「まず、誰もが耳にしたことがあるビフィズス菌。ビフィズス菌は腸内のpH
を低下して悪玉菌を抑制させ、善玉菌を優勢にして腸内の環境を整えるほか、花粉症などアレルギー症状の緩和にも貢献していることがわかっています※2」※3」 そしてそのビフィズス菌の増殖因子となるのがオリゴ糖です。オリゴ糖はほぼ大腸まで届き、腸内に済む有用菌であるビフィズス菌の良いエサとなるため、オリゴ糖を積極的に摂取すると、腸内環境を整えることに繋がります。
オリゴ糖も様々な種類があるため、複数のオリゴ糖を複合的に摂取することが大切。ごぼう、玉ねぎ、アスパラガス、たけのこなど野菜の根や葉に含まれていることが多く、また、きな粉やハチミツなどにも含まれています」
難消化性成分を含むものを食べる
「難消化性成分とは、胃や小腸で消化吸収されずにそのまま大腸まで届く成分のこと。炭水化物の中の難消化性成分である食物繊維や、今注目のレジスタントスターチ(別名:難消化性でんぷん)は、大腸まで届き、腸内細菌の良いエサとなってくれます。それらを捕食した大腸内の腸内細菌は、体内で重要な栄養になる短鎖脂肪酸を産生します。短鎖脂肪酸は結腸の蠕動運動のエネルギー源となり便秘解消にも繋がり、脂肪細胞の取り込みを抑制し筋肉に作用し脂肪燃焼を促進してくれます。さらに、花粉症などアレルギーや自己免疫性疾患を抑制する「制御性T細胞」の産生も促す働きもあります※4」※5」」
昨今は「糖質オフ」を掲げて摂取を控える人も増えた炭水化物だが、炭水化物は糖質と食物繊維を合わせたもの。完全炭水化物カットは腸内善玉菌のエサが減り、腸内細菌叢のバランスも乱れやすくなると忠告。
「上記の研究結果からも日本人は他の民族よりも炭水化物代謝機能が優れていることがわかっているため、食物繊維量の多い炭水化物を摂取することを心がけましょう。例えば白米を食べたかったら、糖質量が少なく食物繊維が多いキヌアやアマランサスなどの穀類を一緒に炊くことをお勧めします.
また、私たち日本人が分解する能力の高かった海草類も高食物繊維の代表選手。味噌汁にワカメを入れたり、外食時は海藻サラダを選ぶなど、頭で理解して能動的に取捨選択できるようになると、心身の健康を手に入れられるだけでなく、より食の満足感も高まります」
そして常に心がけてほしい点がある、と浅倉さん。
「旬の多種多様な食材をバランス良く食べることです。というのも、この食材が良い、と聞くとそればかり食べてしまう人もまだ多くみかけます。でもそれは、栄養価を偏らせ、栄養失調や免疫力の低下による体調不良や病気にかかりやすくなる原因になります。
季節に合った、多種多様な食品を食べることにより腸内微生物の多様性が促され、微生物の種類が豊富なほど、人体に有益な成分を微生物が産生し、免疫機能を高め、老化抑制を促してくれます。
美容も、シェイプした身体も、体の内側から健康になってこそ長期的に叶えることができます。常に”Well Balanced Diet”を意識して、様々な食品を食べるようにしましょう」
うま味で本来の味覚を取り戻し、私たち日本人の腸内細菌叢にあった食材を理解しながら、多種多様な食品をバランスよく食べる。
連載もいよいよ後半。次回は、今注目のレジスタントスターチについてご紹介。
出典
(※1) DNA Res. 2016 Apr;23(2):125-33.
(※2) J. Jpn. Assoc. Dietary Fiber Res. 2000;4(2):47-58.
(※3) 日乳酸菌会誌2010;21(2);112-121
(※4)ファルマシア2014;50(8) 815
(※5) ImmMed. 2015;38(4):245