天候や気圧が変わるとなんだか気分が落ち込んだり、イライラしたり、体の不調を覚える……。誰もが抱いていた疑問に医学のメスが入り、それが「気象病」であること次第に判明。天候が変わりやすい春から夏にかけて、そしてこれからの梅雨の時季に体調が揺らぐ人も多いのでは? 気象病はそのメカニズムを知っておく他、なってしまう前のメンテナンスが重要と専門家は指摘する。梅雨やゲリラ豪雨、そしてこの先の台風シーズンに備え、誰もがでできる気象病のメンテナンスをドクターがレッスン!
気候が変わりやすいこの時季に多くなる「気象病」。低気圧が押し寄せる梅雨の季節になる前に、気圧に負けないメンテナンスをしておくことが大事と、せたがや内科・神経内科クリニック院長の久手堅 司先生は言う。
「私のクリニックではどうして気象病になっているのかを診断し、自分でできるセルフケアをレクチャーします。自律神経がかなり乱れている方は継続した治療が必要な場合もあります。ですが、軽度の気象病の方はセルフケアで良くなる方もいます」
そこで、自分でもできるメンテナンスを久手堅先生が解説。
気象病のメンテナンス、ポイントは「気づいたときにケアするクセづけ」
「気象病は調子が悪いな、というときには症状がすでに出てしまっているので、前もって習慣づけることが大事です。特にスマホが手放せない人、デスクワークでパソコンに長時間向かっている人は、“気づいたときにケアするクセ”をつけたほうがいいですね」
Care1:ストレートネックメンテナンス
デスクワークでパソコンに向かい続けたり、スマホを長時間見ていると、どうしてもストレートネックになりがち。ストレートネックとは、本来は緩やかなカーブを描くはずの首の骨(頸椎)が、こうした姿勢を取り続けたことなどにより、真っすぐになってしまった状態。ストレートネックは首に負担がかかるため、それがさらに気圧で悪影響を受けて不調が出やすくなる。日頃からストレートネックを正すケアが重要に。
【いつやる?】
スマホの画面などを見ていて「あれ、頭の位置が前に出ている」と気づいたときに行う。“気づいたら行う”をクセにすることで、頭と首の正しい位置を刷り込むことができる。肩凝りと首凝りの予防にも。
【やり方】
利き手の親指と人さし指でL字を作る。アゴにL字を横から当てて、ストレートネックで前に出ている頭を正しい位置に戻すように押し込む。
このとき肩の位置はそのままに、頭の位置だけを押し込むようにして変える。押し込むのは、耳の下に肩が来るぐらいの位置まで。
Care2:肩甲骨を引き寄せて、猫背をメンテナンス
スマホやパソコンで作業をしていると肩が前に出て、胸が閉じた猫背になりがち。ストレートネックと同じく気圧の影響を受けやすい姿勢なので、それをケア。
【いつやる?】
ストレートネックと同様に、気づいたときに。デスクワーク時には1時間ごとに、ストレッチ的に行うのがオススメ。
【やり方】
両手を後ろ手に組み、息を吐きながらゆっくりと、左右の肩甲骨を合わせるようにして胸を気持ちよく開いていく。ゆっくり伸ばしながら20秒程度キープし、3セット行う。肩凝りや首凝りの予防にも。
Care3:内耳のバランスを良くする、耳揉みメンテナンス
耳の中の内耳(ないじ)は気圧の影響を受けやすく、気圧の変動をキャッチして脳の視床下部から自律神経へ信号を送る働きを担っている非常に重要な部分。この部分の循環を良くしておくことも大切。
【いつやる?】
気づいたときに行う。テレビを見ながらでもできるので、1日の中で、どこかで気づいたら行うのがオススメ。
【やり方】
①右手で右耳、左手で左耳を持ち、耳の少し上を水平方向に引っ張る。
②耳を上下に引っ張りながら動かす。
③前に5回、後ろに5回耳を回す。
④耳を斜め上に引っ張る。いろいろな方向に耳を刺激することで、内耳のむくみなどをケア。
Care4:緊張しがちな部分を、指圧でメンテナンス
気圧の影響を受けると、頭痛やめまいなどを起こしやすくなる。このとき、緊張するのがこめかみやかみ合わせの部分。指圧で緩めることで、緊張が解ける。
【いつやる?】
気づいたときに行う。
【やり方】
①人さし指と中指で、こめかみを20~30秒ぐらい押して刺激。
②頬骨の下のかみ合わせの部分を、同じく20~30秒ぐらい指圧する。
③耳の下のエラの部分を、少し前に押すように、持ち上げるように20~30秒ぐらい指圧。
気象や気圧の変化と体調の乱れ、今年はこのメンテナンスで乗り切って、心と体を晴天に!
■お話を伺ったのは……
久手堅 司(くでけん・つかさ)先生
せたがや内科・神経内科クリニック院長。医学博士。日本内科学会・総合内科専門医、日本神経学会・神経内科専門医、日本頭痛学会・頭痛専門医など。天候と不調にフォーカスを当てた、気象病外来を立ち上げ、メディアなどでも話題になっている。
Photo:Getty Images Illustration:Kanao Enami(asterisk-agency) Text:Manabi Ito