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冷えた体を芯からぽかぽかにする絶好のチャンス、お風呂タイム。ところが一歩間違えると、湯船に浸かったにも関わらず体が冷えてしまうそう。6回にわたりお届けしてきた冷え特集の最終回では、体をしっかりと温めるためのバスタイムのおきてを川嶋 朗先生から教えてもらった。

38〜40度が適温。温めのコツは、ぬるい温度で長く浸かること

冷えるか冷えないかの決め手となるのは、お湯の温度だと語るのは、東洋医学研究所付属クリニック自然医療部門の医師である川嶋 朗先生。外が寒いと、熱いお湯に浸かりたいなんて思うかもしれない。でも熱過ぎるお湯は自律神経を乱してしまうため、実は逆効果。「高い温度の湯船は昼間に活発に働く交感神経を優位にしてしまい、体を冷やします」

>>自律神経のバランスが崩れると体が冷える理由はこちら<<

「熱湯に浸かると入った瞬間に血圧が上がり、そのあとすぐに湯冷めします。汗もかいてしまうので、クールダウンするまで眠りにつくのも難しいでしょう。さらにクールダウンしていく過程でどんどん冷えてしまいます」

体を芯から温めるには、ちょっとぬるいと思うくらいの温度でゆっくり全身で浸かるのがベスト。心臓の弱い人のためである半身浴は、温め効率を半減させるので注意。「つまり、38〜40度です。何があっても40度を超えないことです。ぬるいお湯にゆっくり浸かっている分には血圧も緩やかに上がっていきます。そのあとの降下具合も悪くありません」

寝入るとき、人の体温はすーっと下がっていくもの。お風呂から上がってまだ体が温かいうちにベッドに入れば、「体温が上手に下がってくれますよ」と川嶋先生。

身に覚えがあるかも。どんどん熱を奪うバスルームでの「冷える」行為

「今日は時間もないし、シャワーで済ませよう」。体が冷えているなら、この判断は避けたいもの。シャワーだけで済ませても体が温まらないのは、「そもそも温められていないから」と川嶋先生は指摘。シャワーで浴びるお湯は気化してどんどん熱が奪われていくため、基本的に冷える行為だと川嶋先生は説明する。それでもどうしてもお風呂に浸かる時間がない場合は、お風呂上がりに川嶋先生おすすめの「ドライヤーお灸」を試してみて。

川嶋先生が冷えに効くとおすすめするお灸は、頭のてっぺんにある「百会(ひゃくえ)」……耳の上に親指を置き、頭を覆ったときに中指がタッチする辺り。そして、足の裏にある「湧泉(ゆうせん)」……手で足をもんだとき、足裏のてっぺん辺りにできる「人」という漢字の真ん中辺り。膝の骨の外側にある「足三里(あしさんり)」……むこうずねの骨をたどり、膝近辺のふくらんでいる骨から指2本分ほど外側の辺り。内くるぶしの少し上にある「三陰交(さんいんこう)」……内くるぶしの上に指を3本置いたとき、指が当たるすねの骨裏にある、くぼんだ辺りの主に4つ。

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アチっと感じるまで当てるのが、お灸1個分です。これを5回繰り返すといいでしょう。そうすると、鍼灸師が5つくらいお灸を置いたのと同じになります。ドライヤーを使えば1、2分で終わるでしょう」。一通り当て終わると、体がじんわり温まってくるのだとか。

運動後は、疲れの回復を手助けしてくれるお灸である「足三里」にさっとドライヤーを当てるのもいいそう。「これは実験でも実証されています。筋肉痛の治りも早めてくれるでしょう」と先生。

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脱衣所が寒くてすぐ体が冷えてしまう場合は、「急な血圧の上昇を防ぐためにも、入浴前にドライヤーを体に当てるといいです。掛け湯と同じ感覚なので、ヒートショックも防げます」と川嶋先生はすすめる。「ドライヤーでばーっと体を全体的に温めてあげます。やけどをしないためにも自分で行いましょう。温まったな、と感じたら終了です」

また、脱衣所などが寒いと「お風呂から出た瞬間に冷えが始まります」と川嶋先生。できれば暖房器具などを活用し、脱衣所を温めておこう。

筋肉がないとむくみやすい。せめてリンパ管節を刺激して、むくみ知らずの体に

お風呂から上がり、美容液やボディーローションを塗りながら行いたいのが、顔や体のむくみ対策。なぜならむくみも体を冷やす一つの理由

「むくみは血管の外にたまった水分です。そのため、たまれば体を冷やします。血管を圧迫し、血のめぐりが悪くなってさらに冷える、と悪循環です。血流が悪いと、もちろんたまった水も運べません」

>>冷えが招く不調をおさらい<<

「局所に栄養素が行き渡り、今度は老廃物をたまった水とともに運び出さないといけません。このとき弾力のない静脈だけでは、あらゆるものを運ぶ血液が戻れないのです。そこでむくみを解消するために働いてくれるのがリンパ管なのです。だから乳がんや子宮がんでリンパ節を取ってしまうと、リンパの流れが途絶えてしまい、そこから下がむくみます」

「ところがリンパ管も静脈も強い筋肉があまりついていないので、骨格筋をポンプ代わりに使います。これがしっかりとついていなければ、その部分がむくみやすくなります。だから下腿(かたい)の筋肉や太ももの筋肉が、むくみをとるために重要なのです」

筋肉不足の体は、川嶋先生が言うようにむくみやすいので、せめてマッサージをして刺激してあげることが大切

「リンパ管節は肌表面にあるので、そこを心臓に向かってすーっと触ってあげるだけで十分な刺激になります。そこまで力を加える必要もありません」と川嶋先生。顔を保湿する際にリンパ節を流してあげるだけでもむくみ解消につながるので、試してみて。

体を温める最高のチャンスを無駄にしないためにも、効果的な浸かり方を知っておくのが大切。普段の「冷えない行い」に加えてドライヤーも活用しつつ、お風呂の効果をぐんと高めてみては。筋肉不足な人は、お風呂上がりのむくみ対策もお忘れなく。

6回にわたりお届けしてきた冷え特集。体を冷やさないコツはつかめた? まだチェック済みでなければ、下記にも目を通して冷えない体作りを目指そう!

Vol. 1:体が冷えるとどうなるの?
Vol. 2:汗冷えには注意! 冬の運動に使える冷え対策の知恵
Vol. 3:体全体をぽかぽかさせるために、温めるべき「部位」があった!
Vol. 4:体が冷えているのは、ストレスのせいかも?
Vol. 5:内側からぽかぽか。体を冷やす食べ物の「噂」を徹底検証

■今回お話を伺ったのは……
川嶋朗(かわしま・あきら)先生
東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科教授。東洋医学研究所付属クリニック自然医療部門の医師。北海道大学医学部卒業、東京女子医科大学大学院修了。冷え治療の第一人者としても知られ、自然治療力を重視している。近著は『たった1分! あてるだけでキレイが目覚めるドライヤーお灸』(現代書林)。



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