でも、天候が悪くなっても不調になる人とならない人がいるのはなぜ?
これは、大きく2つの部分が関係していると久手堅先生は指摘。
「一つは耳の中の内耳(ないじ)と言われる部分です。飛行機に乗って、急上昇して気圧が変化すると、耳がキーンと詰まった感じになりませんか? あれは、気圧の変動を内耳が感知するからです。
耳の中にある内耳と呼ばれる部分は、私たちの平衡感覚と聴覚を司っている部分です。気圧の変化などを感じるとそれを素早くキャッチして、脳の中枢にある視床下部に伝えて、そこから自律神経に“体に変化が起きているので対応しなさい”と指令を出します。
飛行機の気圧変化でめまいが起きたり、頭痛がするのは、自律神経が乱れていることで起きているのです。
この最初の変化を感じる内耳は個人差があるので、非常に敏感に反応してしまう人がいます。どちらかというと男性よりも女性のほうが、内耳変化に敏感だと言われています。乗り物酔いしやすい人は内耳が敏感なので、気圧変化も感じやすいと思ったほうがいいかもしれません」
そして、もう一つ。意外に思うかもしれないが、姿勢の悪さが気圧の変化に大きく関係すると久手堅先生は指摘する。
「1気圧で10トンの圧力がかかる私たちの体。通常はこの圧力にも対抗できる力を持っています。ところが、姿勢が悪いと軸が定まらないため、気圧の影響を受けやすくなることが分かってきました。
ちょっとわかりにくいので、免震構造の建物でお話しましょう。最近の高層ビルは免震構造になっていて構造はしっかりしていますが、揺れて免震することで振動から建物を守っています。多少の負荷がかかっても倒れません。『柳の木に雪折れなし』のことわざでも例えることができます。ですが柱が斜めになっていたり、一部が傷んでいたりすると、ちょっとの揺れや負荷がかかっても崩れてしまいます。
これは姿勢でも同じことが言えます。気象病で来られる患者さんを診ていると、皆さん申し合わせたように姿勢が悪いのです。猫背はもちろん、最近多いのが、スマホによるストレートネックです。
ストレートネックは肩こりや首こりだけでなく、頭痛やめまい、自律神経の不調にも関係していると言われています。ただですら不調を起こしやすいストレートネックの人が低気圧にさらされると、症状がより悪くなるのは当たり前ではないかと私は考えています。ですから気象病の治療では、姿勢などの改善も合わせてアドバイスしたり、姿勢を見直すことを勧めています」
■お話を伺ったのは……
久手堅 司(くでけん・つかさ)先生
せたがや内科・神経内科クリニック院長。医学博士。日本内科学会・総合内科専門医、日本神経学会・神経内科専門医、日本頭痛学会・頭痛専門医など。天候と不調にフォーカスを当てた、気象病外来を立ち上げ、メディアなどでも話題になっている。
http://setagayanaika.com/