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モデル業界ではまだスキニー信仰が根強い。韓国人とイギリス人のハーフで、13歳の頃からモデルをしてきたミア・カングは、その悪影響を受けてきた一人。仕事柄、細くなることを第一に考えてきた彼女だけれど、最近になってようやく「体重なんかに振り回されない!」と心に決めたそう。長年に渡り、自分を極限まで追い込んできた彼女が、細くなることにこだわらなくなった理由とは?

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今やモデル兼ボクサーとして活躍するミア・カングは、実は生まれ育った香港でひどくいじめられた過去がある。その理由は、周りよりぽっちゃりしていたから。親には、「大人になれば余計な脂肪がとれていくから、心配しない方がいい」と言われるだけで、あまり真剣に取り合ってもらえなかった。転機は13歳のとき。医者に行った彼女は、「体重を落とさないと2型糖尿病になるリスクがある」と脅かされ、生活習慣を変えていかないと、と肌で感じたそう。

でも、当時まだ幼かったミアは、そもそも健康的に痩せる方法すらわからないまま、ただ食べるのをやめてしまったそう。そうして体重を以前の半分にまで落とし、モデルとしてスカウトされたのが彼女のキャリアの始まり。間違いなく不健康だし、決して安全とは呼べないけれど、彼女の減量計画が見事成功したことに変わりはなかった。

それから15年間は、モデルとして世界中を飛び回り、ありとあらゆるものに依存する日々が続いた。業界に完全にのめりこみ「細くなること」を第一に考える生活を送り始めた彼女は、自分が拒食症であり過食症であることにすら気付けずにいたとか。さらに、たばこ、睡眠薬、ダイエット薬、便秘薬、とスリムになるための薬に依存していくばかり……。

「周りが求める体、そして美しさを手に入れるために必死すぎて、自分の体をボロボロにしていることに気付けなかった」と振り返る彼女。何よりも自分の体に自信を持てず、不安な気持ちに駆られる毎日が最も辛かったそう。たとえ52キロでも、「仕事が入ってこなくなるかも」と心配する日々。モデルとしてのキャリアは順風満帆で、世間からは優雅なセレブ生活に見えていたかもしれないけれど、ミアの心は病んでいた。

2016年、長年体を痛めつけて、それでも「もっと痩せろ」と言われる生活に参り、ミアは全く機能しなくなってしまった。とにかくモデルの仕事から離れないと、と考えたミアは心身共にリセットするためにタイに向かった。そしてタイで過ごした時間こそが彼女の人生を変える大きなきっかけになった。

タイでミアが夢中になったスポーツは、なんとムエタイ。そこでムエタイについて深く学び、トレーニングに挑むため、そのままタイのファイトクラブキャンプに参加したそう。そしてたったの10日間だったはずの休暇が、最終的に9ヶ月にもなっていたとか。

健康的に体力をつけて、1日3回ご飯を食べること。今までは無縁だったごくごく普通の生活習慣をようやく日課にできたミア。若い頃は食べ過ぎるか、制限をしすぎるかのどちらかだった彼女が、ムエタイを通してやっと自分の体の声に耳を傾け、自分の体を大事にできるようになった。

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食べ物はただの燃料でもなければ、おなかを空かせた後のご褒美でもない。体力のつけ方も知って、体つきが変わり、体重が増えても、違和感なくそれを見守れるようになったミア。大変なプロセスではあったけれど、確実に強くなっていくのを肌身で感じられることに幸せを感じたそう。彼女にとって、それが何よりも大切な学びだった。

ミアはその後、モデルの仕事を再開するべく、ニューヨークに戻った。でも、今度はモデル業界の慣習を少しでも変えられるように、ヘルシーでアスレチックな体形を世界に発信していくつもりだと言う。「自分が幼い頃に、『こんなモデルがいればいいのに』と思い描いていたモデルになりたいと思っている」と彼女。世界が作り上げた「美の基準」を覆すことが、まさに彼女の今の目標。

彼女のサイズについて少し触れると、なんと生涯で洋服のサイズは14から0まで変動しているそう。現在のサイズは、8。これは大人になってから彼女の最も大きなサイズだけれど、今が一番幸せなのも確かな気持ち。「『もう一切不安はない!』なんて言い切れないけれど、不安とどう向き合っていくかはつかめてきたと思う」と話すミア。

そんなメンタルの強さを培うために最も大事だったのはトレーニングだった。そこで得た精神的な強さは、今や生きる上で実にいろいろな場面で生かされているそう。「もう体重で価値を測ることはやめたの。自分の嫌なところも愛せるようになったからね。欠点に振り回される日々はもうおしまい。これからは自分自身で欠点に対する考えを変えていくの」

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※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。



Text: Mia Kang/Kristin Canning Translation: Miku Suzuki Photo: Getty Images