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ようやく冷たい冬の風が吹くようになった今日この頃。防寒対策は万全?

体が冷えやすいこの季節、不調知らずの健康な体を作るには、実は体を温めておくことがとても大切。そこでウィメンズヘルスがご紹介するのは、6回にわたる冷え対策の特集。今回は、なぜ体を温めておくべきなのか、冷えとりの第一人者として知られる川嶋朗先生が解説。

体が冷える=血液の温度が下がる。そもそも血液の役割って?

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「血液の温度が下がると、微妙にですが、血液の流れが滞ることになります。その微妙な差が長期にわたって続くと、体に影響を及ぼすことが考えられます」そう教えてくれたのは、東京有明医療大学教授で、東洋医学研究所附属クリニック自然医療部門の医師である川嶋 朗先生。

血液の役割は主に下の二つ。
・ 酵素や栄養素を運ぶ
・ 老廃物を運び出してくれる

血液が滞るということは、体が機能するために必要な物質がうまく運ばれなくなり、いらないものが運び出されにくくなるということ

「例えば、風邪やがんをやっつけてくれる免疫細胞やそれが作り出す抗体も、主に血液にのって移動します。血液が滞ると、これも滞るのです。酸素が運ばれなければ、私たちが生きて活動するために必要なエネルギーを作る効率も落ちます」。すると体は活力を失い、風邪をひきやすい状態になってしまう。「例えば女性のホルモンがうまく作れなくなると生理不順にもなりかねません。果ては不妊症の可能性も高まります」と川嶋先生。

さらに、多幸感や安定した睡眠、それからストレスの抑制などを促す幸せホルモン、セロトニンがうまく脳内で作れなくなると、うつうつした気持ちになりやすくなる。

「実は、セロトニンの95パーセントは腸で作られています。腸で作られたセロトニンも血液に乗って脳に届けられますが、セロトニンは脳と血液の関門を通れません。そのためトリプトファンというアミノ酸を脳に運び、脳内で作るしかないのです」。血液が滞ってトリプトファンがうまく運ばれなくなると、結果としてセロトニンの分泌が減り、気持ちがブルーになりやすくなる。

さらに血液は体を温める熱も運んでいると、川嶋先生。「だから流れの悪いところは冷たいんです。そして体を冷やしてしまうと、血行不良になり、さらに体を温める機能が弱り、また冷えるという悪循環を招いてしまいます。そして体温は下がれば下がるほど、化学反応の際に働く触媒の活性も落ちていきます。そうすると物質を作る、壊す、余計なものを排除する、壊れたものを修復する、などの機能が全て弱まってしまうのです」

加えて血液が滞るということは、体外へと運び出したい「老廃物」がたまりやすい状態になるということ。「老廃物がたまると血管はますます細くなっていきます。そうすると余計に血液が運ばれにくくなり、シミができたり目のクマがとれなかったり、肌の血色も悪くなります。さらに、ニキビの治りが悪くなることも考えられます」

つまり血液が滞るということは、不調から回復させてくれる物質の生産や循環が滞り、不調を招かないよう運び出されるべき老廃物がどんどんたまっていってしまうということ。決して望ましくないこの状態を招いてしまうのが、「冷え」だと川嶋先生は言う。

体を温めて血行をよくする上で、最も大切なのは?

「体全体の熱を作っているのは、食べたものが10パーセント。運動が20~30パーセントです。残りの70パーセントは、動いていないときの基礎代謝です」と川嶋先生。

そのため、体温を上げるには、まず基礎代謝を上げることが大切。「筋肉が一番熱を作り出すので、冷えをとるためにも運動はおすすめです

現代はデスクワークが非常に多いけれど、座りすぎによる運動不足こそが代謝を下げ、不調を招くと川嶋先生は指摘。

長時間の座りすぎは死亡率を40パーセントも上げますし、生活習慣病やアルツハイマーのリスクも上げます。世界で一番座っているのは日本人というデータも出ています」。川嶋先生によると、エネルギー消費率は立っている状態と座っている状態では、20パーセントも違うそう。

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基礎代謝を上げるために、たとえジムに通えなくても、できるところから毎日運動を取り入れてみよう。例えばエスカレーターを使わず階段を使う。電車では座れないときこそラッキーと思う。たまには早起きをし、職場の一駅手前で降りて歩く。運動習慣がないなら、最初のうちは10分からでもOK。目標は、毎日30分の有酸素運動。この冬はいつも以上に体を動かす習慣を意識して、基礎代謝を上げていこう。

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次回ご紹介するのは冷えと運動の関係性、そして汗冷えを始めとするエクササイズ時の冷え対策。

■今回お話を伺ったのは……
川嶋 朗(かわしま・あきら)先生
東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科教授。東洋医学研究所附属クリニック自然医療部門の医師。北海道大学医学部卒業、東京女子医科大学大学院修了。冷え治療の第一人者としても知られ、自然治療力を重視している。近著は『たった1分! あてるだけでキレイが目覚めるドライヤーお灸』(現代書林)。



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