手洗いやうがいでは防げない? 今押さえておきたい、インフルエンザの予防法と対策

03 January 2019

手洗いやうがいでは防げない? 今押さえておきたい、インフルエンザの予防法と対策

心がいくら元気でも、体が弱ると全てが一時停止。楽しみにしていた予定は泣く泣くキャンセル、仕事量はどんどん膨らむばかり……そんなことにならないよう、今おさらいしておきたいのが、インフルエンザの予防法。

インフルエンザの予防法からワクチンの効果、そして回復を早めるコツまで、感染症とインフルエンザを専門とする廣津医院の廣津伸夫先生に話を聞いてきた。


手洗い、うがい、マスク。1番の予防策って?

インフルエンザにかかってしまったとき、「手洗いをきちんとしていたのに……」なんて声が上がることもあるだろう。でもウイルスを持った人が触ったドアノブから、などいわゆる接触感染からは「ほとんどうつることがない」と廣津先生。

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手からうつる感染症も中にはあるため、衛生面から考えれば手洗いやうがいは大切なこと。でも日中を通して何度も洗ったからといって「インフルエンザが移らないとは言い切れない」と、廣津先生。「むしろ、うがいや手洗いはほとんど予防にならないと思っていいでしょう。いつウイルスがのどや鼻に付着したかは分かりかねるので、『帰宅したらいつも一生懸命うがいをしているのに、インフルエンザにかかっちゃった』と言うのは、いわば仕方がないことなのです」

「インフルエンザの感染理由は主に、せきやくしゃみなどから飛び散る『飛沫』に含まれる病原体が感染する『飛沫感染』です」と廣津先生。通常1〜2メートル以内の距離を飛沫して感染するとされている。つまり、職場などで向かいに座る人がウイルスを持っていれば、咳やくしゃみからすぐに感染してしまう恐れがある。

そのため必死に手洗いやうがいをするよりも、取り入れたいのはマスクだそう。

予防で一番役立つのはマスクです。それに寒くなって空気が乾燥してくると、気道も乾燥して傷んで、ウイルスがつきやすくなります。そういう意味でもマスクをつけておくと、喉を潤してウイルスを呼び寄せにくくしてくれます」

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そんな廣津先生も、過去に3回ほどインフルエンザにかかったことがあるという。3回ともマスクはしていなかったとのことで、その後はマスクをつけて診察を続けたそうだけれど、患者にうつったことは今のところ一度もないそう。「つまり新鮮なインフルエンザでも、マスクを装着するなどして気を付けていれば、うつる確率は低いということです」マスクの種類には特にこだわらず、市販のものであればうつす確率も、もらう確率も下げられるよう。

ただ廣津先生によると、流行が始まってしまうと予防は難しくなるため、できることとしては以下の二つが現実的だとか。

1)一番の予防は、ワクチンを打つ

まずはワクチンを打つことでウイルスを退治する「抗体」を上げて、感染を予防することが大切。そうすることで、感染しても症状緩和に期待ができるそう。

「研究結果によると、ワクチンを打っていない、つまり抗体が上がっていない場合、ウイルスがなくなるまで平均で4.9日ほどかかっています。一方でワクチンを打っていて、抗体が上がっていると、ウイルスがなくなるまで3.8日、と1日ほど治りが早くなっています。つまりインフルエンザにかかったとしても、ワクチンを打って抗体が上がっていれば、1日ほど早くウイルスがなくなるといえます」

でも、中にはワクチンを打っても抗体があまり上がらない、という可能性もあるそう。

「例えば過去にインフルエンザにかかったことがある人とかかったことのない人では、体内にある抗体の量が違います」と廣津先生。「かかったことがない人はワクチンを打っても、そこまで抗体が上がりません。ところが以前かかったことがある人ですと、上がりやすくなります。つまり後者の方がウイルスの減少が早く、回復も早いということです」

「ただし、インフルエンザにかかっていない年数が長ければ長いほど、抗体は残念ながら落ちてしまいます。基本的に過去5年以内にかかっていない人は、ワクチンを打っておいた方がいいでしょう」と廣津先生はアドバイスしている。

ちなみに抗体ができてくるのには、「ワクチンを打ってから2週間ほど」と廣津先生。先生の患者データによると、例年の傾向として年明けからインフルエンザ患者がどっと増えているため、遅くても年内までに打っておくのが安心だそう。

でも、中には「流行するウイルスのタイプが外れたら効き目はないのでは?」と疑う人も。ワクチンは今年流行するウイルスを予測して、年の初めに作られるため、予測と違うウイルスが流行することもなきにしもあらず、と廣津先生は言う。

「ですが、ワクチンはA/H1N1、A/H3N2、B/山形系統、B/ビクトリア系統の4種類を組み合わせて製造されているので、どれにも効くようにできています。この4つに対する免疫を上げてはくれますが、それぞれ流行するウイルスに対応できているかどうかというところは、流行が始まるまで分かりません」

2)次に大事なのは、かかった人がうつさないこと

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流行が始まってからはかかった人が注意をすることが一番の予防になる、と話す廣津先生。

「現実的に考えて、感染経路を考えた場合うつさないよう予防ができるのは、家族や同居人くらい」だと言う。「電車に乗ってもインフルエンザの人がそばに立っていれば、うつります。電車や学校、職場と感染経路はさまざまですが、それを防御することは公の場所ですと難しいです」

かかった人が注意することでどれだけ変わるかは、家族内感染を見るのが最も分かりやすいそう。「当院の研究データを見てみると、感染しないように気を付けることができない乳幼児から母親への感染率は、17.8パーセントであることに対して、マスクなどで感染を防げる母親から乳幼児への感染率は10.9パーセントでした」

「一方で、気を配らずマスクをつけない傾向にある父親が、外からウイルスをもらった場合、乳幼児に移すリスクは15.4パーセントでした。父母間で見ても、気を付けている母親から父親へ移るリスクは1.9パーセントだったものの、気を付けていない父親から母親に感染する率は8.8パーセントまで上昇しています。つまり感染防御とは、まず感染している人が健康な人と接触しないことと、マスクをつけるなどして、うつさないように注意することなのです」

ただし外にいる際は誰が感染しているかわからないため、予防として終日マスクを活用するのも一つの手。特に疲れがひどく、免疫力が弱っていると感じるときは、マスクを付けることで少しでもウイルスを呼び寄せないよう気を配ろう。


今年の傾向は?

廣津医院がある川崎では、8月にA/H1N1、9月にA/H3N2、そして10月にはBのウイルスが出ているが、最近はA/H1N1が多いそう。そのため、「今年はA/H1N1が流行しそう」と廣津先生。
「後からA/H3N2が増える可能性もありますが、一つ言えるのは、ここ数年の傾向を見ると、Bが隔年で流行っているということです。昨年はBが流行りましたので今年は流行らない、と予測することはできるでしょう」


全身症状があるならインフルエンザ。回復を早める方法って?

インフルエンザの主な症状としてあるのは、「全身症状、咳や鼻水、喉の痛みなど気道の症状、頭痛、体の節々に感じる痛み、そして熱です。熱の多くは38.5度を上回り、一般的に風邪と比べて熱が下がるまで時間がかかる傾向にあります」と廣津先生。

風邪の場合は全身症状がないため、「頭痛や関節が痛むなどの全身症状があるのであれば、インフルエンザだと思っていいでしょう」と廣津先生。

インフルエンザにかかってしまった場合、第一目標はウイルスをなくすこと。「一般的には熱が下がり、2日間ほどでウイルスがなくなるとされています」と廣津先生。ところがウイルスがなくなるスピードに関しては、飲む薬によって変わってくるそう。

「薬でどれくらい違うかというと、ラピアクタという点滴ですと平均2日間でウイルスがなくなり、タミフルですと平均4日間でウイルスがなくなります。今年新薬として誕生したゾフルーザですが、被験者の半分ほどが1日でウイルスがなくなっていることが実証されています。中には昼に飲まれて、夜には楽になったという方もいました。そのため、治療の際に『どれくらいで治りますか?』と聞かれたときは、薬によって変わりますと回答しています」

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ウイルスがなくなれば、体調も元通りになる?

基本的にウイルスがなくなった時点で和らぐと思っていいのは、全身症状だと廣津先生。「インフルエンザの全身症状に関してはウイルスがなくなると、比較的早く良くなります。つまり『きつい、つらい』という感覚は、このタイミングで治ってきます」

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ところが、ウイルスがなくなってもなかなか治りにくいのは、インフルエンザによって起きた炎症。「つまり咳や鼻水です。平均で発症してから5〜6日ほどは続くと思っていいでしょう。ただ、中には咳がそもそもない人もいれば、発症から2日で咳が治まる人もいますし、15日ほど続く人もいらっしゃるのでばらつきがあります」

いずれにしてもできるだけ早くウイルスを体内からなくすためには、放って置かずに早い段階で病院に向かい、薬を処方してもらうのが◎。

疲れがたまり、体調が悪く、免疫力が弱っていると感じるなら、対策としてマスクを付けて外出しよう。それでも熱と全身症状が出てしまった場合は、すぐに病院へ向かうことが回復への近道だと心得て。ワクチンをまだ打っていないなら、できるだけ早めに予防接種を受ける予定を立てて、インフルエンザに備えよう。

■お話を伺ったのは…
廣津伸夫(ひろつ・のぶお)先生
廣津医院院長、日本感染症学会インフルエンザ委員。1972年東京慈恵医科大学卒業。1984年より廣津医院(川崎市)院長。感染症とインフルエンザを専門としている。

Photo: Getty Images

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