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糖質制限や糖質オフなどが叫ばれ、それに関連した食事法や商品もたくさん目にするように。けれど、一方で糖質完全オフについてはドクターも巻き込んで賛否両論。そもそも糖質って何だろう。「糖質」と「糖類」の違い、即答できる? しかも摂ってもいい、むしろ無視できない糖質もあった! 人気の管理栄養士、浅野まみこさんが教えてくれる、今知るべき糖質について。ヘルシーな体作りのための糖質についてのレッスン、開講!

「糖質何パーセント」「糖質完全オフ」。レストランのメニューやスーパーのポップでもよく見かける表現だ。何となく糖質=悪者、あるいはなるべく減らしたほうがいいもの、と漠然と思っている人も多い模様。そもそも、糖質とは?

「糖質は、炭水化物から食物繊維を除いたものです。糖質の代表的なものがデンプンや糖アルコール、オリゴ糖などになります」と、解説してくれたのはテレビや雑誌などで活躍する人気の管理栄養士、浅野まみこさん。

「この糖質の中に、糖類が含まれています。炭水化物の中に糖質が含まれ、糖質の一つが糖類です。つまり、炭水化物>糖質>糖類というイメージです。糖類はさらに二糖類、単糖類などに分けられます。二糖類はショ糖(砂糖)、単糖類はブドウ糖(グルコース)、果物などに含まれる果糖(フルクトース)などですね」

単なる名称の違いだけではなく、体の吸収スピードなども違うと言う。「単糖類はその名の通り、一つの糖だけでできています。そのため、舌下から速やかに吸収されます。砂糖などの二糖類は、簡単に言えば糖分の分子が二つ結合したものです」

どれも同じ糖分にも思えるが、食材として考え、さらに体内での分解や吸収のされ方を考えると、摂るべきものや控えた方がよいものも見えてくる。

「炭水化物(デンプン)や砂糖は分解され、ブドウ糖の形で吸収されます。すると血糖値が上がり、膵臓にある組織から作り出されるインスリンの分泌を促します。そして糖が細胞内へ取り込まれると、血糖値が下がって平常な状態に戻ります。取り込まれた糖はエネルギーとして使われる他、筋肉や中性脂肪として貯蔵。これが血糖値の上下の仕組みです。つまり、体を動かすエネルギー源ですね」

果物やジュースを摂るとブドウ糖の他、同じ単糖類である果糖が体内に取り込まれる。しかし、そこから先の違いもある。

「果糖はブドウ糖に比べ、インスリンが分泌されないので血糖値がそれほど上がりません。これが健康にいいと思う向きもありましたが、果糖が大量に吸収されてもインスリンが働かないので、体のシステムの混乱を引き起こしてしまいます。血糖値が上がらないということは、満腹感がないということ。その結果、他のものを食べてしまったり、果物でも大量に食べればそれだけカロリー量を摂ることになります。

果糖はブドウ糖と代謝経路が違ってすぐに肝臓で代謝されるため、中性脂肪として蓄積されやすい側面も。また、内臓脂肪や脂質代謝異常、インスリン抵抗性が起こりやすいという報告も多々あります」と、浅野さんは指摘。

「これは果糖単体で考えた場合、一番気をつけたいことです。ですが、果物を食べることが一概に良くないとは言えません。果物は食物繊維やビタミン、ミネラルが摂れます。もし果物を摂るならば、時間帯などを意識して食べると良いと思います」と浅野さん。だけど、これらのメリットや体内での吸収の特性を知って食材を選んでいる人は少ないのでは?

さらに注意を払いたいのが、清涼飲料水や菓子などに含まれる「異性果糖(いせいかとう)」。成分表示などで見かける「果糖ブドウ糖液糖」がその例で、人工的に作られた糖分だ。「果糖とブドウ糖が別れた状態で液体中に存在しているのですが、満足感が少ないので空腹が解消されず、甘いものの中毒になりやすくなります。比較論だけでいえば、まだ砂糖のほうがよいかもしれません」

糖依存と体を動かしてくれる糖の狭間で。今、摂るべき糖質とは?

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浅野さんは、極端な糖質オフや糖への中毒、依存に警鐘を鳴らす。

「完全糖質オフダイエットは、長続きしない人が多いように思います。また、主食などを完全にカットしても、甘いものはやめられず、チョコレートやお菓子を摂ってしまう人がいますよね。

糖は依存しやすい成分なので、糖を摂取するとさらに糖を食べたくなってしまいます。そのため、糖質オフをしたいなら、まずは“糖依存”から脱却を考える方が大切です。

糖依存をやめるのであれば、まずは頑張って3日ほどは甘いものの摂取をやめましょう。これは糖分が2~3日で体から脱却しやすいため。このときに100%糖質を抜かないことです。選んでほしいのは、体内で分解されたときにゆっくりと吸収されるタイプの糖です。たくさんの分子の鎖でつながっているものですね」

それは意外にも、私たちにとって身近で、毎日口にしているもの。

「炭水化物と言われる米飯などをきちんと摂ってほしいんです。炭水化物にはビタミンやミネラルの他、食物繊維も含まれています。体内での吸収が緩やかというだけではなく、炭水化物は固形なので“噛む”という行為が発生します。主食を噛んで食べることは満腹感にもつながりますし、唾液が出て消化を促し、満腹中枢にも刺激がいきます」

摂るべきは炭水化物、つまりは米、と浅野さんは勧める。

「お米にはビタミンやタンパク質も含まれています。炊いた際には水分も加わります。また白米ではなく、玄米や胚芽米、雑穀を混ぜた雑穀米などはよりおすすめです。食物繊維やビタミン、ミネラルが白米よりもずっと多く含まれ、吸収も緩やかに行われます。長い間、日本人が食べ続けていた米は、私たちにとって理にかなった食材なんですよ」

もう一つ、浅野さんが指摘するのが、私たちがイメージしてしまいがちな“この食材や食事=砂糖何個分”という考え方。「そもそも炭水化物は砂糖何個分、という考え方ではひとまとめにしにくいものです。砂糖は、ブドウ糖と果糖を合わせた二糖類。炭水化物は、ブドウ糖が連なった多糖類です。さらに体内への吸収のされ方、体での役割なども違うので、砂糖と米が同じものではないことを知ってもらいたいですね」。白米なども砂糖何個分、と考えない方がいいということ。

米をさらにパワーアップ。その鍵を握るのは、話題の「もち麦」!

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米というと、及び腰になる人も中にはいる。そこで浅野さんがおすすめする、プラスしたい食材が、もち麦。

「日本人の女性は特に、食物繊維が不足しています。食物繊維には、①糖や脂質の吸収を抑えたり、腸内の善玉菌の餌となる水溶性食物繊維 ②腸管を刺激し、便通などを整える不溶性食物繊維、の二種類がありますが、もち麦には、不足しがちな水溶性食物繊維が豊富に含まれています。白米に混ぜるだけで、20倍の水溶性食物繊維が摂れるというメリットがあります。もち麦は麦の中でも“もち性”なのでモチモチとしていて食べやすく、満足感も得られます」

「食べることの大切さ」と避けるべきもの、「食べるタイミング」

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偏った食事や、タンパク質不足。極端な糖質オフなどで今、問題になっているのがご存じ、メタボ(メタボリックシンドローム)。

「間違った糖質の摂り方で血糖値を乱高下させると、太りやすくなったり、生活習慣病のリスクが上がります。また、お菓子やジュースや甘みのある飲料など嗜好飲料などの糖分を摂りすぎれば、脂肪として蓄積されやすくなります。こうしたカロリーはあるのに、栄養がない食品をエンプティーカロリーと言います。

きちんと米飯などで炭水化物を摂り、そこから糖分をはじめとする栄養を摂ることと間違った糖質の摂り方は、別の話。“食べることの大切さ”を見直す時代なんだと思います」と、浅野さん。

そして今、若い世代の間にも見受けられるのが、サルコペニア。これは加齢などで筋肉量や筋力、身体的機能が衰えるトラブルで、これまでは高齢者の問題と思われてきた。「サルコペニアの原因の一部には栄養の不足があり、エネルギーやタンパク質の不足もその一つです。早い人では、30~40代でサルコペニアのリスクを持っている方もいます。きちんと炭水化物でエネルギーを摂ることは、こうした意味からも重要なんです」

できれば避けたほうがよいのでは、と浅野さんが言うのは、やはり異性果糖。

「お菓子やジュース、糖分の入ったヨーグルトなどに含まれています。果糖は食欲増進効果の他、カルシウムやビタミンDの吸収がしづらくなるという報告もあります。何か食べたいなと思ったときは、“甘いお菓子や飲み物”ではなく、できれば体に不足している栄養素を摂取すると、満足感を得られやすくなります。おすすめはチーズやゆで卵、無糖のヨーグルト、おにぎりなど」

気になるフルーツについては、こんなアドバイス。「ポイントは“量とタイミング”です。夜に食べると、体はエネルギーを使ったり代謝しないため、果糖を中性脂肪にしてためようとします。日中のエネルギーとして使う、朝の食事に摂り入れるのがよいでしょう」

食事抜きも避けてほしい、と言う浅野さん。「起き抜けや、食事抜きで血糖値が下がった状態では元気に動くことができません。空腹の状態で食事をすると、血糖値の乱高下が起こりやすく、疲労感や脂肪のため込みも強くなりますので、体にも心にもよくない影響を及ぼします。その意味からも、きちんと栄養が摂れる食事をすることが重要です。ぜひ、食べることの大切さ、見返してみてくださいね」

ひと口に糖質、糖分といっても体内の分解や吸収、種類によっても摂るべきもの、控えるべきものがある。ヘルシーな体と心、そして日々のために、まずは自分の糖質を見直してみて。

【コラム】エディターが取材中に発見。ヘルシーなカレーに夢中!

今回の浅野さんの取材中にエディターSが発見したのが、ヘルシーなカレー、「DACARADAカレールウ」。これは浅野さんが率いる880名超の栄養士集団「栄養士戦隊☆」がプロデュースしたもの。

カレーといえば脂質と炭水化物の塊で、おいしいと分かっていながらも避けている人もいるのでは? まさに今回の糖質にまつわる話でもある。さらに中に含まれている化学調味料や油が気になることも多々。それを全て解決しようとしたのが、このカレー。

体にいい油を使い、必要とされるオレイン酸が豊富なオリーブオイルをチョイス。オリーブオイルは熱や酸化に強く、今回選んだのは国際的な品評会で賞を獲ったという、正直、食品関係者が「カレーに入れるのはもったいない」と言ったほどクオリティが高いもの。

さらに小麦粉不使用、グルテンフリーというのもうれしいポイント。米粉を使っているので、和のカレーにもぴったり! 体が喜び、冷めてもおいしいカレーのために、あえて動物性脂質を使わずに、絶妙なコクとうまみを引き出すことにも成功。

あまりにも贅沢すぎるこのカレールウ、浅野さんのおすすめは「さばカレー」。和にも合うカレーになっているので、具材は野菜だけにして、仕上げに焼きさばの切り身をトッピング。これがたまらなく美味!

●詳しくは以下のURLへ!
DACARADAカレールウ
https://peraichi.com/landing_pages/view/dacaradacurry



Photo:Getty Images

Headshot of 浅野まみこさん
浅野まみこさん
管理栄養士

総合病院、女性クリニック、企業カウンセリングにおいて糖尿病の行動変容理論をベースに栄養相談を行う。現在は食育活動やレシピ開発、食のコンサルティングをはじめ講演、イベントなど多方面で活躍中。銀座の飲食店のヘルシーメニューの考案やNHK「おはよう日本」、TBS名医のTHE太鼓判など、メディアや雑誌に多数出演。「食生活が楽しいと人生が100倍楽しい!」をモットーに活動をしている。『「コンビニ食・外食」で健康になる方法』(草思社)。『血糖値は食べて下げる寝て下げる』(共著、アスコム)など著書多数。 http://e-vita.jp/ ■Instagram @asanogohans  ■Twitter https://twitter.com/eiyoushi_mami ■Blog https://ameblo.jp/evita/