。だって、太ももに彼女は誇りを持っていたから。それに「スポーツ選手」という観点から見れば、彼女の太ももは力強く、たくましいものだった。

でも、自分が大好きな太もものせいで仕事が取れないことに気付くと、その見た目をどうしても気にしてしまった。自信が削られていく中、少しずつワークアウトをし始めると「筋肉を落とすため、ワークアウトをするのはいったんやめてほしい」と頼まれてしまい、彼女はまたもや負のスパイラルに陥ってしまった。

ワークアウトを控えることで体重は落とせたものの、仕事は思うように舞い込んでこなかった。今思えば、これはオーディションを受けるたびに「誰かになりきらないと」と思って挑んでいたからだったとか。彼女は「体重を落としてほしい」と言われ続けることで、自分の個性を否定されているような感覚に陥っていた。でも、そもそも体力を付けることが大好きな自分を誇りに思ってあげることができなければ、一生自信を取り戻すことなんてできない、と気付いたそう。

シデルは最終的に、周りの意見に振り回されないと自分の中で固く決心した。体形も妥協しないし、ワークアウトだってしたいときにする。それが不満なら、その人たちとは仕事をしなければいいだけの話。

奇遇にも、モデルの道を進み始めてからずっと欲しかった女優の仕事が舞い込んできたのも、ちょうどそのころだった。でも、これは決して偶然ではなかった。なぜならオファーされたのは、自分の個性を引き出せる警察官や、たくましい女性の役柄だったから。中でも最も大きかったのは、プロレスラーとして出演しているテレビ番組『GLOW:ゴージャス・レディ・オブ・レスリング』の仕事。自分の体形と今までの経歴に誇りを持つことができていなければ、この仕事は手に入らなかった、と彼女は言う。

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けがをしてからの自分の成長ぶりに胸を張って「誇りを持っている」と言えるようになったのは、本当に最近のことだそう。そして、女優業においても人生においても、「よし、もう大丈夫」と安心することは決してできないと思うようになったのも、けがを負ってから。「いつ何が起こるかわからないからこそ、与えられた機会には十分感謝して、ハングリー精神を忘れずに、何ごとにも意欲的に取り組んでいきたい」。揺るがない力と気持ちさえあれば、自分自身や体形を疑うことなく、向かうべき先に導かれると信じて彼女はこれからも歩み続ける。

※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。



Text: Sydelle Noel Translation: Miku Suzuki Photo: Getty Images