骨にも栄養を! 食事を変えて骨を丈夫に
重いウェイトを上げれば、身体が強くなるというのは確かに本当。でも、これは骨の観点からだとまた違う話らしい。そして....
重いウェイトを上げれば、身体が強くなるというのは確かに本当。でも、これは骨の観点からだとまた違う話らしい。そして牛乳を毎日飲めばいいという話ではない。この新しい栄養プランで骨の健康についての考えが180度変わるかも。その内容をアメリカ版「ウィメンズヘルス」よりご紹介。
骨の健康なんてあと20年か30年後に考えればいいや、と思っているかもしれないけれど、先延ばしにしていては危険かもしれないので、実は今から考え始めた方がいいとか。骨量は20代の前半に決まっている、と話すのはNuffield Healthのコンサルタント、スティーブ・オーム医師。「これ以降は古い骨を修復したり、再生したりすることはあっても骨量は増えることはない」と言う。
実は増えないどころか、年齢と共に骨量は減っていく。特に女性はそれが著しい。「女性は男性に比べて、4倍も骨粗しょう症になりやすく、骨が弱くなってしまうリスクがある」とHCAヘルスケアUKの内分泌学者のゴーダナ・プレレヴィック医師。
「骨粗しょう症のせいで、女性のうち半分の人は人生において一度は骨折を経験する」とプレレヴィック医師は警告する。女性は男性に比べて骨が小さいので、骨密度が低くなるとその分影響を受けやすいそう。その骨量を左右する一番の要因はエストロゲンの値の変化。
「骨は身体の他の部分と同様、生きた繊維でできている。エストロゲンのレベルが低くなると骨が弱くなってしまい、女性は年齢につれ、少しずつ骨密度が低くなっていく」とオーム医師。そしてここでいう年齢、とはシニアになってからの話ではない。
「エストロゲンの値は、40代の前半から徐々に下がっていく」とプレレヴィック医師。一番大きく減少するのは40歳後半から50代の閉経前だそう。もちろん、自然な加齢も骨の健康に影響を与える。若いうちから骨の健康を優先事項に入れていないと、早ければ20代から骨への影響が出てしまうそう。
では、骨折のリスクを減らすためにはどうすればいいのか。骨の健康を考えたレシピを提案する「The Healthy Bones Nutrition Plan and Cookbook」の共著者、ローラ・ケリー医師によると、食べる物に気を配るだけでもだいぶ改善されるそう。
「骨と言えばカルシウム、と思うかもしれないけれど牛乳を大量に飲んだり、サプリメントに頼るのは正しくない。身体が必要なのはカルシウムを有効活用するための幅広い栄養素。そして実際はカルシウムではなく、その他の栄養素が足りていないことが多い」。つまり、チーズを大量に食べることではなく、チーズと一緒になにを食べるかということがポイント。
身体の中から力を
まずは、あまり知られていない骨を強くするビタミンK2から。ケリー氏の本でも大きく取り上げられているビタミンK2は平飼いの卵、バター、牛乳や発酵させた大豆製品、たとえば味噌、豆腐、納豆などに含まれている。特に、納豆はビタミンK2が豊富。
「世界の骨折の数を見てみると、伝統的な日本食は西洋の食事に比べてずっと骨粗しょう症の率が低いことが見て取れる」とケリー医師。これは日本食にはビタミンK2が多く含まれているからではないかと考えられている。
実際、栄養学の専門誌『Nutrition』に発表された論文によると、日本人女性では、納豆を食べる量が多いほど血中のビタミンK2の量が高く、骨折のリスクが低かったそう。
マグネシウムも骨の健康に欠かせない栄養素。このミネラルは血中のカルシウム量を調整してくれるが、イギリスの19歳から34歳の女性のうち5人に1人はマグネシウムが足りていないということが国の栄養と食生活の調査で分かったそう。「現代的な農法では、土壌のマグネシウムが不足してしまうので、一日の推奨摂取量の300mgを摂ることは難しくなっている」とケリー医師。
ゴマ、カボチャの種、ホウレン草、カレリニ豆や良質なダークチョコレートを摂るようにとケリー医師はすすめる。
そして、カルシウム自体も当然欠かすことはできない。カルシウムは骨を作り、維持するもの。乳製品を摂らなくなる人が増えている今、一日の推奨量700mgを達成するのは難しいと考えるかもしれない。実際にイギリスではこの10年でヴィーガンの人が3.6倍に増えたと最近のMORIの調査で分かっている。しかし、牛乳はカルシウムを摂るための一番よい食品でもないということが分かっている、とケリー医師は指摘する。
ナッツ、種子類や豆もカルシウム源としてはよいそう。つまり、もっと野菜を食べようということ。野菜をたくさん食べているのにそれでも、まだカルシウムが足りないというのなら、それは効率よく吸収できていない可能性がある。もしかしたら、それはビタミンDが足りていないからかもしれない。
太陽のビタミンと呼ばれるビタミンDは腸内でのカルシウムの吸収には欠かせないが、イギリスの5人に一人が摂取量が足りていないとPublic Helath Englandに発表されたデータが示している。「皮膚は紫外線を浴びることでビタミンDを生成するが、イギリスの曇りがちな天気や、SPFを含む乳液やファンデーションの使用で生成能力が落ちている」とオーム医師。
不足しがちなビタミンの補給のためイギリス保健省はビタミンDのサプリメントで毎日0.01mg摂ることを推奨している。もちろんこれは食事から摂ることもできる。「脂質の多い魚、たとえばサーモンや、サバを食べてもビタミンDを増やすことができる」とケリー医師。平飼いの卵の黄身、マッシュルームも人間と同じような仕組みでビタミンDを生成するのでおすすめ。食べる前にかさをひっくり返して何日か天日干しするとビタミンD量が増える。
Text:Beth Gibbons Translation:Noriko Yanagisawa Photo:Getty Images
骨を強くするには
では栄養面のことは分かったので、他には何をすれば骨粗しょう症のリスクを減らすことができるのか。最近は若い女性で生理不順だったり、無月経の人が増えているとプレレヴィック医師は話す。これは、骨粗しょう症になりやすくなってしまう。やせ過ぎや生理不順は若くして骨量が少なくなることと関連しているとも。
もちろん健康的なBMIの人でも、体脂肪率が20%以下の場合だと、危険はある。これより少ないと、身体は骨を守るためのエストロゲンを十分に作れない可能性がある、とプレレヴィック医師は警告する。また、ストレスが多いことや運動のし過ぎなどもよくないという。気になる場合は一度病院で骨量の検査をするように。
骨密度は全体的な健康にとても大きな役割を果たしている。究極的には、骨にいいことをしていれば、身体全体にもいい影響がある。ガリガリになろうとしないで、健康的で丈夫になることを目指して。
骨の健康をアップさせてくれる4つのコツ
1. 慢性的なストレスはストレスホルモンのコルチゾールの値を上げてしまい、これが骨を作るのを妨げてしまう。ハイキングやランニングのような体重がかかるような運動をして。健康的な骨と心のためにもおすすめ。
2. 飲んでいる薬を一度チェックするように。骨に影響を与えてしまう薬もある、とオーム医師。たとえば胃酸の逆流の症状に処方されるプロトンポンプ阻害薬はカルシウムの吸収を妨げてしまう。また、経口コルチステロイドも骨を薄くしてしまうという。自分が飲んでいる薬が気になる場合は一度かかりつけ医に確認してみて。
3. マグネシウムは胃よりも皮膚の方が効率的に吸収できるので、お風呂にエプソムソルトを2カップ入れて20分ゆっくりと入ることを週3回して。
4. 自然のホルモン療法を試してみて。植物性エストロゲンはエストロゲンのような効果のある植物由来の成分。味噌、豆腐などの大豆製品に含まれている。
骨強化のメニュー1日分
朝食:平飼い卵のオムレツ(タンパク質、ビタミンK2 、カルシウム)、ゴーダチーズ(ビタミンK2、カルシウム)、天日干ししたマッシュルーム(ビタミンD)
昼:日本式サーモンのポキ丼(ビタミンD、オメガ3脂肪酸)、パクチーとチンゲンサイ(カルシウム)、キムチ(ビタミンDの吸収を助ける乳酸菌)
夜:焼いた鶏もも肉(タンパク質、ビタミンK2)、イチジクのヤギのチーズ詰め(カルシウム)に味つけにラベンダーのトッピング
間食:アーモンドかドライアプリコット(カルシウム)、生野菜とゴマペースト(マグネシウム)かカカオ85パーセントのチョコレート(マグネシウム)