突然立ち上がったときや、空腹を放っておいたときにも起こる、頭がくらくらする感覚。血圧の低下や心拍数の減少から見られるこの症状は、「脳に送り込まれる血液が不足していることが理由として考えられる」と話すのは、ニューヨーク大学ランゴーン医療センターの心臓医学助教授、ローレンス・フィリップス医学博士。でも、脳に送り込まれる血液を正常に保つためにはどうすればいいの?
血圧や心拍数が下がってしまう原因を追究するフィリップス。彼ら専門家の見解を交えてアメリカ版ウィメンズヘルスが紹介するのは、頭がくらくらする「9つの理由」。
喉が渇き気味、暑さに耐え過ぎ……。体に水分が足りていない!
体温が上がり汗をかき、体内の水分が極端に減ってしまった際に、頭がくらくらしたり気を失ったりしやすいという人も。「例えば、真夏の暑い室内で人が倒れてしまうのもこのせいです」と言うのは、アメリカ・オタワ病院研究所の臨床疫学者でありオタワ大学の助教授、ヴェンカテッシュ・ティルガナサンバンダモーシー医学士。「熱が神経回路を刺激し、血圧を落としてしまうことが原因として考えられます」
水分不足、あるいは暑すぎる環境にいるせいで頭がくらくらするなら、まずは横になろう。ティルガナサンバンダモーシーいわく、「横になることで心臓や脳に血が行きわたり、より早い回復が望める」そう。
ワッと驚かされて、くらくら! それは神経が過度に働いて、血圧が急降下するから
例えば誕生日のサプライズなどで、友人があなたを驚かすことなども頭がくらくらするひとつの原因だとか。「神経系が過度に働かされ、血圧が突然下がってしまう」と、ティルガナサンバンダモーシー。顔が青ざめ、若干吐き気を催した場合は、気絶してしまう可能性もあるのだそう。
勢いよく立ち上がってしまった……。「くらくら」の症状によっては医師の判断をあおいで
座った状態から即座に、すっと立ち上がったときに頭がくらくらしたり、視界に黒い点が見えたりすることはない? これは、「起立性低血圧症(きりつせいていけつあつしょう)」といって、立ったときに急激に血圧が下がってしまう症状。通常であればそこまで心配する必要はないけれど、頻繁に起きたり、数分経っても症状がひどくなっている場合は医師に相談するのが◎。
「くらくら」を感じない気絶やトラブルも。前触れのない、不整脈による気絶は要注意!
誰かにびっくりさせられたときは気絶するまでに比較的時間がかかるけれど、原因が心臓にある気絶はすぐに起きるため、頭がくらくらする感覚すら感じないことも。
心拍リズムに異常がある場合は不整脈と判断される。「不整脈は心拍のリズムが遅すぎるか、早すぎる状態です」とフィリップス。「すると脳に送り込まれる血液の量に影響を及ぼします」
「このような前触れがない気絶が一番怖いのです」と警告するのは、アメリカ・カリフォルニア大学サンフランシスコ校の臨床心臓医学助教授、メリッサ・S・バローズ=ペーニャ医学博士。「話している途中で突然倒れ、床で目を覚ます頃には倒れる前の感覚をすっかり忘れている場合。医師はこのような話を耳にすると、すぐに不整脈を疑います」。不整脈は心臓のトラブルによる、一般的な死因にもされているのだとか。
若い人の「くらくら」は心臓の弁が原因のことも。不整脈は60代以上で、運動中になりやすい!?
バローズ=ペーニャによると、「心臓の弁の異常は、通常生まれつきのもので、若い人に起こりやすい」と言う。一方、不整脈は60歳以上の人に起こりやすいそう。心臓の弁が正常に働いていない場合は、特に運動をしている最中に血流がうまく循環せず、頭がくらくらしたりめまいを起こしたりするのだとか。
それは、飲んでいる薬のせい? 副作用やアレルギー反応である可能性も
「鎮痛剤や抗不安薬など薬によっては、頭がくらくらしたりめまいを起こしたりする可能性もあります」とバローズ=ペーニャ。「薬が脳に直接作用したり、心拍数や血圧を下げることが原因として考えられます」と、フィリップスは説明する。
「患者がめまいを訴え、原因が特定できない場合は、あまり一般的ではない薬の副作用が原因であることも」とバローズ=ペーニャ。原因不明のめまいに悩まされているなら服用中の薬の副作用によるものか、一度医師に確認してみるといいそう。
「薬にアレルギー反応を起こしているという可能性も、皆無ではありません」。まれではあるものの、薬によって体がアナフィラキシー反応を起こし、頭がくらくらしたり気絶したりするケースもあるのだとか。「免疫システムによって起こる、激しい反応です」。アナフィラキシーショックが起きると血管は開くため、血圧が落ちてしまうという。「血圧の変動でめまいが起きているわけですが、この場合の原因は免疫反応にあります」
頭のくらくらだけじゃないなら。脳卒中の予兆である可能性も
「頭がくらくらすることに加え、『筋肉が弱くなっている感覚』『うまく話せない』などのほか、しびれやうずきを伴う場合があります。これらの症状は脳卒中である可能性もあり、すぐに医師に相談しましょう」、とフィリップス。「頭がくらくらするのは、脳に十分の血液が送り込まれないことから起こります。この原因として、脳内に血栓があることも考えられます」とバローズ=ペーニャ。「これは、虚血性脳卒中を引き起こす原因にもつながります」
食事を抜いて頭がくらくら。けれど糖尿の場合は注意が必要
ランチを抜いたことにより血糖値が下がると、脳の燃料となる糖の一種であるグルコースが不足する。すると、イライラするだけではなく、頭もくらくらしてくるそう。バローズ=ペーニャは「これは心拍数や血圧というよりも、代謝に関係する問題です。多くの場合は、少し食べれば症状は治まります」と話す。
「ですが糖尿病を抱えている場合や、血糖値を下げる薬を飲んでいて頭がくらくらするなら、血糖値が下がりすぎている可能性があります」。このサインを見逃すと、発作が起きたり意識を失ったりすることもあるそう。
インフルエンザで頭が……。つらくても栄養と水分補給を!
インフルエンザで頭がくらくらする場合は、原因として考えられるのは水分不足と血糖値低下のダブルパンチ。「食べたり飲んだりする気にはならないかもしれませんが、栄養と水分補給は、めまいもインフルエンザの症状も和らげることができますよ」と、バローズ=ペーニャはアドバイスしている。
※この記事は当初、『Prevention』誌に掲載されました。
※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。
Text: Sarah Klein Translation: Ai Igamoto Photo: Getty Images