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「お気に入りのジーンズが穿けるようになった!」と大喜びした数カ月後に、「また穿けなくなった……」と落ち込んだことはない? 統計によるとダイエットをした人の推定80パーセントは、その後の2年でリバウンドし、もとの体重に逆戻りするか、体重が増えるという。イギリス版ウィメンズヘルスがそんなリアルで切実な悩みに迫る!

体重が少し変動する程度であれば正常だけれど、体脂肪の著しい増加と減少=通常4.5キロ以上を一生のうちに何度も繰り返したときには注意が必要だ。この激しい体重の上下を繰り返すダイエットは、ヨーヨーが上下することになぞらえて「ヨーヨーダイエット」とも呼ばれる。

ヨーヨーダイエットは、精神的にも身体的にも有害なサイクルだ。太りすぎだけが体に悪いのではなく、太ったり痩せたりの生活が高血圧や糖尿病、心臓病、さらにはもっと深刻な病気に関係する可能性もある。

このサイクルに陥ると、体重が今まで以上に増える可能性も高くなる。心理学専門誌『American Psychologist』に掲載された論文によると、過去の長期的な31件のダイエット実験に参加した人々の3分の2は、リバウンドで体重が当初より増えている。管理栄養士のキース・アヨーブ博士は、「厳しいダイエットの直後にリバウンドすると、筋肉は失われ、大量の脂肪だけが戻ってくるかもしれない」と注意を促す。

科学の目から見たダイエットとリバウンドの「正体」

1.食事を制限しすぎない

専門家たちの話では、ヨーヨーダイエットは厳しすぎる食事制限を行うダイエットに起因することが多い。肥満専門誌『Obesity』に掲載された研究結果も、彼らの主張を裏付けている。この研究では、超低カロリーのダイエットをしていた人がリバウンドで取り戻した脂肪の量は、よりゆるやかなダイエットをしていた人に比べて著しく多いことが分かった。

「カロリーを極小に抑える『クラッシュダイエット』で脂肪を減らそうとする女性が多い」と話すのは、ロンドンのガイズ&セントトーマス病院で肥満コンサルタントを務めるジュード・オーベン博士。「その場しのぎのダイエットは本当に、本当に意味がない! とにかく長期的に続けられるものじゃないから」。その代わり、確実に継続できる小さな変化を起こすべきだと言う。

堅実な食生活を送っていても、体重は思うように減ってくれないこともある。「リバウンドを防ぐのが難しいのは、ダイエットで代謝が犠牲になるから」と説明するのは、心理学者で肥満研究者のゲイリー・フォスター博士。「体重が10パーセント減れば、代謝も10パーセント低くなると言われるけれど、実際はそれ以上で、11~15パーセント低くなる」

でも、どうして自分の代謝にダイエットの邪魔をされなきゃいけないの? 米・イェール大学のラッド食糧政策・肥満研究所のディレクター、ケリー・ブラウネル博士によれば、その答えは至ってシンプル。「体がダイエットを “命に対する脅威” と捉えることもある。体には、低炭水化物ダイエットの『アトキンスダイエット』と食糧難の違いが分からないから」

1980年代に「ヨーヨーダイエット」という言葉を生み出したブラウネル博士によれば、それが人間の生理機能を変えることもあり得る。つまり、ダイエットを繰り返せば生理機能が変化するので、その分脂肪が減りにくくなる。しかも、空腹ホルモンのグレリンが増え、満腹ホルモンのレプチンが減るので、食べても満足感が得られない。

また、人によっては生まれつきヨーヨーダイエットに陥りやすいことを示す強力な研究結果も出ている。

2.人は条件が満たされると食べてしまう。だけど感情に任せた食事はNG!

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米・カリフォルニア大学サンフランシスコ校とイェール大学に所属するデイヴィッド・ケスラー博士の研究チームは、生物学的な観点から体重サイクルを調べた。その結果、ケスラー博士は「ある条件の下で人間を食いしん坊にする」脳の報酬回路が、食べ物の匂いだけで過度に活発化し、目の前の料理を食べ終わるまで落ち着かないことを発見した。つまり、「ある条件(この実験では匂い)が満たされると、人は生物学的に食べてしまう。これでやっと『悪いのは君じゃない』と言える」とケスラー博士。

この生物学的な反応は、生きているうちに習得されるもの。ということは、報酬回路を配線し直すこともできる。ヨーヨーダイエットは感情が引き金となって始まることもある。米・ブラウン大学の研究では、外部要因……例えばハッピーアワーでの飲みすぎなどとは対照的な感情要因=孤独感やストレスなどで食べる人は、リバウンドしやすいことが分かった。

一つ良い例を紹介しよう。ダーシー・シュミッツは、20代で体重を34キロ減らし、その後の2年間で54.5キロもリバウンドした。感情に任せて食べていたのが主な原因だという。30代に入ると、厳しい食事制限のダイエットとエクササイズで61キロ減らした。「18カ月間、チップスを1枚も食べなかった」というダーナーだが、離婚や引っ越し、学業への復帰によるストレスを受け、週5日5キロ走っていた生活は油っこいディナーばかりの生活になり、18キロリバウンドした。

しばらくは調子が良くても結局は失敗してしまう、シュミッツのような女性を何人も見てきたオーベン博士は、“行動を長期的に変えるのに必要なスキル” を学んでいないことに問題があると考えている。「彼女たちは、マインドセットを変える方法も、良識的な体重管理と定期的なエクササイズを一生のものとして見る方法も知らない。自分を励まし、ネガティブな考えを覆すすべを習得しないといけない」

3.実験で実証された! 体だけではなくマインドも変えることの重要性

心身研究専門誌『Journal of Psychosomatic Research』に掲載された、肥満に悩む200名を対象とした研究論文も、行動を変えることの重要性を裏付けている。この研究に参加した1つ目のグループは、エクササイズを行いながら健康的な食生活を送るのに加えて、1時間にわたる「アクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT)」の中で行動の変え方を学んだのに対し、2つ目のグループは低強度のエクササイズを1時間余分に行っただけだった。

一年後、セラピーに参加した人々は減らした体重を維持していたが、もう一方のグループのメンバーは、減らした体重のほとんど、または全てをリバウンドしていた。

4.ヨーヨーダイエットをしないことは「免疫システムを守る」ことにもつながる

アヨーブ博士いわく、「体重が増えたり減ったりを繰り返すのは、体にとって大きな負担」。肌の弾力性が失われるなど、見た目に問題が出るだけではなく、リバウンドすると動脈や骨格系に負担が掛かり、ストレスを感じた肝臓が脂肪で覆われることもある。また、臨床心臓病学の専門誌『Clinical Cardiology』が発表した論文によると、生涯で5回以上ヨーヨーダイエットをする女性は、その過程で心臓にダメージを与えているかもしれないという。

でも、たぶん最も意外なのは、ヨーヨーダイエットが免疫システムにもたらす危険で長期的な影響。ヨーヨーダイエットの長期的な影響を初めて調べた研究では、体重の増減を繰り返す女性は免疫機能が弱く、体を守るナチュラルキラー細胞(NK細胞)の数が特に少ないことが判明した。ドイツの国立がんセンターで、がん予防外来のディレクターを務めるコーネリア・ウーリッヒ博士によると、「NK細胞は感染症を防ぐのにも、初期のがんと戦うのにも不可欠です」

NK細胞の活動量が少ないと、がんになる確率が高くなる。太りすぎを除けば健康な女性100名以上を対象としたウーリッヒ博士の研究では、5回以上ヨーヨーダイエットした人の体内では、ナチュラルキラー細胞の活動量が3分の1になることが分かった。

これでヨーヨーダイエットの防ぎ方が分かった?「自分をコントロールできるのは自分だけ」であることを忘れないで。

※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text:Gretchen Voss Translation:Ai Igamoto Photo:Getty Images