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どちらも摂り過ぎはいけないけれど、真のワルモノは?

最近は「なにごとも適量が一番」とよく言われて、健康志向の人の合言葉のようになっている。でも砂糖と塩に関しては、適量と分かっていてもなかなかコントロールするのが難しいもの。

砂糖も塩も、どちらも健康を保つために大切な役割を担っている。脳のエネルギーのために砂糖は欠かせないし、筋肉を動かすために塩は必要。ただ、どちらも過剰に摂取してしまうとたくさんの悪い影響がる、と話すのはニューヨーク、トゥーロ・カレッジの助教授ニケット・ソンパル。

では結局のところ、健康により害があるのはどっち? そしてそれはなぜ? ここで論争に決着をつけるべく調べてみた。

砂糖

フルーツに含まれるような自然由来の糖質ではなく、精製された砂糖や添加されたものが問題だと専門家は話す。「牛乳や100%のフルーツジュースは元から糖質やカロリーを含んでいるけれど、それと同時にビタミン、ミネラル、タンパク質(牛乳の場合)やポリフェノール(ジュースの場合)も含む」とテキサスを拠点とする認定栄養士のカレー・マクモーディー。

一方で、砂糖の入った炭酸飲料や甘いお茶は、カロリーはあるが栄養はない。これは手軽に食べられる携帯型のお菓子にも言えること。食物繊維、タンパク質、ビタミンやミネラルが含まれていないため栄養的なメリットがない。それかあっても、元から含まれているものは失われて、後で添加されたもの。こういった食品の摂り過ぎは、肥満や栄養失調につながってしまう、とマクモーディー氏は話す。

糖質も、それがどんな名称であろうと、身体の中で血糖値を上げる作用があり、インスリンを分泌させる働きをする。白砂糖、果糖、コーンシロップ、キビ砂糖、三温糖など名前は様々でも身体のなかでする働きは同じ、とWellnessFXのメディカル・ディレクターマードック・カレギー医師。血中の糖を排出して細胞がエネルギーとして利用できるようにするために、身体はインスリンを分泌する。

通常はこのプロセスは滞りなく行われているけれど、砂糖を摂り過ぎていると、身体の脂肪をためる機能が必要以上に働いてしまう。インスリンの分泌が多すぎてしまい、インスリン抵抗性につながり、身体がもっとインスリンを作るようにしてしまう。

そしてこれが脂肪を身体にたくわえさせてしまう、とカレギー医師は説明する。これが続くとインスリン抵抗性と砂糖の摂り過ぎによる体重の増加がⅡ型糖尿病を引きおこすことになる。そしてⅡ型糖尿病は肝臓疾患の一番の原因である緑内障につながり、さらに心臓病や脳卒中のリスクが上がってしまう。

特に精製された砂糖の摂り過ぎは身体の代謝を左右し、炎症を悪化させ、さまざまな慢性的な病気につながってしまう。「糖質の一種、果糖は肝臓でしか分解されないもの。ただ分解する量が多すぎると、肝臓に負担がかかり、代謝にいろいろな影響が起きてしまう。研究によると、コレステロール値の異常、高血圧、脂肪肝、メタボリック症候群や心臓病など」とOne Dropの認定糖尿病講師のレイチェル・ヘッド栄養士は言う。

人間の身体には、体内の水分を調整し、電解質を細胞に行きわたらせるために塩が必要。ただし、「糖質の重要性は知られるようになってきたけれど、塩分が身体にどのような影響を与えるのかに関してはまだ議論が多い」とカレギー医師は話す。多くの健康的な人の場合、適度な塩分を分解することは簡単で、身体も塩分を必要としている。ただ、多すぎる場合は、長期的な健康問題につながってしまうそう。

現在の健康ガイドラインによると、米国では1日のナトリウムの摂取量は2300mgとしている。これは小さじ1杯分くらいである。だが、ほとんどの人は平均で3400mg摂取しているそう。つまり、一日で小さじ三分の一程度多く摂っているとアメリカ疾病予防管理センターは解説する。

専門家は長年、ナトリウムが体内での体液貯留に影響し、それが高血圧につながると考えてきた。血圧がコントロールされていないと、心臓発作や脳卒中、腎臓や視力などの深刻な健康問題につながってしまう。しかし、塩分と高血圧との関係は最近では疑問が持たれている。

2014年のフランスで行われた成人8000人以上を対象とした研究では、塩分摂取は男女ともに収縮期血圧と無関係だということが分かった。研究の著者によると、塩分と血圧の関係は実際よりも過大評価されており、以前考えられていたよりももっと複雑なものであると結論づけた。

2016年にアメリカ版『ウィメンズヘルス』に掲載された記事でも、塩分が血圧に影響したり、心臓疾患に影響するという信頼できる医学的根拠はないとしている。むしろ、過去の研究ではその逆を示しているものが多いそう。

「一般的な健康的な人の場合、適量を摂取している分には塩は必ずしも悪いものではない」とマクモーディー医師は話す。ただし、50歳以上の人で既に血圧が高い場合などは塩分に敏感なので、塩分摂取量を変えることによる効果は高くなるそう。

塩分の過剰摂取の問題は、その多くが加工品や外食からきているということで、実際にふりかけている量ではないという。「加工品や外で食べる食事は塩分が多いだけでなく、脂質もカロリーも多く、家で作った食事に比べて栄養も少ない」。そのため、体重増加や高血圧以外の健康問題にもつながってしまうことが問題とマクモーディー医師。

それではどちらが悪いのか

どちらも適量を摂取している分には特に悪いわけではない。でも、強いて言うのであれば、摂り過ぎた場合は砂糖の方が健康全般に悪い影響がある、とヘッド氏。マクモーディー氏もこの意見には賛成しており、「塩は身体を正しく機能させるのに欠かせないが、砂糖はそうではない」と話す。2014年の『Diabetology & Metabolic Syndrome』に掲載された論文でも、砂糖が塩分の身体に与えるマイナス作用を増やす可能性があるとしている。インスリンは腎臓に塩分を保持するように指令を出すが、インスリンの分泌量が増えれば、水分と塩分をもっと身体に溜め込むようになり、これが高血圧になる。

砂糖と塩の摂取量をきちんとコントロールするには、全粒穀物、乳製品、フルーツなど栄養のあるものから炭水化物を摂取するようにして、とマクモーディー氏はアドバイスする。そして、精製された砂糖や加工食品は避けるようにすると良いそう。

※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text:Krissy Brady Translation:Noriko Yanagisawa Photo:Getty Images